読書ブログ2022年8月・9月に読んだ本

読書日記月別
記事内に広告が含まれています。

2022年8月・9月に読んだ本をまとめました。
基本、人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。

今回から私の満足度、おススメ度でをつけています。

★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!

★★★★  とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!

★★★   読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!

★★    少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。

     う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。

あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。

文豪たちの妙な話

★★★★★

story:夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、梶井基次郎、佐藤春夫、谷崎潤一郎、久米正雄、太宰治、横光利一、正宗白鳥ら日本文学史に名を残す10人の文豪が書いた「妙な話」を集めたアンソロジー。病院で聞いた「変な音」、突如消えた時計など日常に潜む謎から、盗みや殺人をしてしまう犯罪心理まで、「人間の心の不思議」に迫る異色のミステリー。(「BOOK」データベースより)

誰もが知る名だたる文豪が勢揃い。個性豊か過ぎる文豪が書く「ちょっと変わったお話」です。正宗白鳥の『人を殺したが…』以外はそれぞれ20~30ページの短編で、さらりと読めます。 探偵小説っぽい話からホラー要素のある物語まで。それぞれ個性があって面白い。

『妙な話』芥川龍之介、約10ページの短編。
芥川の奇妙な話といえば『妖婆』を思い出しますが、あれはどちらかと言えばホラーのカテゴリーに入るのでしょうか。この話もちょっとホラーテイスト。赤帽の顔が覚えられなかったり、雨や風車といった小技が効いている。怪談話を聞いているようなぞわぞわ感とそれでどうなるの?と思わせる筋運びは流石です。
この奇妙な話を最後三行で、全く別の話にしてしまうのが芥川らしいところ。ちょっと薄気味悪いねと思ってたのに真顔になってしまったよ。物の怪と捉えるか皮肉と捉えるか、解釈を読者に委ねる感じです。結局真実は藪の中なのか。

他、9作品も作品別に別に短い紹介と感想を書いています。
よろしければ、下記の読書ブログのページへどうぞ。

山前譲(ヤママエユズル)
1956年、北海道生まれ。推理小説研究家。ミステリー評論家の新保博久との共編著『幻影の蔵 江戸川乱歩探偵小説蔵書目録』で2003年に日本推理作家協会賞(評論その他の部門)受賞。数多くの文庫解説の執筆、アンソロジーの編纂に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『文豪たちの妙な話』

汝、星のごとく 凪良 ゆう

★★★★★

story:風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語(「BOOK」データーベースより)

本屋大賞受賞の人気作家、凪良ゆうの恋愛小説。

瀬戸内の島と東京の街を舞台に、過酷な環境で生きる若者の苦悩、夢と愛が描かれています。
高校生の櫂と暁海の劣悪な家庭環や、彼らに好奇の目を向ける時代錯誤で排他的な島民。そんな中でも自らの居場所と夢を掴もうともがく二人に次々に降りかかる災難。思わず目を背けたくなるような絶望の中でも必死に生きようとする彼らの姿が胸を打ちます。

自分の人生を生きるー。生きるために大事な事、幸せになるための考え方、ヒントになるような言葉の数々。著者からのメッセージが物語を通して伝わってきます。また、櫂と暁海のすれ違いや成長にハラハラし、胸が苦しくなりますが、 気高く純粋な愛の美しさに涙を誘われます。

正しさ」とは何か。生づらさを抱えている人、社会に息苦しさを覚える人に。
美しくて強い、人生と愛の物語。心に残る一冊です。

凪良ゆう(ナギラユウ)
2006年にBL作品にてデビューし、代表作に’21年に連続TVドラマ化された「美しい彼」シリーズなど多数。’17年非BL作品である『神さまのビオトープ』(講談社タイガ)を刊行し高い支持を得る。’20年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。同作は’22年5月に実写映画が公開された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)
もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『汝、星のごとく』凪良ゆう

夜に星を放つ 窪 美澄

★★★★★

story:かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。
コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との関係、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れることの哀しみを描く「真夜中のアボカド」。学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活を描く「真珠星スピカ」、父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺なさを描く「星の随に」など、人の心の揺らぎが輝きを放つ五編。(「BOOK」データーベースより)

編集ライターから小説家に転身し、多数の作品を発表。長年に渡って活躍し続けている窪美澄の直木賞受賞作品。

コロナ禍の長引く自粛生活による生活スタイルの変化、死別して会えなくなってしまった母親、新しく家族になった母、この短編集はどの物語も変わってしまった人との距離心の機微が描かれています。人とのつながりを通して、希薄になった人間関係の大切さやあたたかさを再認識させてくれる物語です。

また、登場人物の心情を豊かに表現した文章は簡潔で、その光景がすっと目に浮かぶ。詩的な言葉や表現の数々が散りばめられていて、あっという間に物語の世界に引き込まれてしまいます。とても読みやすく、エッセイを読んでいる感覚にもなるかも。

コロナ禍のなんとなく気落ちする世の中に、明るい光を差すような優しい物語を書こうと思って、この本ができました。」と、小説を書いた理由をこう語った著者。その言葉通り、読後は暖かい気持ちに。
明日への一歩を踏み出せる、人にやさしくなれる物語です。

窪美澄(クボミスミ)
1965年東京都生まれ。2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。また同年、同書で山本周五郎賞を受賞。12年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞、19年『トリニティ』で織田作之助賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)
もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『夜に星を放つ』窪 美澄

アイドル2.0 コムドットやまと

★★★★★

story:「コムドットは、売れるべくして売れた」
リーダーとして、社長として時代の先頭を突き進むコムドットやまとが積み重ねてきた泥くさい試行錯誤と緻密な分析、そして徹底的に練り込まれた戦略の全てを初めて明かす(出版社より)

人気YouTuberやまとさんが書く自身初の著書『聖域』は、40万部を売り上げ、大ヒットとなりました。この本は前作とは一線を画す内容になっており、コムドットの戦略や今後の展望、業界に対する分析等が詳しく書かれています。

「この本を取ってくれた人にとっての「人生の一冊」になるように」
著者のやまとさんは、はじめにこう語っている。やまとさんが属するコムドットというグループはYouTubeを通して十代の若者をはじめ多くの方に支持され、今や菓子メーカーのCMに出演するまでにもなりました。当書はそんなやまとさんの今に至る経緯や成功の秘訣、戦略、自身の考えなどを一冊の本にまとめたものです。
小タイトルごとに要点をまとめられた構成と成功戦略の内容はビジネス書のようでもありますが、難しい言葉を使わずに自身の経験を例に出し説明しているので、リアルでわかりやすい。

YouTubeを始めたい人は勿論、これから社会に出る学生や、壁にぶつかっている人、今の若者の心の内を覗きたいサラリーマンまで、これからの時代を生きるために必要なたくましさや、秘訣がたっぷり。もちろん、コムドットのエピソードやQ&A、ファンにはうれしい写真も。やまとさんの全てがつまっている一冊です。

コムドットやまと(コムドットヤマト)
“地元ノリを全国へ”をスローガンに掲げ活動する5人組YouTuberコムドットのリーダー。1998年5月15日生まれ。東京都出身。B型。西東京を拠点に、同級生メンバーと「放課後の延長」をテーマに動画配信を始め、10~20代の若い世代を中心に熱狂的な人気を集める。チャンネル登録者数は2021年12月11日に300万人を突破。2021年に発売した自身初の著書『聖域』(KADOKAWA)は40万部、コムドット初の写真集『TRACE』(講談社)は33万部を超え、共に大ヒット(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)
もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『アイドル2.0』コムドットやまと

匿名 柿原 朋哉

★★★★★

story:覆面アーティストとして活躍するFと、ファンアカウントでFの正体を追う友香ー。渋谷の屋上で命を絶とうとしていた越智友香を救ったのは、Fの歌声だった。Fへの思いが生きる原動力となった友香だったが、彼女は覆面アーティストだった。Fを追い続けた友香は、衝撃の事実を知ることになる。(「BOOK」データーベースより)

二人組YouTuber「パオパオチャンネル」で活動している「ぶんけい」こと柿原朋哉のデビュー作品

人生に絶望し、全てを終わらせようと思っていた越智友香は、ビルの屋上で「F」の歌声を聞いた。彼女は、街を浄化するような心地よい歌声に魅了され、謎に包まれた女性歌手「F」を生きがいにするが…。

「F」の歌声によって命を救われた友香と、謎に包まれた女性歌手「F」。二人の女性の視点を通して、現代社会の生きづらさや、先の見えない将来への不安など、今のリアルな若者像と彼らが直面している問題が描かれています。
SNSの発達により、新しい自分や、新しい居場所をネット上に作ることができる匿名時代。その中で生きる若者の、葛藤と成長の物語。

自分自身と、自分を取り巻く環境に苦しくなる…彼女達の悩みや苦悩に共感し、勇気づけられる物語です。

柿原朋哉(カキハラトモヤ)
1994(平成6)年、兵庫県洲本市生まれ。立命館大学映像学部を中退し、映像制作会社「株式会社ハクシ」を設立。二人組YouTuber「パオパオチャンネル」(チャンネル登録者140万人)として活動したのち、2022(令和4)年、『匿名』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)
もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『匿名』柿原朋哉

掌に眠る舞台 小川 洋子

★★★★★

story:「だって人は誰でも、失敗をする生きものですものね。だから役者さんには身代わりが必要なの。私みたいな」帝国劇場の『レ・ミゼラブル』全公演に通う私が出会った「失敗係」の彼女。金属加工工場の片隅で工具たちが演じるバレエ『ラ・シルフィード』。お金持ちの老人が自分のためだけに建てた劇場で、装飾用の役者となった私。-さまざまな“舞台”にまつわる、美しく恐ろしい8編の物語。(「BOOK」データーベースより)

芥川賞や谷崎潤一郎賞、本屋大賞など数々の文学賞を受賞した小川洋子。その洗練された文章や表現力は海外でも根強い人気があります。この小説は舞台にまつわる8つの物語を収録した短編集です。

あるマンションの部屋で亡くなった女性を発見した管理人。整理整頓された部屋にほっとしたが、ベットの下を覗いて息を呑んだ。そこにあったものはー。(「花柄さん」より)

女性がなくなった部屋のベッドの下にあった何か…何か、という以外に表現のしようのない違和感のある物体。その正体は一体何なのか…この部屋の住人はどんな人物で、彼女の身に何が起こったのか。この女性の切ない物語の幕が上がります。
日常と非日常が交差する幻想的な世界の裏に隠されているものは…。そっと狂気の世界へ引きずり込まれる美しくも切ない物語

著者の小説でしか見られない繊細で透明感のある幻想的な景色は唯一無二のもの。
徐々に侵される毒にも似た読書体験を。

小川洋子(オガワヨウコ)
1962年岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。91年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞と本屋大賞、同年『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞を受賞。06年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞受賞。07年フランス芸術文化勲章シュバリエ受章。13年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。20年『小箱』で野間文芸賞を受賞。21年紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)
もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『掌に眠る舞台』小川洋子

傲慢と善良 辻村 深月

★★★★★

story:婚約者・坂庭真実が姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。「恋愛だけでなく生きていくうえでのあらゆる悩みに答えてくれる物語」と読者から圧倒的な支持を得た作品が遂に文庫化。《解説・朝井リョウ》(「出版社より)

『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞した大人気作家、辻村深月の長編恋愛ミステリー。

失踪した婚約者は以前からストーカーに狙われていた。架は婚約者の行方を探すため彼女の過去を辿りますが、知らなかった彼女の姿が見えてきて…。

結婚とは、人生の苦楽を共に分かち合うパートナーを選ぶこと。人によっては、パートナーを直ぐに見つけられる人と、なかなか出会えない人がいます。それは何故か、この小説にはその違いが、生々しい人間の心理描写によって表現されています。人間の本質や深層心理が垣間見え、戦慄を覚えるかも。しかし、その一方で、自分に当てはまるかもと思う人も多いでしょう。
現代をうっすらと覆う病理のようなものを見事に言い当てていると感じた」とは解説の朝井リョウの言葉。

戦慄を覚える場面はあれど、これは紛れもなく愛の物語。
多くの人の心に突き刺さる物語です。

辻村深月(ツジムラミズキ)
1980年2月29日山梨県生まれ。作家。千葉大学教育学部卒。2004年に『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞し、デビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)
もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『傲慢と善良』辻村深月

雨月物語 上田 秋成

★★★★★

story:崇徳院が眠る白峯の御陵を訪ねた西行法師の前に現れたその人は…(白峯)。男同士の真の友情は互いの危機において試された(菊花の約)。戦乱の世に7年もの間、家を留守にした男が故郷に帰って見たものは…(浅茅が宿)。男が出会った世にも美しい女の正体は蛇であった(蛇性の婬)など、珠玉の全九編。

『雨月物語』は上田秋成によって江戸時代中~後期に書かれた読本。その文学的性格から伝奇小説、時代小説、怪異小説、翻案小説などとも呼ばれています。
『太平記』『今昔物語』『万葉集』などの日本の古典と『史記』『古今小説』などの中国の古典を数多く典拠し、翻案した9つの短編小説集。この本は現代語訳と原文の両方が載っています。

日本で指折りの怪談・怪奇文学として有名な作品。
この作品が名作とされているのは、ただの怪談話で終わらずに、仏教の教えや、儒教の倫理観など江戸時代の人々が縛られていた思想を越えて、人間の姿が描かれているところ。哀しみや美しさが込められているこの物語は、人間ドラマとしても名作と言われています。現代でも引用されることも多い作品で、「菊花の約」の再話物語を小泉八雲が書き、「蛇性の婬」を谷崎潤一郎の脚本により映画化されたことも。

また、原文の「枕詞」や「掛詞」を多用しながら綴られる文章の美しさもこの小説の魅力のひとつ。
日本の古典物は難しそうなイメージがありましたが、読みやすくとても面白いのでおすすめです。

上田秋成(ウエダアキナリ)
享保19-文化6年(1734-1809)読本作者・国学者・歌人・煎茶家。大坂生まれ。本名は東作。号は無腸など多数(「BOOK」データベースより)

遠野物語 柳田 国男

★★★★

柳田国男が、岩手県遠野の住人であった佐々木喜善から聞いた遠野地方に伝わる逸話、伝承などをまとめた説話集柳田国男の民俗学者としての出発点であり、日本の民俗学の先駆けとも称される作品。

刊行当時、この説話集はさほど評価されてなく、もちろん民俗学としての価値もまだ見出されていませんでした。解説に田山花袋や、島崎藤村、泉鏡花の批評も載っていますが、「面白いが道楽が過ぎたようにも思われる」など、このような説話を学問の対象として大切なものとの認識は薄かったようです。柳田国男本人の序文や弟子の折口信夫の解説、その他の解説から当時の苦労の様子がうかがえます。

内容はその地方の風俗や伝説、個人の体験した不思議な話など。2行~1ページほどにまとめられた話が計299話にも上ります。
座敷童、雪女、山男、天狗、河童など有名な伝承もあれば、オシラサマ、オクナイサマなどあまり耳馴染みのない話も。個人の体験談も含め、禁忌にまつわる話も多く、当時の厳しい生活環境や自然を知ると共に、村社会の住民同士の密接なつながりも見えてきます。

楽しいよりも恐ろしい伝承の方が圧倒的に多い遠野物語は民俗学の奥深さがわかります。
毎日少しずつ読めるのもうれしい。

柳田國男(ヤナギタクニオ)
1875~1962。民俗学者。1875(明治8)年、兵庫県生まれ。井上通泰の弟。松岡映丘の兄。東京帝国大学卒業。農商務省に入省し、法制局参事官をへて貴族院書記官長を最後に官を辞し、雑誌「郷土研究」の刊行、民俗学研究所の開設などをすすめ、常民の生活史をテーマに柳田学とよばれる日本民俗学を創始。1949(昭和24)年学士院会員、同年日本民俗学会初代会長。1951(昭和26)年文化勲章。1962(昭和37)年、死去。87歳。代表作に『遠野物語』など(「BOOK」データベースより)

光媒の花 道尾 秀介

★★★★★

数々の賞を受賞している人気作家、道尾秀介の山本周五郎賞受賞作品。2年という長いスパンをかけ書き上げた連作短編集。

父の後を継いだ正文は認知症の母と二人で暮らしていた。ある日、母が描いた笹の花の絵を見て正文は驚き、ひやりとする。父がまだ元気だった頃の、あの時の記憶がよみがえる。母はあの日のことを知っているのだろうかー。(第1章「隠れ鬼」より)

人生においての価値観や考え方が変わった出来事、もしくは人生そのものを大きく変える出会い。人はそれによって良い方に導かれたり、悪い方へ向かったりすることもありますね。
この短編集はそんな人生のターニングポイントの物語。強烈な記憶として残っているあれは彼らの十字架なのか、それともなのか。
彼らの過去を紐解くミステリーの中に人間の狂気や社会の残酷さが表れ、ゾクリとします。

人の恐ろしさや温かさ、心の隙や強さなど、ありのままの人間の姿を映す6つの物語。
バラエティ溢れる群像劇です。

道尾秀介(ミチオシュウスケ)
1975年東京都出身。2004年『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。07年『シャドウ』で本格ミステリ大賞を、09年『カラスの親指』で日本推理作家協会賞を、10年『龍神の雨』で大薮春彦賞を、同年『光媒の花』で山本周五郎賞を、11年『月と蟹』で直木賞を受賞(「BOOK」データベースより)

山女日記 湊 かなえ

★★★★

イヤミスの女王、湊かなえの連作長編小説。テレビドラマ化もされています。

律子は仕事仲間の由美と二人きりで登山する羽目になり、憤りを隠せない。前々から由美の性格や行いに疑問や不満を抱いているが、この登山でも癇に障るところが多々あり、ストレスが溜まっていく。その上、婚約者の堅太郎との結婚についても悩みを抱えている律子にとって、この登山は憂鬱で仕方がないのだが…。

湊かなえといえばイヤミスですが、この小説は著者の趣味の登山を活かした山岳&人間ドラマ小説
湊かなえ自身が登ったことのある山が舞台となっているため、読んでいると、山の景色が見えてきます。また、実際は景色を楽しむ時間より、黙々と地面を見ながら歩いている時間の方が遥かに長いことなど、登山あるあるも随所にみられて楽しい。
黙々と歩きならがら、人生や人間関係に悩む女性が自分自身を見つめ、やがて自分の生きる道を探し当てる群像劇となっています。

美しい大自然の山を登ってみれば、目的地に着くころには問題も解決しているかも。
ごく普通の女性の悩みに共感がもてる。明日への活力になる物語です。

湊かなえ(ミナトカナエ)
1973年広島県生まれ。2007年「聖職者」で第二九回小説推理新人賞を受賞。同作を収録したデビュー作『告白』はベストセラーとなり、09年本屋大賞を受賞。12年「望郷、海の星」で第六五回日本推理作家協会賞(短編部門)、16年『ユートピア』で第二九回山本周五郎賞受賞。18年『贖罪』がエドガー賞(ベスト・ペーパーバック・オリジナル部門)にノミネート(「BOOK」データベースより)

クジラアタマの王様 伊坂 幸太郎

★★★★

数々の賞を受賞している人気作家、伊坂幸太郎の現代のSF・ファンタジーのような物語

主人公の岸が務める菓子メーカーは、一つのクレーム電話から生じた状況により窮地に陥ったが、都議会議員・池野内の謝罪によって危機を脱する。その池野内に以前から夢の中で岸に会っている事を打ち明けられる。しかも、夢の中にはあの人気ダンスグループのメンバー・小沢ヒジリもいるらしい。三人が仲間だという胡散臭い夢の話に何か引っかかるものを感じていた岸のもとに、その小沢ヒジリが訪ねてきて…。

この小説は、間にコミックパートが差し込まれるという構成になっており、伊坂幸太郎の新しい試みが見られます。その絵のフワフワした感じと物語の世界観が良く合っていて、よりリアルにこの物語を楽しめる。勇者が活躍するゲームのようなファンタジーの世界はワクワク感もありながら、先の展開への期待と不安が膨らみます。

伊坂幸太郎が書く物語には、読者に寄り添うようなセリフや、人生訓になりそうな言葉が沢山ありますが、この小説は、そういう言葉を直接使わずにコミックパートや、ファンタジーのような世界で比喩的に伝えたいことを表現していると感じられます。

世界の見え方が変わるかも。
冒険心がくすぐられ、明日へ踏み出す一歩が楽になる、そんな物語です。

伊坂幸太郎(イサカコウタロウ)
1971(昭和46)年、千葉県生れ。’95(平成7)年東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。’04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞、’08年『ゴールデンスランバー』で本屋大賞と山本周五郎賞、’14年『マリアビートル』で大学読書人大賞、’17年『AX』で静岡書店大賞(小説部門)、’20(令和2)年『逆ソクラテス』で柴田錬三郎賞を受賞した(「BOOK」データベースより)

金の角持つ子どもたち 藤岡 陽子

★★★★★

もとスポーツ新聞の記者から看護婦へ転身を遂げながらも小説を書き続けた作家が描く、努力と夢の中学受験物語。

二人の子供を持つ主婦・菜月は長男の俊介が突然、難関中学校を受験したいという告白に驚く。勉強に縁のなかった両親にとって息子の中学受験はその必要性をあまり感じられなかったが、俊介の強い意志に心を動かされ、家族全員の協力体制のもと俊介が塾へ通うことを了承した。しかし、中学受験の過酷さは想像を絶するものであった。俊介はなぜ、中学受験を決意したのだろうか。そして、この受験の行方は…。

中学受験と聞くと、親が子供の将来を考えて受験をさせるイメージですが、この物語は小学生6年生の俊介が自ら受験することを決めています。子供が未来を考え勉強するというのですからその熱意に応援してあげたくなりますが、両親からすれば子供の心の移り気を心配したり、家計の事情や祖父母の意見などいろいろ悩ましい。また、俊介自身も成長期に勉強漬けの過酷な日々を送ることに。家族の生活習慣ががらりと変わってしまう程の中学受験を両親、俊介自身またそれを支える塾の講師のそれぞれの視点で彼らの葛藤や成長、感動が描かれています。

果たして子供の頃からそこまで勉強する必要はあるのか
中学受験に挑む彼らの本気と、純粋な知的好奇心、未来を切り開こうと奮闘する人々の姿に勇気づけられる。胸が熱くなるほど眩い瞬間に出会える一冊です。

藤岡陽子(フジオカヨウコ)
1971年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。報知新聞社勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。慈恵看護専門学校卒業。2006年「結い言」が、宮本輝氏選考の北日本文学賞の選奨を受ける。09年『いつまでも白い羽根』でデビュー(「BOOK」データベースより)

青空と逃げる 辻村 深月

★★★★

直木賞、本屋大賞など受賞多数の人気作家・辻村深月が読売新聞で連載していたミステリー小説。

清流、四万十川近くのドライブインで働いている早苗と、川遊びをする小学生の力。母子は大自然の夏の青空の下ひと時の平和な日常を送っていた。ある日、早苗の務めるドライブインに観光客らしくない「かしこまったジャケットを羽織った男」がやって来る。その男は早苗の事を知っていた。男は早苗を冷たい目で見降ろし、彼女の夫の行方を尋ねるのだった…。

何者かに追われる母子の逃避行が早苗と力の目線で描かれています。逃げる心許なさや、見つかった時の恐怖。そんな時々に人の優しさに触れ、救われる二人。母子は逃避行先での多くの出会いにより成長し、また親子の絆も深まっていきますが、終わりの見えない逃避行に不安は募ります。
夫は何故消えてしまったのか?どうして追われることになったのか?この家族はどうなってしまうのか?
謎が解き明かされていくミステリーでありながら、成長する家族の姿を描いた家族小説とも言えます。

有名な観光地を転々とするので、ちょっとした旅行気分も味わえる逃避行。
人の温かさが染みる物語です。

辻村深月(ツジムラミズキ)
1980(昭和55)年、山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業。2004(平成16)年に『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞してデビュー。’11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、’12年『鍵のない夢を見る』で直木賞、’18年『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞(「BOOK」データベースより)

鍵のない夢を見る 辻村 深月

★★★★★

人気作家・辻村深月の直木賞受賞作品。

「不審火だって、不審火」
笙子の実家の近くで放火が疑われる火事が起こった。彼女はふと、昔合コンで知り合った消防士の大林という男を思い出す。彼に好意を持たれ、しつこく誘われていた笙子はある疑いを持つが…。(「石蕗南地区の放火」より)

他者からどう見られているか、自分をどうアピールするべきか。社会では他者との関わり方において、自分自身を他者の視点から見るという観点が必要です。この物語の登場人物は、それがちょっとずれた人たち。「こうすれば相手に好かれるだろう」「本当の自分はこんなもんじゃない」。自意識の強い彼らは自分の中で勝手にストーリーを作りあげ、それに縛られてしまいます。普通なら途中で間違っていることに気づき、軌道修正するのですが…。これは決して他人事ではなく、誰もが陥る日常の中にぽっかりと口をあけている穴かもしれません。ふとした拍子に落ちてしまったら…。

思い込みもほどほどに。ホラー的要素もあるミステリー短編集

辻村深月(ツジムラミズキ)
1980(昭和55)年、山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業。2004(平成16)年に『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞してデビュー。’11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、’12年『鍵のない夢を見る』で直木賞、’18年『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞(「BOOK」データベースより)

シャーロック・ホームズの冒険 コナン・ドイル

★★★★★

世界中で読み継がれているベストセラー小説。シャーロック・ホームズシリーズの五つの短編集のうち最初に発行された作品。

ロンドンにまき起る奇怪な事件の謎を名探偵シャーロック・ホームズが鮮やかに解き明かす。医師であり、友人であるジョン・ワトスンによる事件記録、という形で書かれている作品も多く、意表をつく事件の展開、軽妙なユーモアと友人二人のやりとりが面白いミステリー小説。

目次:ボヘミアの醜聞/赤髪組合/花婿失踪事件/ボスコム谷の惨劇/オレンジの種五つ/唇の捩れた男/青いガーネット/まだらの紐/花嫁失踪事件/椈屋敷

ドラマや、映画、アニメなど世界中で親しまれているシャーロックホームズシリーズ。この短編集にはシリーズの中でも特にメジャーな『まだらの紐』『赤髪組合』や、ホームズを翻弄した女性アイリーンが登場する『ボヘミアの醜聞』などが収録されています。

『シャーロックホームズの冒険』は、発売されると同時に世間を熱狂させ、ホームズ人気に火をつけました。また、ドイルの名を世に知らしめた作品でもあります。19世紀に誕生し、100年以上も経った21世紀の今でも絶大な人気を誇る名作中の名作。眠れなくなるほど夢中になれる英国ミステリーの世界をぜひ。

ドイル,アーサー・コナン(Doyle,Arthur Conan)(ドイル,アーサーコナン)
1859-1930。イギリスのエディンバラ生まれ。ロンドンで医師として開業するが成功せず、以前から手を染めていた小説の執筆に専念、ホームズもので大人気作家となる。また、映画にもなった『失われた世界』をはじめとするSFや、歴史小説など、数多くの作品を残した。実際の殺人事件で容疑者の冤罪を晴らしたこともあり、晩年は心霊学にも熱中した。ナイト爵をもつ(「BOOK」データーベースより)

羆嵐 吉村 昭

★★★★★

太宰治賞や菊池寛賞など数々の賞を受賞している吉村昭の人気作品。実際に北海道で起きた日本史上最悪の熊害、三毛別羆事件をモデルに描かれています。

政府の移民奨励政策によって北海道の開拓地、六線沢 に入植した人々は過酷な環境に耐えながらもようやくその土地に馴染んできていた。大正4年、冬の六線沢のしみいるような寒い夜、村民は軒下に熊の足跡を見つけたが、トウキビを食い荒らしただけの羆の存在に身の危険は感じなかった。彼らは熊が冬ごもりをする習性を知っていたからだ。しかし、数日後にまた羆が現れ…。

日本に住む最大最強動物ヒグマ。この村民のように多くの人は、羆についての一般知識を持っていると信じていますが、それがどんなに危険な事か。ドキュメンタリー番組が放送され、この事件が全国的に広まってからは熊への見方も変わり、人々の心に恐怖心を植え付けました。聞くだけでも恐ろしいこの出来事、小説では羆に襲われた村民の恐怖を体験すると共に自然の残酷さを知ることになるでしょう。ヒグマの頭の良さ、そして何より執着心の強さと凶暴性。史実をもとに肉付けされたリアルな心情描写や情景描写に、より恐怖心を掻き立てられます。

記録文学の第一人者である吉村昭が現場や証言など徹底的に取材して描き上げた作品。
歴史文学としても一度は読んでおきたい読んでおきたい名作です。

吉村昭(ヨシムラアキラ)
1927-2006。東京・日暮里生れ。学習院大学中退。1966(昭和41)年『星への旅』で太宰治賞を受賞。同年発表の『戦艦武蔵』で記録文学に新境地を拓き、同作品や『関東大震災』などにより、’73年菊池寛賞を受賞。以来、現場、証言、史料を周到に取材し、緻密に構成した多彩な記録文学、歴史文学の長編作品を次々に発表した。主な作品に『ふぉん・しいほるとの娘』(吉川英治文学賞)、『冷い夏、熱い夏』(毎日芸術賞)、『破獄』(読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞)、『天狗争乱』(大佛次郎賞)等がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

タイトルとURLをコピーしました