直木賞 2023年~2010年(1/17更新)

芥川賞・直木賞
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直木三十五賞(以下直木は文藝春秋社を興した菊池寛が創設した文学賞。
1935年に芥川賞とともに創設し以降7月(前年12月~5月・上半期)と1月(前年6月~11月・下半期)の年2回発表されます(第二次世界大戦中の1945年~1948年は中断)。
大衆性を押さえた長編小説作品あるいは短編集が対象となり、選考委員の合議によって受賞作が決定されます。

菊池寛芥川賞・直木賞創設理由
菊池「池谷、佐々木、直木など、親しい連中が、相次いで死んだ。身辺うたゝ荒涼たる思いである。直木を記念するために、社で直木賞金と云うようなものを制定し、大衆文芸の新進作家に贈ろうかと思っている。それと同時に芥川賞金と云うものを制定し、純文芸の新進作家に贈ろうかと思っている。これは、その賞金に依って、亡友を記念すると云う意味よりも、芥川直木を失った本誌の賑やかしに、亡友の名前を使おうと云うのである。」(「話の屑籠」『文藝春秋』直木三十五追悼号)
選考基準
菊池直木三十五賞は個人賞にして広く各新聞雑誌(同人雑誌を含む)に発表されたる無名若しくは新進作家の大衆文芸中最も優秀なるものに呈す。」
(近年では、中堅作家中心に大ベテランの作家が受賞することも多々あるようです。)
第1回選考委員は菊池寛を始め、久米正雄、吉川英治、小島政二郎など
(関連書籍の読書ブログはコチラ👇)
菊池寛「半自叙伝/無名作家の日記」
久米正雄「久米正雄作品集」
第170回選考委員(五十音順)
浅田次郎・角田光代・京極夏彦・桐野夏生・髙村薫・林真理子・三浦しをん・宮部みゆき(関連書籍の読書ブログはコチラ👇)
三浦しをん「愛なき世界」ののはな通信」「神去りなあなあ日常
  1. 直木賞受賞作品 2023年~2010年
    1. 八月の御所グラウンド 万城目 学 2023下半期
    2. ともぐい 河崎 秋子 2023下半期
    3. 木挽町のあだ討ち 永井 紗耶子 2023上半期
    4. 極楽征夷大将軍 垣根 涼介 2023上半期
    5. 地図と拳 小川 哲 2022下半期
    6. しろがねの葉 千早 茜 2022下半期
    7. 夜に星を放つ 窪 美澄 2022上半期
    8. 塞王の楯 今村 翔吾 2021下半期
    9. 黒牢城 米澤 穂信 2021下半期
    10. テスカトリポカ 佐藤 究 2021上半期
    11. 星落ちて、なお 澤田 瞳子 2021上半期
    12. 心(うら)淋し川 西條 奈加 2020下半期
    13. 少年と犬 馳 星周 2020上半期
    14. 熱源 川越 宗一 2019下半期
    15. 渦 妹背山婦女庭訓 魂結び 大島 真寿美 2019年上半期
    16. 宝島 真藤 順丈 2018下半期
    17. ファーストラヴ 島本 理生 2018年上半期
    18. 銀河鉄道の父 門井 慶喜 2017年下半期
    19. 月の満ち欠け 佐藤 正午 2017年上半期
    20. 蜜蜂と遠雷 恩田 陸 2016年下半期
    21. 海の見える理髪店 荻原 浩 2016年上半期
    22. つまをめとらば 青山 文平 2015年下半期
    23. 流 東山 彰良 2015上半期
    24. サラバ! 西 加奈子 2014下半期
    25. 破門 黒川 博行 2014上半期
    26. 昭和の犬 姫野 カオルコ 2013下半期
    27. 恋歌(れんか) 朝井 まかて 2013下半期
    28. ホテルローヤル 桜木 紫乃 2013上半期
    29. 等伯 安部 龍太郎 2012下半期
    30. 何者 朝井 リョウ 2012下半期
    31. 鍵のない夢を見る 辻村 深月 2012上半期
    32. 蜩ノ記(ひぐらしのき) 葉室 麟 2011下半期
    33. 下町ロケット 池井戸 潤 2011上半期
    34. 月と蟹 道尾 秀介 2010下半期
    35. 漂砂(ひょうさ)のうたう 木内 昇 2010下半期
    36. 小さいおうち 中島 京子 2010上半期

直木賞受賞作品 2023年~2010年

八月の御所グラウンド 万城目 学 2023下半期

story:女子全国高校駅伝ー都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。謎の草野球大会ー借金のカタに、早朝の御所Gでたまひで杯に参加する羽目になった大学生。京都で起きる、幻のような出会いが生んだドラマとはー人生の、愛しく、ほろ苦い味わいを綴る傑作2篇。(「BOOK」データベースより)

万城目学(マキメマナブ)
1976年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。2006年にボイルドエッグズ新人賞を受賞した『鴨川ホルモー』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

ともぐい 河崎 秋子 2023下半期

story:己は人間のなりをした何ものかーー人と獣の理屈なき命の応酬の果てには。明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪。図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河崎流動物文学の最高到達点!!(「BOOK」データベースより)

河崎秋子(カワサキアキコ)
1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。14年『颶風の王』で三浦綾子文学賞、同作で15年度JRA賞馬事文化賞、19年『肉弾』で第21回大藪春彦賞、20年『土に贖う』で第39回新田次郎文学賞を受賞。他書に『絞め殺しの樹』(直木賞候補作)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

木挽町のあだ討ち 永井 紗耶子 2023上半期

story:芝居小屋の立つ木挽町の裏通りで、美少年菊之助は父親を殺めた下男を斬り、みごとに仇討ちを成し遂げた。二年後、ある若侍が大事件の顛末を聞きたいと、木挽町を訪れる。芝居者たちの話から炙り出される、秘められた真相とは…。(「BOOK」データベースより)

江戸の三大娯楽の一つ、歌舞伎。当時、身分の隔てなく大流行し、江戸の町の至る所で芝居小屋がありました。この物語は、江戸の風俗や芝居小屋に携わる人々の人情の機微を描いた物語。登場人物の「一人語り」で進行する物語は読みやすく、その時代の空気を感じられます。彼らの歩んできた道や生き様と共に、仇討ちの真相が炙り出されていく過程はミステリーの面白さも味わえます。

武士にも町人にも、どんな身分であれ、一人一人にある語るべき物語。紆余曲折を経て、芝居小屋に集った彼らを救ったものとは?現代にも通じる言葉も沢山。

普段時代小説を読まない人でも読みやすく古典芸能の面白さも知ることが出来る。時代小説の入門としてもおすすめです。

永井紗耶子(ナガイサヤコ)
1977年、神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒。新聞記者を経て、フリーランスライターとなり、新聞、雑誌などで幅広く活躍。2010年、「絡繰り心中」で小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。2020年に刊行した『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』は、細谷正充賞、本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞を受賞した。2022年、『女人入眼』が第一六七回直木賞の候補作に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「木挽町のあだ討ち」永井沙耶子

極楽征夷大将軍 垣根 涼介 2023上半期

story:謎に包まれた室町幕府初代将軍、足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて後醍醐天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。(「BOOK」データベースより)

垣根涼介(カキネリョウスケ)
1966年長崎県諌早市生れ。筑波大学卒業。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。04年『ワイルド・ソウル』で、大薮春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞と、史上初の三冠受賞に輝く。翌05年、『君たちに明日はない』で山本周五郎賞を受賞。16年、『室町無頼』で本屋が選ぶ時代小説大賞受賞、週刊朝日「2016年歴史・時代小説ベスト10」第一位(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

地図と拳 小川 哲 2022下半期

数々の文学賞を受賞している小川哲の長編小説。直木賞受賞作品。

「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野…。奉天の東にある“李家鎮”へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。(「BOOK」データベースより)

日本、清、ロシアそれぞれの事情を抱える複数の人物の視点で描かれた『地図と拳』は、絡み合った思惑が交差するスリリングで壮大なスケールのSF歴史小説。義和団や抗日ゲリラの事件、満州国の都市計画に関わる人々の姿などが史実に基づいて描かれ、その時代の満州の張り詰めた空気をリアルに感じられるでしょう。満州の未来を信じて戦う姿に、この国に理想を夢見た男のロマンが詰まっています。

「なぜ過去の人たちは戦争をしたのか」
膨大な資料をもとに描かれた『地図と拳』は歴史小説でもあり、著者の「なぜ」を追求した戦争小説でもあります。
歴史のあらましを知らなくても物語を楽しむことができまるので、戦争を知らない世代にも読んで欲しい作品です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「地図と拳」小川哲

しろがねの葉 千早 茜 2022下半期

数々の文学賞を受賞している千早茜の初の歴史小説。直木賞受賞作品。

戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と秘められた鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は意気阻喪し、庇護者を失ったウメは、欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されたー。繰り返し訪れる愛する者との別れ、それでも彼女は運命に抗い続ける。(「BOOK」データーベースより)

この物語の主人公・ウメは強く賢く好奇心旺盛な少女。彼女の人生を通して女性の生き方や、鉱山で働く男たちの過酷な運命と歴史が描かれています。
坑道の底なしの暗さや恐ろしさ。人間味あふれる銀堀やその家族との生活や交流。運命を受け入れる人々のたくましさ。ウメの恋物語。波乱万丈のストーリーはエンターテイメント溢れる面白さです。

じっくりと味わえる文章と、史実を巧みに織り交ぜたストーリー。
ページをめくる手が止まらなくなる歴史小説です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「しろがねの葉」千早茜

夜に星を放つ 窪 美澄 2022上半期

編集ライターから小説家に転身し、多数の作品を発表。長年に渡って活躍し続けている窪美澄の直木賞受賞作品。

コロナ禍の長引く自粛生活による生活スタイルの変化、死別して会えなくなってしまった母親、新しく家族になった母、この短編集はどの物語も変わってしまった人との距離心の機微が描かれています。人とのつながりを通して、希薄になった人間関係の大切さやあたたかさを再認識させてくれる物語です。

また、登場人物の心情を豊かに表現した文章は簡潔で、その光景がすっと目に浮かぶ。詩的な言葉や表現の数々が散りばめられていて、あっという間に物語の世界に引き込まれてしまいます。とても読みやすく、エッセイを読んでいる感覚にもなるかも。

コロナ禍のなんとなく気落ちする世の中に、明るい光を差すような優しい物語を書こうと思って、この本ができました。」と、小説を書いた理由をこう語った著者。その言葉通り、読後は暖かい気持ちに。
明日への一歩を踏み出せる、人にやさしくなれる物語です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「夜に星を放つ」窪美澄

塞王の楯 今村 翔吾 2021下半期

吉川英治文学新人賞や、山田風太郎賞など数々の賞を受賞している今村翔吾の2022年直木賞受賞作品

戦国時代、穴太衆と呼ばれる石垣職人集団鉄砲職人集団の国友衆の戦いを描いた物語。
穴太衆は質の高い技術をもって堅牢な石垣を作ることで有名であった。方や国友衆は城を難なく落とせるほど優れた鉄砲を創る日本一の技術を持っていた。
最強の楯と矛がぶつかったらどちらが勝つのか?運命の対決に職人の魂とプライドをかけた戦いが幕を開ける。

この物語のクライマックスは2人の天才職人の対決ですが、そこに至るまでの石垣職人匡介の成長や友情を描いた人間ドラマも見どころです。厳しい職人の世界、石垣の積み方や加工なども知ることが出来て面白い。
関ヶ原の前哨戦とも位置付けられる大津城の戦いの場面は一進一退の攻防に胸が熱くなります。

この小説を読む前はただの石に見えた石垣もその奥深さを知った後では、まったく違って見えます。
手に汗握る時代小説でした。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「塞王の楯」今村翔吾

黒牢城 米澤 穂信 2021下半期

ステリー作家、米澤穂信の直木賞受賞作品。各ミステリー賞でも6冠を達成しています。

荒木村重が籠城する有岡城内で人質、自念が死んだ。自決かと思われたその死体にはなんと矢傷があり、その部屋は密室状態だった。村重の家臣たちの動揺を鎮めようと、その時に自念の部屋を見張っていた家臣から証言を取るも誰も犯行を行うことは不可能だと思われた。行き詰った村重は地下の牢に閉じ込めた黒田官兵衛の知恵を借りようとするのだが…

この物語は、織田信長に反旗を翻した村重が籠城した有岡城内で起こったミステリーを描いている。科学的な解決法は皆無なこの時代、探偵小説さながらに官兵衛、村重の冴えわたる推理が展開されます。

また、籠城の緊迫感のなか起こる事件は、人々の心に疑心暗鬼を植え付け、さらに次の事件の引き金に。追い詰められていく有岡城と村重、そして家臣たちとの関係の変化などが複雑に絡み合い、衝撃の結末へ向かって物語が動いていく。

ミステリの精髄と歴史小説の王道、歴史ミステリーの面白さを詰め込んだ一冊。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「黒牢城」米澤穂信

テスカトリポカ 佐藤 究 2021上半期

鬼才・佐藤究が放つ、クライムノベルの新究極、世界文学の新次元!

メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていくーー。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。第34回山本周五郎賞受賞。(出版社より)

星落ちて、なお 澤田 瞳子 2021上半期

【第165回直木賞受賞作!】
鬼才・河鍋暁斎を父に持った娘・暁翠の数奇な人生とはーー。
父の影に翻弄され、激動の時代を生き抜いた女絵師の一代記。

不世出の絵師、河鍋暁斎が死んだ。残された娘のとよ(暁翠)に対し、腹違いの兄・周三郎は事あるごとに難癖をつけてくる。早くから養子に出されたことを逆恨みしているのかもしれない。
暁斎の死によって、これまで河鍋家の中で辛うじて保たれていた均衡が崩れた。兄はもとより、弟の記六は根無し草のような生活にどっぷりつかり頼りなく、妹のきくは病弱で長くは生きられそうもない。
河鍋一門の行末はとよの双肩にかかっっているのだったーー。(出版社より)

心(うら)淋し川 西條 奈加 2020下半期

不美人な妾ばかりを囲う六兵衛。その一人、先行きに不安を覚えていたりきは、六兵衛が持ち込んだ張形に、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして…(「閨仏」)。飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな女の子の唄を耳にする。それは、かつて手酷く捨てた女が口にしていた珍しい唄だった。もしや己の子ではと声をかけるがー(「はじめましょ」)他、全六編。生きる喜びと哀しみが織りなす、渾身の時代小説。第164回直木賞受賞。(「BOOK」データベースより)

少年と犬 馳 星周 2020上半期

家族のために犯罪に手を染めた男。拾った犬は男の守り神になったー男と犬。仲間割れを起こした窃盗団の男は、守り神の犬を連れて故国を目指すー泥棒と犬。壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいたー夫婦と犬。体を売って男に貢ぐ女。どん底の人生で女に温もりを与えたのは犬だったー娼婦と犬。老猟師の死期を知っていたかのように、その犬はやってきたー老人と犬。震災のショックで心を閉ざした少年は、その犬を見て微笑んだー少年と犬。犬を愛する人に贈る感涙作。(「BOOK」データベースより)

熱源 川越 宗一 2019下半期

樺太アイヌの戦いと冒険を描いた第162回直木賞受賞作。

北海道のさらに北に浮かぶ島、樺太(サハリン)。人を拒むような極寒の地で、時代に翻弄されながら、それでも生きていくための「熱」を追い求める人々がいた。アイヌのヤヨマネクフとサハリンに流刑になったポーランド人二人の生涯、そして激動の時代を描いた圧巻の歴史小説。

この物語の中心は故郷を奪われた人々の群像劇ですが、アイヌの風俗や習慣など民俗学的視点においても面白い。アイヌは人間が逆らうことの出来ない自然の事象や動植物などにも神(カムイ)の存在を見いだし築いてきました。「熊送り」という儀礼や入墨の習慣など、驚くべき伝統文化が数多く描かれています。

日本、ロシア、そして2つの国に翻弄された樺太を舞台に、明治、大正、昭和と時代を超えた壮大なスケールで描かれた物語です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「熱源」川越宗一

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び 大島 真寿美 2019年上半期

第161回直木賞受賞作。
虚実の渦を作り出した、もう一人の近松がいた──
「妹背山婦女庭訓」や「本朝廿四孝」などを生んだ人形浄瑠璃作者、近松半二の生涯を描いた比類なき名作!
江戸時代、芝居小屋が立ち並ぶ大坂・道頓堀。
大阪の儒学者・穂積以貫の次男として生まれた成章(のちの半二)。
末楽しみな賢い子供だったが、浄瑠璃好きの父に手をひかれて、竹本座に通い出してから、浄瑠璃の魅力に取り付かれる。
父からもらった近松門左衛門の硯に導かれるように物書きの世界に入ったが、弟弟子に先を越され、人形遣いからは何度も書き直しをさせられ、それでも書かずにはおられなかった……。
著者の長年のテーマ「物語はどこから生まれてくるのか」が、義太夫の如き「語り」にのって、見事に結晶した奇蹟の芸術小説。(「BOOK」データベースより)

宝島 真藤 順丈 2018下半期

英雄を失った島に、新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染み、グスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになりー同じ夢に向かった。超弩級の才能が放つ、青春と革命の一大叙事詩!!(「BOOK」データベースより)

構想7年、執筆に3年をかけて真藤順丈が沖縄の歴史に挑んだ直木賞受賞作

戦果アギヤーという米軍基地から物資を盗んでいた人々を通して戦後沖縄の歴史を描いた大河ドラマ。教科書や歴史書からはこぼれ落ちてしまった真実を伝えたくて、著者が腹を括って書いたとのこと。「ジャーナリズムとは違う伝える力が小説にはある」との著者の想いがある。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「宝島」真藤順丈

ファーストラヴ 島本 理生 2018年上半期

父親殺害の容疑で逮捕された女子大生・環菜。アナウンサー志望という経歴も相まって、事件は大きな話題となるが、動機は不明であった。臨床心理士の由紀は、ノンフィクション執筆のため環菜や、その周囲の人々へ取材をする。そのうちに明らかになってきた少女の過去とは。そして裁判は意外な結末を迎える。第159回直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

銀河鉄道の父 門井 慶喜 2017年下半期

政次郎の長男・賢治は、適当な理由をつけては金の無心をするような困った息子。
政次郎は厳格な父親であろうと努めるも、賢治のためなら、とつい甘やかしてしまう。
やがて妹の病気を機に、賢治は筆を執るもーー。

天才・宮沢賢治の生涯を父の視線を通して活写する、究極の親子愛を描いた傑作。<第一五八回直木賞受賞作>(「BOOK」データベースより)

月の満ち欠け 佐藤 正午 2017年上半期

あたしは、月のように死んで、生まれ変わるーこの七歳の娘が、いまは亡き我が子?いまは亡き妻?いまは亡き恋人?そうでないなら、はたしてこの子は何者なのか?三人の男と一人の女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく、この数奇なる愛の軌跡。第157回直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

蜜蜂と遠雷 恩田 陸 2016年下半期

近年その覇者が音楽界の寵児となる芳ヶ江国際ピアノコンクール。自宅に楽器を持たない少年・風間塵16歳。かつて天才少女としてデビューしながら突然の母の死以来、弾けなくなった栄伝亜夜20歳。楽器店勤務のサラリーマン・高島明石28歳。完璧な技術と音楽性の優勝候補マサル19歳。天才たちによる、競争という名の自らとの闘い。その火蓋が切られた。(「BOOK」データベースより)

海の見える理髪店 荻原 浩 2016年上半期

店主の腕に惚れて、有名俳優や政財界の大物が通いつめたという伝説の理髪店。僕はある想いを胸に、予約をいれて海辺の店を訪れるが…「海の見える理髪店」。独自の美意識を押し付ける画家の母から逃れて十六年。弟に促され実家に戻った私が見た母は…「いつか来た道」。人生に訪れる喪失と向き合い、希望を見出す人々を描く全6編。父と息子、母と娘など、儚く愛おしい家族小説集。直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

つまをめとらば 青山 文平 2015年下半期

女が映し出す男の無様、そして、真価ー。太平の世に行き場を失い、人生に惑う武家の男たち。身ひとつで生きる女ならば、答えを知っていようかー。時代小説の新旗手が贈る傑作武家小説集。男の心に巣食う弱さを包み込む、滋味あふれる物語、六篇を収録。選考会時に圧倒的支持で直木賞受賞。(「BOOK」データベースより)

流 東山 彰良 2015上半期

一九七五年、台北。内戦で敗れ、台湾に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で?無軌道に過ごす十七歳の葉秋生は、自らのルーツをたどる旅に出る。台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。激動の歴史に刻まれた一家の流浪と決断の軌跡をダイナミックに描く一大青春小説。直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

サラバ! 西 加奈子 2014下半期

僕はこの世界に左足から登場したー。圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。日本人学校に通うことになった歩は、ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。(「BOOK」データベースより)

破門 黒川 博行 2014上半期

「わしのケジメは金や。あの爺には金で始末をつけさせる」映画製作への出資金を持ち逃げされた、ヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮。失踪したプロデューサーを追い、桑原は邪魔なゴロツキを病院送りにするが、なんと相手は本家筋の構成員だった。禁忌を犯した桑原は、組同士の込みあいとなった修羅場で、生き残りを賭けた大勝負に出るがー。直木賞受賞作にして、エンターテインメント小説の最高峰「疫病神」シリーズ!(「BOOK」データベースより)

昭和の犬 姫野 カオルコ 2013下半期

昭和三十三年滋賀県に生まれた柏木イク。気難しい父親と、娘が犬に咬まれたのを笑う母親と暮らしたのは、水道も便所もない家。理不尽な毎日だったけど、傍らには時に猫が、いつも犬が、いてくれた。平凡なイクの歳月を通し見える、高度経済成長期の日本。その翳り。犬を撫でるように、猫の足音のように、濃やかで尊い日々の幸せを描く、直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

恋歌(れんか) 朝井 まかて 2013下半期

樋口一葉の師・中島歌子は、知られざる過去を抱えていた。幕末の江戸で商家の娘として育った歌子は、一途な恋を成就させ水戸の藩士に嫁ぐ。しかし、夫は尊王攘夷の急先鋒・天狗堂の志士。やがて内乱が勃発すると、歌子ら妻子も逆賊として投獄される。幕末から明治へと駆け抜けた歌人を描く、直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

ホテルローヤル 桜木 紫乃 2013上半期

北国の湿原を背にするラブホテル。生活に諦念や倦怠を感じる男と女は“非日常”を求めてその扉を開くー。恋人から投稿ヌード写真の撮影に誘われた女性事務員。貧乏寺の維持のために檀家たちと肌を重ねる住職の妻。アダルト玩具会社の社員とホテル経営者の娘。ささやかな昴揚の後、彼らは安らぎと寂しさを手に、部屋を出て行く。人生の一瞬の煌めきを鮮やかに描く全7編。第149回直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

等伯 安部 龍太郎 2012下半期

能登・七尾で武士の家に生まれた信春は、長谷川家の養子となり絵仏師として名声を得ていた。都に出て天下一の絵師になるという野望を持っていた彼だが、主家の内紛に巻き込まれて養父母を失い、妻子とともに故郷を追われる。戦国の世に翻弄されながらも、己の信念を貫かんとした絵師・等伯の誕生を描く傑作長編。直木賞受賞。(「BOOK」データベースより)

何者 朝井 リョウ 2012下半期

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたからー。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて…。直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

鍵のない夢を見る 辻村 深月 2012上半期

人気作家・辻村深月の直木賞受賞作品。

「不審火だって、不審火」
笙子の実家の近くで放火が疑われる火事が起こった。彼女はふと、昔合コンで知り合った消防士の大林という男を思い出す。彼に好意を持たれ、しつこく誘われていた笙子はある疑いを持つが…。(「石蕗南地区の放火」より)

他者からどう見られているか、自分をどうアピールするべきか。社会では他者との関わり方において、自分自身を他者の視点から見るという観点が必要です。この物語の登場人物は、それがちょっとずれた人たち。「こうすれば相手に好かれるだろう」「本当の自分はこんなもんじゃない」。自意識の強い彼らは自分の中で勝手にストーリーを作りあげ、それに縛られてしまいます。普通なら途中で間違っていることに気づき、軌道修正するのですが…。これは決して他人事ではなく、誰もが陥る日常の中にぽっかりと口をあけている穴かもしれません。ふとした拍子に落ちてしまったら…。

思い込みもほどほどに。ホラー的要素もあるミステリー短編集

蜩ノ記(ひぐらしのき) 葉室 麟 2011下半期

豊後羽根藩の檀野庄三郎は不始末を犯し、家老により、切腹と引き替えに向山村に幽閉中の元郡奉行戸田秋谷の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室との密通の廉で家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。編纂補助と監視、密通事件の真相探求が課された庄三郎。だが、秋谷の清廉さに触るうち、無実を信じるようになり…。凛烈たる覚悟と矜持を描く感涙の時代小説!(平成23年度下半期第146回直木賞受賞作)(「BOOK」データベースより)

下町ロケット 池井戸 潤 2011上半期

研究者の道をあきらめ、家業の町工場・佃製作所を継いだ佃航平は、製品開発で業績を伸ばしていた。そんなある日、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられる。圧倒的な形勢不利の中で取引先を失い、資金繰りに窮する佃製作所。創業以来のピンチに、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、佃製作所が有するある部品の特許技術に食指を伸ばしてきた。特許を売れば窮地を脱することができる。だが、その技術には、佃の夢が詰まっていたー。男たちの矜恃が激突する感動のエンターテインメント長編!第145回直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

月と蟹 道尾 秀介 2010下半期

海辺の町、小学生の慎一と春也はヤドカリを神様に見立てた願い事遊びを考え出す。無邪気な儀式ごっこはいつしか切実な祈りに変わり、母のない少女・鳴海を加えた三人の関係も揺らいでゆく。「大人になるのって、ほんと難しいよね」-誰もが通る“子供時代の終わり”が鮮やかに胸に蘇る長篇。直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

漂砂(ひょうさ)のうたう 木内 昇 2010下半期

御一新から10年。武士という身分を失い、根津遊廓の美仙楼で客引きとなった定九郎。自分の行く先が見えず、空虚の中、日々をやり過ごす。苦界に身をおきながら、凛とした佇まいを崩さない人気花魁、小野菊。美仙楼を命がけで守る切れ者の龍造。噺家の弟子という、神出鬼没の謎の男ポン太。変わりゆく時代に翻弄されながらそれぞれの「自由」を追い求める男と女の人間模様。第144回直木賞受賞作品。(「BOOK」データベースより)

小さいおうち 中島 京子 2010上半期

昭和初期、女中奉公にでた少女タキは赤い屋根のモダンな家と若く美しい奥様を心から慕う。だが平穏な日々にやがて密かに“恋愛事件”の気配が漂いだす一方、戦争の影もまた刻々と迫りきてー。晩年のタキが記憶を綴ったノートが意外な形で現代へと継がれてゆく最終章が深い余韻を残す傑作。著者と船曳由美の対談を巻末収録。(「BOOK」データベースより)

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