2023年 本屋大賞
本屋大賞とは、全国の書店員が選んだ「いちばん!売りたい本」です。
書店に行くと、多くの本が並んでいますが、どれを買ったらよいか迷いますよね。書店員さんは毎日書籍に触れていて、たくさん読まれる方が多いです。また、著者や売れ筋についての知識が豊富で、情報交換も盛んに行っています。
本屋大賞は過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」本を投票し決めるものです。ノミネートされた上位10作品の中から選ばれます。
全体を通して比較的読みやすく、多くの読書家の間でも人気の作品が多い傾向ですので、本選びに迷ったら、是非参考にしてください。
※全て単行本です(2023年4月12日現在)
汝、星のごとく 凪良 ゆう
story:風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語(「BOOK」データーベースより)
本屋大賞受賞の人気作家、凪良ゆうの恋愛小説。
瀬戸内の島と東京の街を舞台に、過酷な環境で生きる若者の苦悩、夢と愛が描かれています。
高校生の櫂と暁海の劣悪な家庭環境や、彼らに好奇の目を向ける時代錯誤で排他的な島民。そんな中でも自らの居場所と夢を掴もうともがく二人に次々に降りかかる災難。思わず目を背けたくなるような絶望の中でも必死に生きようとする彼らの姿が胸を打ちます。
自分の人生を生きるー。生きるために大事な事、幸せになるための考え方、ヒントになるような言葉の数々。著者からのメッセージが物語を通して伝わってきます。また、櫂と暁海のすれ違いや成長にハラハラし、胸が苦しくなりますが、 気高く純粋な愛の美しさに涙を誘われます。
「正しさ」とは何か。生づらさを抱えている人、社会に息苦しさを覚える人に。
美しくて強い、人生と愛の物語。心に残る一冊です。
2006年にBL作品にてデビューし、代表作に’21年に連続TVドラマ化された「美しい彼」シリーズなど多数。’17年非BL作品である『神さまのビオトープ』(講談社タイガ)を刊行し高い支持を得る。’20年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。同作は’22年5月に実写映画が公開された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)([BOOK」データベースより)
ラブカは静かに弓を持つ 安壇 美緒
story:少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇。以来、深海の悪夢に苦しみながら生きてきた橘樹は勤務先の全日本音楽著作権連盟の上司・塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠を掴むこと。身分を偽り、チェロ講師・浅葉桜太郎のもとに通い始めるが…少年時代のトラウマを抱える潜入調査員の孤独な闘いが今、始まる。『金木犀とメテオラ』で注目の新鋭が想像を超えた感動へと読者を誘う、心震える“スパイ×音楽”小説!(「BOOK」データベースより)
ありきたりの毎日がある日、非日常のミッションに。ごく普通の青年・橘樹に与えられた仕事は音楽教室への潜入捜査でした。
実際にあった著作権裁判をもとにしたこのスパイ小説は、ハラハラしながらも人の温かさが感じられる物語。社会正義と人情の間で揺れ動く主人公の心の内や、メンタルヘルスの問題など人間の内面がしっかりと描かれています。
また、物語を通じて音楽のヒーリング効果を感じられたり、実際に楽器を演奏してみたくなるような心動かされる印象深いシーンも。
そんな優しい空気が流れる中、突然放たれる一言や、嫌な偶然に心臓が止まりそうになるのがスパイ小説の醍醐味。心が温かくなったり冷たくなったりする展開の後ろから聞こえてくるチェロの静かで余韻のある音がさらに不安を煽り、良い結末を願わずにはいられないでしょう。
人の優しさと音楽に癒される。切なく優しい物語です。
1986年北海道生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。2017年、『天龍院亜希子の日記』で第30回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2020年、北海道の中高一貫の女子校を舞台にした青春長編『金木犀とメテオラ』を刊行、書店員からの熱い支持を受けロングセラーとなる。(出版社より)
光のとこにいてね 一穂 ミチ
『スモールワールズ』を超える、感動の最高傑作
たった1人の、運命に出会った
古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。
彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。
どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。
運命に導かれ、運命に引き裂かれる
ひとつの愛に惑う二人の、四半世紀の物語
目次:ネオンテトラ/魔王の帰還/ピクニック/花うた/愛を適量/式日
2007年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。劇場版アニメ化もされ話題となった『イエスかノーか半分か』などボーイズラブ小説を中心に作品を発表して読者の絶大な支持を集める。2021年に刊行した、初の単行本一般文芸作品『スモールワールズ』が本屋大賞第3位、吉川英治文学新人賞を受賞したほか、直木賞、山田風太郎賞の候補になるなど大きな話題に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
爆弾 呉 勝浩
江戸川乱歩賞、吉川英治文学新人賞など数々の賞を受賞している呉勝浩のミステリー小説。
story:刑事の等々力功は、酒に酔った勢いで人を殴ってしまった自称スズキタゴサクという人物の取り調べをしていたが、何を聞いても酒のせいで覚えていないというスズキにあきれ果てる。さらに、自分には霊感があり、事件を予知できると言い出す始末。しかし、本当に彼が予知した場所と時間に爆発が起きる。スズキは自分は犯人ではなく、あくまで霊感だと言い張るが…。(「BOOK」データベースより)
最初からエンディングまでノンストップで繰り広げられるサスペンスはすぐにでも映像化されそうなくらいエンターテイメント性溢れるストーリー。
スズキタゴサクなる爆弾テロの容疑者と刑事たちの手に汗握る心理戦がこの小説の見どころです。スズキに翻弄される刑事たちの社会での在り方や人生に対しての考え方、それぞれの葛藤や人間模様がこの物語をさらに深く、面白くしています。
一気読み必至。現代日本の闇をつく、手に汗握るミステリー小説。
1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。2015年、『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。’18年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞受賞、同年『ライオン・ブルー』で第31回山本周五郎賞候補、’19年『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』で第72回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)候補、’20年『スワン』で第41回吉川英治文学新人賞受賞、同作は第73回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)も受賞し、第162回直木賞候補ともなった。’21年『おれたちの歌をうたえ』で第165回直木賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
月の立つ林で 青山 美智子
story:長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの思いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいくー。最後に仕掛けられた驚きの事実と読後に気づく見えない繋がりが胸を打つ心震える傑作小説。(「BOOK」データーベースより)
2年連続「本屋大賞」2位を受賞した青山美智子の連作短編集。月から不思議な力を貰える5つの物語です。
「竹林からお送りしております。タケトリ・ナオキです。かぐや姫は元気かな」
「ポッドキャスト」というインターネットラジオから聞こえるしっとりとした深みのある声。
「ツキない話」は「月」にまつわる不思議な話や雑学を聴くことが出来るのチャンネルです。
この物語は、そのチャンネルを毎日楽しみにしている5人の主人公たちの日常を描いています。
普通の日常を送っているように見える彼らですが、心の内は悩みや不安が渦巻いている。うまくいっているとは言い難い毎日を少しだけ癒してくれる「ツキない話」は彼らにとってオアシスのような時間。神秘的な月の物語は彼らに影響を与え、また彼らも誰かに影響を与えていくことに。
なんとなくうまくいかない毎日。でも、人の想いを知ったり、ちょっとしたきっかけがあれば違った景色に見える。読みやすく、自然と心が軽くなる優しい物語です。
1970年生まれ、愛知県出身。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1回宮崎本大賞を受賞。『猫のお告げは樹の下で』が第13回天竜文学賞受賞。『お探し物は図書室まで』『赤と青とエスキース』で本屋大賞第2位に選ばれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)
君のクイズ 小川 哲
直木賞作家・小川哲のクイズ・エンターティメント小説。本屋大賞ノミネート作品。
story:生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央。次の問題で優勝者が決まるという局面で対戦相手・本庄絆が、問題が読まれる前に早押しボタンを押してしまします。勝負あったと思われた瞬間、本庄が正解を答え優勝を果たすという不可解な事態に。この結果ををいぶかしんだ三島玲央は 真相を解明しようと彼について調べ始めますが…
「いったい彼はなぜ、正答できたのか?」
問題が読まれる前に正解を答えることができるのかという不可解なミステリー。どう考えても不正が行われたとしか考えられない事態ですね。見過ごすことのできないこの問題に三島はクイズプレーヤ―らしく論理的にこの出来事を整理していきます。その過程での三島の思考の描写はクイズプレーヤーの頭の中を覗き観ているようで面白い。クイズプレーヤ―は何を考え、どんな道筋で答えを導き出すのか。なぜ、あんなに早く正解に辿り着くことが出来るのか。
また、問題に隠された仕掛けであったり、プレイヤーの駆け引きや心理であったり、論理的な知識の構築であったり。クイズの奥深さとその裏に隠された彼らの想いも見えてきます。
ロジカルシンキングで展開される謎解きは全くスキがなく鮮やか。思わず「なるほど!!」とうなってしまいます。
楽しみながら「思考力」も鍛えられるクイズの奥深さを味わえる一冊です。
1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年に『ユートロニカのこちら側』で第三回ハヤカワSFコンテスト“大賞”を受賞しデビュー。『ゲームの王国』(2017年)が第三八回日本SF大賞、第三一回山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
方舟 夕木 春央
story:9人のうち、死んでもいいのは、–死ぬべきなのは誰か?
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。–犯人以外の全員が、そう思った。
タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。
「もし、自分が助かるために誰かを犠牲にしなければいけないのなら、あなたはどうしますか?」この問いに何のためらいもなく答えられる人はいないでしょう。
「方舟」と名付けられた地下建築で繰り広げられる「愚かな人間を選別する」という展開は、まさに旧約聖書「ノアの方舟」さながら。人間の善悪が問われる恐怖とスリルのミステリーです。
不気味な閉鎖空間。すぐ隣にいるかもしれない殺人犯。着々と迫るタイムリミット。恐怖や焦りが入り混じる中、増えていく犠牲者。この極限状態状態に、読者は早くこの場所から抜け出したいと感じるではず。息もつかせぬ展開の面白さに、まるで読者自身がその空間にいるような錯覚を起こし、臨場感もたっぷり。また、本格ミステリーの謎解きもあり、ページをめくる手が止まらないでしょう。
デスゲームのような設定は、追い詰められた人間のある種の矛盾や、むき出しの本性が表現され、人間の持つ気持ち悪さが浮き彫りに。その人間模様や駆け引きも見どころのひとつです。
彼らは、どんな選択をするのか。そして、もしあなたなら?
2019年、「絞首商会の後継人」で第60回メフィスト賞を受賞。同年、改題した『絞首商會』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)(「BOOK」データベースより)
宙ごはん 町田 そのこ
story:大丈夫。わたしを頼って。きっと、この物語はあなたの人生を支えてくれる。2021年本屋大賞第1位『52ヘルツのクジラたち』『星を掬う』の先にたどり着いた救いと再生の物語。(「BOOK」データーベースより)
『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞した町田そのこの最新作。
日に日に肌寒くなってくるこの頃、この『宙ごはん』は、そんなこれからの季節にピッタリなお話。立ち上る湯気までもが見えてきそうなホカホカの料理や人を想う優しさに心の中からじんわりと暖かくなる物語です。
頭が良く、しっかりものの宙(そら)に次から次へと降りかかる災難。胸が張り裂けそうになる場面が多々待ち受けています。しかし、それに反して全体を包む雰囲気はとてもあたたかいのは、願いを込めて作られた料理とそれを食べる風景がとても優しく描かれているため。子供の頃に味わった愛情いっぱいの手作りの料理が思い起こされ、ほっとする暖かさが感じられます。食べながら心を解きほぐされていく様は、まさしく魔法の料理を体感している気持ちに。
宙の強い前向きな姿勢に勇気づけられ、時には自身を省みることも。
人に優しくなれる物語です。
1980年生まれ。2016年「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。17年、同作を含む短編集『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)([BOOK」データベースより)
川のほとりに立つ者は 寺地 はるな
カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。
松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることにーー。
「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。(出版社より)
1977年、佐賀県生まれ。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞し、デビュー。2020年度の咲くやこの花賞文芸その他部門を受賞。21年『水を縫う』で第9回河合隼雄物語賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)([BOOK」データベースより)
#真相をお話しします 結城 真一郎
story:島育ちの仲良し小学生四人組。あの日「ゆーちゅーばー」になることを夢見た僕らの末路は……(「#拡散希望」)。マッチングアプリでパパ活。リモート飲み会と三角関係。中学受験と家庭教師。精子提供と殺人鬼。日常に潜む「何かがおかしい」。その違和感にあなたは気づくことができるか。新時代のミステリの旗手による、どんでん返しの五連撃。日本推理作家協会賞受賞作を含む、傑作短編集。(出版社より)
1991年、神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業。2018年、『名もなき星の哀歌』で第5回新潮ミステリー大賞を受賞し、2019年に同作でデビュー。2020年に『プロジェクト・インソムニア』を刊行。同年、小小説新潮」掲載の短編小説「惨者面談」がアンソロジー『本格王2020』(講談社)に収録される。2021年には「#拡散希望」(「小説新潮」掲載)で第74回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。同年、3冊目の長編作品である『救国ゲーム』を刊行し、第22回本格ミステリ大賞の候補作に選出される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)([BOOK」データベースより)