文豪が描く BL10選

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なぜ、いまBLなのか

書店の中をウロウロしていると、見目麗しい男性のイラストや、思わず二度見してしまうようなタイトルがずらりと並んでいる一画があります。男性同士の恋愛を描くボーイズラブ、略してBLのコーナーです。コアなファンに支えらてきたBLは近年、ドラマや映画、アニメなどエンターテイメントの分野を中心に伸長拡大し、一大ジャンルとなりました。今やBLを扱ったコンテンツの市場規模は200億円以上とも言われています。

多様性社会の後押しもあり、市民権を得たBL自由な恋愛を認める価値観は、また一歩進んだ思想のようにも感じられますが、かつて当然のように同性愛が受け入れられていた時代があったことをご存じでしょうか?

紀元前、古代ギリシアでは同性愛はありふれたものでした。最強と謳われた歩兵部隊「神聖隊」が男性の恋人同士で編成されていたのは有名な話。「共に戦場に出ればお互いが惨めな姿を見せまいと勇敢に振る舞い、また愛する人を守るため奮戦するだろう」との狙い通り、ギリシア覇権確立に大いに貢献したとか。この頃の少年愛の風習は文化的義務の側面もあったようです。

同性愛文化において、日本も古代ギリシャに匹敵するくらい盛んであったと言われています。古くは『日本書紀』に記録があり、『源氏物語』などの書物、和歌や日記にも男色が描かれています。武士や僧侶を始め、江戸時代には庶民にまでその文化は広まり、流行しました。

また、19世紀イギリスの寄宿制パブリックスクールや明治日本の学生寮など、寝食を共にする男だけの集団生活の場面では、密かに同性愛的行為が行われていたようです。森鴎外『ヰタ・セクスアリス』や川端康成『少年』、フォースターの『モーリス』などにその様子が描かれ、美少年愛好ぶりが伺えます。

しかし、宗教や政治による争いの歴史が、この文化に対してだけ寛容であるはずもなく…。

「同性愛」の概念がまだ一般に広まっていなかった19世紀末、文豪オスカーワイルドが同性愛の罪で投獄され、イギリス中を騒がせました。「親密な男性同士の関係は宗教上において罪であり道徳的堕落を招くとして犯罪行為とみなされるようになり、市民の間に同性愛=悪徳との考えが徐々に浸透していきました。この事件はその後の同性愛者や文学にも多大な影響を与えることに。
また、ナチスドイツにおいて男性の同性愛者は「ドイツの出生率を下げる」としてユダヤ人と共に強制収容所送りの対象になりました。

日本も西欧の文化を取り入れ法律化しましたが、その後撤廃しています。

そして昭和後期、ドイツの古典作品などに影響を受け、同性愛をテーマにした少女漫画が登場。表現の自由度が高い日本の漫画文化がBLジャンルを発展させました。日本発祥のこの文化は今、世界へ広まりつつあります。最近では逆輸入されたBLのコンテンツも増えてきており、人気のタイBLドラマや、中国で社会現象を巻き起こしたBL小説原作のアニメなど「アジアBL」が女性の間で大ブームなんだとか。

今、大注目のBL。その原点である名作小説を10冊紹介させていただきます。
文豪が紡ぐめくるめく愛の物語。美しい文学の世界にどっぷり浸ってみませんか?

BLと同性愛を合わせて紹介しましたが、これらを同列に考えているものではありません。

海外の作品日本作品の順に紹介しています。

ドリアン・グレイの肖像  オスカー・ワイルド

~誘惑から逃れる唯一の方法は、誘惑に屈してしまうことだ。~

「美の黄金期」に文学の旗手として名を馳せたオスカー・ワイルドの代表作。ワイルド唯一の長編小説。

story:舞台はロンドンのサロンと阿片窟。美貌の青年モデル、ドリアンは快楽主義者ヘンリー卿の感化で背徳の生活を享楽するが、彼の重ねる罪悪はすべてその肖像に現われ、いつしか醜い姿に変り果て、慚愧と焦燥に耐えかねた彼は自分の肖像にナイフを突き刺す…。快楽主義を実践し、堕落と悪行の末に破滅する美青年とその画像との二重生活が奏でる耽美と異端の一大交響楽。(出版社より)

『ドリアン・グレイの肖像』が世に出たのは1890年、美の黄金期と言われる19世紀のイギリス。現在では「英語で書かれた小説ベスト100」にも選出されている小説ですが、発売当時は犯罪であるはずの同性愛をほのめかしていると批判を浴びました。

人間にとって最も価値あるものは美であるー。物語は絶世の美青年・ドリアンが自身の肖像画を見て美しさを自覚する所からが始まります。美の絶頂から衰えていく未来に恐怖を感じるドリアンと彼の美しさに心を奪われた画家・バジル、そしてドリアンが心酔するヘンリー卿。ビクトリア朝の耽美な世界観にうっとりするも、やがて死の匂いがする退廃的なゴシック小説の全貌が見えてきます。

自身も男色の罪で投獄された悲劇の天才・ワイルドの渾身作は、道徳的なメッセージや本質を突く名言の宝庫。ぜひとも読んでおきたい古典小説です。

イギリス文学・耽美・貴族・芸術・美少年

ワイルド,オスカー(Wilde,Oscar)
1854-1900。ダブリンに生れ、同地の大学を経てオクスフォード大学に学ぶ。「芸術のための芸術」を唱えて唯美主義、芸術至上主義に基づく活動を展開し、フランスやアメリカにまで名を知られた。小説『ドリアン・グレイの肖像』や『ウィンダミア卿夫人の扇』など一連の喜劇作品、世紀末文学の代表とされる悲劇『サロメ』などで文名高く時代の寵児となるも、男色罪による獄中生活の後は不遇な晩年を送った(「BOOK」データベースより)

モーリス フォースター

~「ぼくはきみを崇拝している」二人の青年は愛の深さゆえ傷つき、傷つけあう~

イギリスの作家、E・M・フォースターの同性愛をテーマにした長編。著者の死後に出版され、1987年に映画化されています。同名タイトルの映画作品は、ヴェネツィア国際映画祭で受賞するなど高く評価されています。

story:凡庸な少年時代から、モーリスは自分の願望を知ってはいた。ケンブリッジ大学の学舎で知的なクライヴと懇意になり、戯れに体が触れあううち、彼の愛は燃え上がる。クライヴもまた愛の言葉を口にするが…欲望のままに生きることが許されない時代に生きる青年の苦悩と選択を描く。。(「BOOK」データベースより)

20世紀初頭のイギリス。凛々しく魅力的な上流階級の美少年たちが名門キングス・カレッジで交流を深める風景ー。原作同名の映画『モーリス』がリバイバル上映されたそうです。裕福層の良識と品格を備えたエリートたちが集うキングス・カレッジは、元々は全寮制の男子校であったため、まだ法律で禁じられていた時代にもかかわらず同性愛の温床になっていたとか。

主人公・モーリスの物語は禁断の恋愛ストーリーとして楽しめますが、著者自身の自伝性を帯びている部分もあり、イギリスの伝統的な階級社会における格差と偏見が作品全体にわたって表現されていることなどから、奥深いテーマを持った恋愛小説として位置づけられています。

その時代のイギリスの芸術的ロマンを感じることが出来る物語。
読みやすく、古典文学ファンにも、BLを好む人にもおススメです。

イギリス文学・青春・恋愛

フォースター,E.M.(Forster,Edward Morgan)
1879-1970。英国の小説家。ケンブリッジ大学キングズ・カレッジ卒業。1969年には、英国でもっとも名誉とされるメリット勲章を受章した(「BOOK」データベースより)

ヴェニスに死す トーマス・マン

~「わたしはおまえを愛している」至高の美少年に魅せられた芸術家

ノーベル賞作家トーマス・マンの代表作。これを原作とした映画はヴェネツィア国際映画祭で受賞し、巨匠ルキノ・ヴィスコンティのドイツ3部作の一つと言われています。少年タッジオ役を務めたビョルン・ヨーハン・アンドレセンは、世界一の美少年としてアイドル的な人気を博しました。

story:旅先のヴェニスで出会った、ギリシャ美を象徴するような端麗無比な姿の美少年。その少年に心奪われた初老の作家アッシェンバッハは、美に知性を眩惑され、遂には死へと突き進んでゆく。神話と比喩に満ちた悪夢のような世界を冷徹な筆致で構築し、永遠と神泌の存在さえ垣間見させるマンの傑作。(「BOOK」データーベースより)

同性愛小説の古典とされている『ベニスに死す』。この物語に登場する少年タッジオは、ヴェネツィア旅行の際にトーマス・マンが夢中になったポーランドの美少年がモデルと言われており、自伝的小説の一面もあるようです。

水の都ヴェネツィアを舞台に美しい少年への恋心を募らせる初老の作家・アッシェンバッハ。美に陶酔した男の非合理な心情を描いたストーリーは、ともすれば非倫理的、反道徳的にすら感じられる耽美の世界が広がっています。ニーチェやプラトンなどを引用した詩的な表現、観念的な叙述も多いため、少し堅苦しく感じるところもあるのですが、章を追うごとに読みやすくなります。

観光地のベールが剥がれた街の姿や忍び寄る魔の手など、不穏な空気が漂う後半は主人公の行く末も案じられ、ページをめく手も止まらないでしょう。

美少年に魅入られた男の妄想BLとして楽しむもよし、「死」を描いた哲学の書としても読むもよし。
日本の多くの作家や漫画家に影響を与えた名作です。

ドイツ文学・哲学・美少年

マン,トーマス(Mann,Thomas)
1875年、北ドイツの商業都市リューベックの商人の家に生まれる。父親が亡くなると、家族と共にミュンヘンに移り、保険会社の社員として働きながら、創作活動をはじめる。ショーペンハウアーやニーチェの哲学、ワーグナーなどから多大な影響を受ける。1929年、ノーベル文学賞受賞。1955年死去。
(「BOOK」データベースより)

薔薇の奇跡 ジュネ

~美しいならず者たち、僕を魅了する光であり同時に闇でもあった者たちについて~

非行少年から世界中で読まれる作家へ。文学史上最もスキャンダラスな作家が描く自伝的小説。

story:監獄と少年院を舞台に、アルカモーヌ、ビュルカン、ディヴェールら「薔薇」に譬えられる美しい囚人たちとジュネ自身をめぐる、暴力と肉体の物語。同性愛者であり泥棒でもあった作家が、悪と性に彩られた監獄世界を緻密かつ幻想的に描くことで、そこに聖性を発見していく驚異の書。精密な読みに基づくこの新訳により、まったく新しいジュネ像が見えてくる!(「BOOK」データベースより)

〈作家〉という言葉がふさわしいかどうかわからない。こんな風に例えられる作家はあまりいないのではないかー。若かりし頃のジャン・ジュネは窃盗・男娼・麻薬密売などの犯罪を繰り返し、監獄の中と外を行ったり来たりしていた非行少年でした。『薔薇の奇跡』はその頃のジュネが刑務所で書いた、いわば自伝的小説。彼は作品を評価されたことで、結果的に終身刑を免れたそうです。

作家ジャン・コクトーに絶賛され、作家デビューを果たしたジュネ。日本でも坂口安吾や三島由紀夫らに共感、評価された作家ですが、その文章は魔術だと評されるほど読み手を混乱の渦に陥れることもしばしば。不思議な省略の仕方や不明瞭な時間軸が多く、比喩を多用する表現も拍車をかけているように感じられます。ジュネの文章の不思議は、そんな難解さと俗悪な言葉、過激な性表現がありながらも純粋で詩的な美しさを感じられるところ。文学としても高く評価されています。
ポルノか芸術か。同性愛者のジュネが描く格式高い悪人たちの神話。
文学史上最も過激な芸術小説です。

フランス文学・監獄・犯罪・性表現・過激な描写

ジュネ,ジャン(Genet,Jean)
1910-1986。フランスの作家、詩人。1910年パリに生まれる。’42年、『花のノートルダム』を書き始め、’44年、同作が文芸誌に掲載されデビュー(「BOOK」データベースより)

日本の作品

禁色 三島 由紀夫

~おねがいだ。女を愛さぬことで、私の仇を討ってくれ。~

昭和の日本文学を代表する作家・三島由紀夫の長編代表作のひとつ。『仮面の告白』と並び男色をテーマにした作品で、発表当時は文壇にセンセーションを巻き起こしました。

story:「僕は女を愛せないんです」-。完璧な美貌の青年・南悠一がそう告げたとき、老作家・桧俊輔の復讐遊戯が幕を上げた。「悠一の美を使って自分を裏切った女たちを手酷く堕落させるのだ」。一方で悠一はゲイバー「ルドン」の淫靡を身に纏いはじめ、俊輔はとある「愛」の誤算によって次第に人生をも狂わされていく…。『仮面の告白』と並ぶ同性愛小説の極致。(「BOOK」データベースより)

幾多の恋愛と数回の結婚。愛した女性からことごとく苦悩を味合わされたにもかかわらず、女性に惹かれることを止められない老作家の俊介。そんな彼が出会ったのは驚くべき美しい青年・悠一でした。幸福そうな美青年はしかし、女性を愛することが出来ないのだと告白します。

この悠一こそがこの物語の主人公。彼はその卓越した美貌でもって女性を次々と手玉に取り、醜貌な老作家に代わって復讐を果たそうとします。自尊心の高い女性や、好みの男性を意のままに操る悠一の無敵感は惚れ惚れするほどで、骨抜きにされていく男女の滑稽さは喜劇の中にノワール的な面白さがあるように感じます。

また、人物の美や心情などを綿密に、そして耽美的に表現することによって、その裏に隠された彼らの虚無や俗悪な面も見えてきて哲学、文学としても楽しめる。

アブノーマルな世界と人間ドラマ、そして目が離せないストーリー。
日本文学にどっぷりつかりながらBLも堪能できる一冊です。

純文学・美青年・人間

三島由紀夫(ミシマユキオ)
1925-1970。東京生れ。本名、平岡公威。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。’49年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、’54年『潮騒』(新潮社文学賞)、’56年『金閣寺』(読売文学賞)、’65年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。’70年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

草の花 福永 武彦

~オリオンの星座が、その時、水に溶けたように、僕の目蓋から滴り落ちた~

詩人でもある福永武彦の文壇出世作であり、代表作。

story:研ぎ澄まされた理知ゆえに、青春の途上でめぐりあった藤木忍との純粋な愛に破れ、藤木の妹千枝子との恋にも挫折した汐見茂思。彼は、そのはかなく崩れ易い青春の墓標を、二冊のノートに記したまま、純白の雪が地上をおおった冬の日に、自殺行為にも似た手術を受けて、帰らぬ人となった。まだ熟れきらぬ孤独な魂の愛と死を、透明な時間の中に昇華させた、青春の鎮魂歌である。(「BOOK」データベースより)

『草の花』は福永武彦の学生時代の体験をふまえて書かれた、いわば私小説的作品。理想的な愛の形を求め続けた青年の愛と孤独が透明感のある文章で描かれており、作品全体に詩人らしい幻想的な雰囲気が漂います。

物語は、結核治療のため入院したサナトリウムの一室から始まります。「私」はつかみどころのない汐見という男が気になっていました。彼は周りの制止を振り切ってリスクの高い手術に身を投じてしまいます。何故彼は自殺とも思えるような選択をしたのか。「私」は彼の遺した2冊のノートを手に取りその答えを探し始めます。

同性と異性の両方を愛した純粋で真面目な汐見の回顧録。彼が追い求めた「魂の愛」が切ない。強さと弱さ、理想と現実。言葉では言い表せない人間の複雑な心情がこぼれてくるような美しさと儚さで描かれています。

純文学のBL作品を読みたい方にお勧めの一冊。

純文学・魂の愛・人生・戦争

福永武彦(フクナガタケヒコ)
1918-1979。福岡県に生れる。一高在学中から詩を創作する。東大仏文科卒。戦後、詩集『ある青春』、短編集『塔』、評論『ボオドレエルの世界』、10年の歳月を費やして完成した大作『風土』などを発表し注目された。以後、学習院大学で教鞭をとる傍ら、抒情性豊かな詩的世界の中に鋭い文学的主題を見据えた作品を発表した。1961(昭和36)年『ゴーギャンの世界』で毎日出版文化賞、’72年『死の島』で日本文学大賞を受賞。評論、随筆も世評高い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

少年 川端 康成

~「僕はお前に恋していた」寄宿舎。美しい後輩との少年愛~

日本人初のノーベル文学賞を受賞した文豪、川端康成の同性愛を描いた作品。これまで全集でしか読めなかった作品が没後50年という節目に、70年ぶりに文庫として復活しました。

名作伊豆の踊子』のもとにもなった旧稿「湯ヶ島での思い出」と題するもの。その後半部分「中学寄宿舎で同室にいた少年への愛の思い出」がこの『少年です。

この『少年』は川端康成が青春時代を過ごした寄宿舎で同室の後輩、清野への懊悩や蜜月を中心に描かれています。
美少年・清野への恋愛にも似た感情や、恋人同士のようなスキンシップ。清野から寄せられる無垢な愛情に喜びを感じながらも恋人の一歩手前の関係に悶々とする日々。卒業後、清野から送られてくる手紙など、愛惜と寂寥が滲む文章は情緒的で美しい

後輩・清野はモデルとなる実在する人物がいるそうで、この小説は日記形式に綴られた川端康成の回顧録つまり自伝的私小説と言えるでしょう。
文豪が描く繊細で美しい同性愛の世界を堪能できる物語です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「少年」川端康成

純文学・自伝的私小説・寄宿舎・青春

川端康成(カワバタヤスナリ)
1899(明治32)年、大阪生れ。東京帝国大学国文学科卒業。一高時代の1918(大正7)年の秋に初めて伊豆へ旅行。以降約10年間にわたり、毎年伊豆湯ケ島に長期滞在する。菊池寛の了解を得て’21年、第六次「新思潮」を発刊。新感覚派作家として独自の文学を貫いた。’68(昭和43)年ノーベル文学賞受賞。’72年4月16日、逗子の仕事部屋で自死。著書に『伊豆の踊子』『雪国』『古都』『山の音』『眠れる美女』など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

孤島の鬼 江戸川 乱歩

~分ってさえいてくれればいいのだよ。それ以上望むのは僕の無理かも知れないのだから。だが、どうか僕から逃げないでくれたまえ。~

story:初代は3歳で親に捨てられた。お守り代わりの古い系図帳だけが初代の身元の手がかりだ。そんな初代にひかれ蓑浦は婚約を決意するが、蓑浦の先輩で同性愛者の諸戸が初代に突然求婚した。諸戸はかつて蓑浦に恋していた男。蓑浦は、諸戸が嫉妬心からわざと初代に求婚したのではないかと疑う。そんなある日自宅で初代が殺された。これは恐ろしく壮大な物語の幕開けに過ぎなかったー。(「BOOK」データベースより)

この小説は乱歩が森鷗外の随筆に着想を得た作品で、筒井康隆など、乱歩の最高傑作として挙げる作家も少なくありません。乱歩自身も長編では本作が一番出来が良いと考えていたようです。
今の基準で考えるとタブーとされる内容も多く含まれていますが、それが乱歩のおどろおどろしい世界観を完成させており、江戸川乱歩の凄さが分かる一冊となっています。

本筋は密室などの本格ミステリー孤島冒険の財宝探しのストーリーであり、乱歩らしい怪奇色も強い。その舞台に主人公とその友人である美男子との同性愛が展開されるわけですが、その愛の行方が本筋のスリルをさらに高めています。緻密な構成と伏線に最後の最後まで展開が読めず、楽しめます。

同性愛ならではの複雑な心境もしっかり描かれていますが、ミステリー要素が前面に出ているので、そことは関係なく推理小説の面白さを堪能できる内容となっています。

ミステリー・アドベンチャー・孤島

江戸川乱歩(エドガワランポ)
1894年三重県生まれ。早稲田大学卒業。雑誌編集、新聞記者などを経て、1923年「二銭銅貨」でデビュー。以後、「D坂の殺人事件」「心理試験」などの探偵小説を次々発表。怪奇小説、幻想小説にも優れた作品が多い。65年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

口ぶえ 折口信夫

~醜く穢れた気持ち、これが恋なのだろうかー。~

詩人・歌人・民俗学者と様々な顔を持つ折口信夫は、柳田国男の弟子であり、同性愛者としても有名な人物。

story:折口信夫没後70年企画。大阪の中学に通う安良。彼は同性の同級生、渥美に想いを寄せている。一方で、安良はがたいのいい上級生の岡沢に迫られていた。強引な岡沢と清らかな渥美、二人の間で安良は揺れ動くー。表題作「口ぶえ」ほか、師匠まで惑わせる美少年を描いた「身毒丸」、著者の名作「死者の書」の原点である「神の嫁」、さらには怪異小説「生き口を問う女」を収録。(「BOOK」データーベースより)

表題作『口ぶえ』は、折口が国語教師だった頃の大正三年に発表された自伝的BL小説。
同性愛者への偏見が強かった当時にカミングアウトしたのみならず、BL作品をなんと連載小説として新聞へ掲載したというから驚きです。

男子校での美少年の主人公に対する態度や、彼らの視線を意識する気持ち。また、優等生にせまられたり、モテモテだったりと、乙女が夢見るシチュエーションが盛りだくさんで、まさにBLの王道と言っても過言ではありません。

文章に癖のある折口作品の中でも比較的読みやすい作品ではないでしょうか。この時代ならではの純粋さと甘酸っぱさが胸をキュンとさせます。未完なのが残念。
文学的胸キュン作品を読みたい方に。

自伝的小説・ロマンス・胸キュン

折口信夫(オリクチシノブ)
1887年、大阪府西成郡木津村生まれ。天王寺中学を経て國學院大學卒業。のち國學院大學教授、慶應義塾大学教授。国語学・国文学・民俗学・芸能史を研究し、独自の学風を築く。また釈迢空の名で歌人・詩人としても知られる。1953年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

恋人たちの森 森 茉莉

~「明日僕の部屋へ来ないか。マルティニとチイズを御馳走しよう。それから君に着るものを誂えて上げよう」~

文豪森鴎外の長女・森茉莉の短編集。少年愛を描いた3作品の内、表題作『恋人たちの森』は田村俊子賞受賞作品。

story:愛される少年。愛する男。男同士を嫉妬しながら少年を母のように抱く少女。そして、恋人を美少年の魅力から取り戻そうとする黄昏の女の破滅的な情炎。頽廃と純真の綾なす官能の世界を、言葉の贅を尽して描く表題作。愛する少年を奪われる前に殺し、自らも息絶えた男の鮮烈な最期。禁じられた恋の光輝と悲傷を雪の武蔵野に綴る『枯葉の寝床』など、鬼才のロマン全4編を収録。(「BOOK」データベースより)

森茉莉は日本で初めて男性同士の性愛を描いた女性であり、ジャンルBLの先駆者と言われています。女性ならではの感性で描かれた女性のための甘美な物語は、当時の少女漫画の世界に多大な影響を与え、腐女子文化が広まるきっかけとなりました。

眉目秀麗で社会的地位の高い外国人のハーフに、ギリシャ神話に登場するような無垢な美少年たち。神秘的で神々しい少年愛の世界にうっとりし、甘い恋のささやきにとろけてしまう。どことなく漂うヨーロッパの香りと幻想的な雰囲気、刹那的な愛のストーリーがマッチして、なんとも美しいロマンスを奏でています。

甘く、盲目的な愛の様々な結末。
元祖BLを味わえるロマンティックな一冊です。

胸キュン・スパダリ・美少年

森茉莉(モリマリ)
1903-1987。東京千駄木生れ。森鴎外と二度目の妻志げの長女。生来病弱だったため、特に父の溺愛をうけて成長した。さらに20代での二度の離婚経験、初婚時代の滞仏体験を経て、幻想的な芸術世界を艶美繊細に築きあげる文学的資質が開花した。50歳を過ぎて父の回想記『父の帽子』(1957、日本エッセイスト・クラブ賞)で評価を得、その後は独自の創作を展開した。主著は『恋人たちの森』(田村俊子賞)、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

~参考資料~

饗宴 プラトン

story:なぜ男は女を求め、女は男を求めるのか?愛の神エロスとは何なのか?悲劇詩人アガトンの優勝を祝う飲み会に集まったソクラテスほか6人の才人たちが、即席でエロスを賛美する演説を披瀝しあう。プラトン哲学の神髄ともいうべきイデア論の思想が論じられる対話篇の最高傑作。(「BOOK」データベースより)

プラトン
427-347B.C.古代ギリシャを代表する哲学者。アテネの名門の家系に生まれる。師ソクラテスとの出会いとその刑死をきっかけに哲学の道に入り、40歳ころには学園「アカデメイア」を創設して、晩年まで研究・教育活動に従事した(「BOOK」データーベースより)

ヰタ・セクスアリス改版 森鴎外

story:哲学講師の金井湛君は、かねがね何か人の書かない事を書こうと思っていたが、ある日自分の性欲の歴史を書いてみようと思いたつ。六歳の時に見た絵草紙の話に始り、寄宿舎で上級生を避け、窓の外へ逃げた話、硬派の古賀、美男の児島と結んだ三角同盟から、はじめて吉原に行った事まで科学者的な冷静さで淡々と描かれた自伝体小説であり掲載誌スバルは発禁となって世論をわかせた。(「BOOK」データベースより)

森鴎外(モリオウガイ)
1862-1922。本名・森林太郎。石見国鹿足郡津和野町に生れる。東大医学部卒業後、陸軍軍医に。1884(明治17)年から4年間ドイツへ留学。帰国後、留学中に交際していたドイツ女性との悲恋を基に処女小説「舞姫」を執筆。以後、軍人としては軍医総監へと昇進するが、内面では伝統的な家父長制と自我との矛盾に悩み、多数の小説・随想を発表する。近代日本文学を代表する作家の一人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

BLの教科書 堀 あきこ

story:BL(ボーイズラブ)の歴史や研究の方法論,社会との関わりなどをジェンダー視点を重視して整理したBL研究入門。少年愛の時代からBLが一般的になった現在への変遷や,様々な形態のBLについて分析。BLで卒論や修論を書こうと思っている人に最適。(出版社より)

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