読書ブログ6月7月に読んだ本

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2023年6月・7月に読んだ本をまとめました。
人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。

私の満足度・おススメ度でをつけています。

★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!

★★★★  とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!

★★★   読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!

★★    少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。

     う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。

あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。

逆転美人 藤崎 翔

★★★★

ミステリー史上初の驚きの仕掛け!

story:「私は報道されている通り、美人に該当する人間です。
でもそれが私の人生に不幸を招き続けているのです」飛び抜けた美人であるせいで不幸ばかりの人生を歩むシングルマザーの香織(仮名)。
娘の学校の教師に襲われた事件が報道されたのを機に、手記『逆転美人』を出版したのだが、それは社会を震撼させる大事件の幕開けだったーー。
果たして『逆転美人』の本当の意味とは!? ミステリー史に残る伝説級超絶トリックに驚愕せよ!!(「BOOK」データーベースより)

美人は得ではなく、むしろ損なことの方が多い?この物語はルッキズムの意外な闇が引き起こすミステリー。

この物語は人の運命を狂わせるほどの美女・香織の半生を綴った手記によって事件の全貌が次第に明らかにされていくストーリーですが、そもそもどのような事件が起こったのかさえ最初は謎のまま。手記の中にやがて明かされる事件のヒントが隠されているのだとなんとなくわかるので、ある意味読者への挑戦のような作りになっています。

注意深く読んでいてもやっぱり騙される。
いまだかつてない斬新なミステリー小説です。

藤崎翔(フジサキショウ)
1985年、茨城県生まれ。高校卒業後、6年間お笑い芸人として活動。2014年に初めて書いた長編ミステリ『神様の裏の顔』で第34回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、小説家デビュー(「BOOK」データベースより)

クスノキの番人 東野 圭吾

★★★★★

アジア圏で絶大な人気を誇る作家、東野圭吾の新たなる代表作。
東野作品としては初めて多言語翻訳版が世界同時期刊行された話題作です。

story:恩人の命令は、思いがけないものだった。不当な理由で職場を解雇され、腹いせに罪を犯して逮捕された玲斗。そこへ弁護士が現れ、依頼人に従うなら釈放すると提案があった。心当たりはないが話に乗り、依頼人の待つ場所へ向かうと伯母だという女性が待っていて玲斗に命令する。「あなたにしてもらいたいこと、それはクスノキの番人です」と…。そのクスノキには不思議な言伝えがあった。(「BOOK」データベースより)

東野圭吾と言えばミステリーのイメージですが、実はファンタジーも大人気。海外ではファンタジー作品が一番人気の国もあるのだとか。あまり非現実的にはならず、その中にほんのわずかな心温まる奇跡があります。この物語も絶妙なバランスでその世界を楽しませてくれることでしょう。

人生に投げやりになっている主人公・玲斗の前に突然現れた男と謎の依頼。訳も分からぬまま「クスノキの番人」という仕事をすることに。仕事の意味を何一つ教えてもらえない上に、訳ありそうな人達が深夜に次々とクスノキを訪れる不可解な出来事。一体このクスノキにはどんな秘密が?そして玲斗の運命は?

登場人物の個性と引き込まれるストーリー展開、そして散りばめられた謎。読み始めると没頭してしまうこと間違いなし。優しさあふれる奇跡の物語。

東野圭吾(ヒガシノケイゴ)
1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学工学部卒業。85年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、12年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で第7回中央公論文芸賞、13年『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、14年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。19年に野間出版文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

52ヘルツのクジラたち 町田 そのこ

★★★★★

2021年本屋大賞受賞作品。2024年春に映画公開予定です。

story:52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一頭だけのクジラ。何も届かない、何も届けられない。そのためこの世で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、魂の物語が生まれる。2021年本屋大賞第1位(「BOOK」データベースより)

思わず耳を塞ぎたくなる子供への虐待ニュース、最近特に多いと感じませんか。まだ明るみにでていないものもあるのだと考えると、いたたまれない気持ちになりますね。ニュースでは虐待を受けた子供たちが、その後どういう人生を歩んだかまでは知ることが出来ません。
この『52ヘルツのクジラたち』は、そんなつらい子供時代を経験した女性の半生を描いた物語です。

新たな一歩を踏み出そうとした主人公・貴瑚(きこ)。偶然出会った子供の体に見覚えのある印を見つけた彼女はなんとか救ってあげたいと思うのですが…
恐ろしい虐待の実態や、歪んだ人間関係によりもたらされた不器用な人間関係と生きづらさ。様々な出会いにより見えてくるその人の真実の姿が時に悲しく、時にたくましく映ります。

誰もが不安を抱えている時代。声なき声を上げている人達へ。考えさせられる物語です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ

町田そのこ(マチダソノコ)
1980年生まれ。「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。2017年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

三体 劉 慈欣

★★★★

世界的なSF文学賞であるヒューゴー賞を受賞した中国のSF小説。上中下の三部作で、シリーズは世界で累計2900万部(2019年時点)を売り上げたメガヒット作品。オバマ元大統領やマーク・ザッカーバーグ氏も愛読した話題作です。

story:物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。数十年後。ナノテク素材の研究者・汪森(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体“科学フロンティア”への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象“ゴースト・カウントダウン”が襲う。そして汪森が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?本書に始まる“三体”三部作は、本国版が合計2100万部、英訳版が100万部以上の売上を記録。翻訳書として、またアジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門に輝いた、現代中国最大のヒット作。(「BOOK」データーベースより)

地球の温暖化や戦争、このままいけば人類の、この地球の未来が危ぶまれる。そんな現状に危機感を抱いている人は少なくないず。そして、この歴史の流れは科学技術の進歩をもってしても止めようもないように思われます。打開策があるとすれば、自らの星を滅ぼさんとする地球人以外の、しかも我々よりも優れた科学技術を持つ生命体の介入しかないのではないだろうか。

古典のSFを彷彿とさせる設定で、宇宙への憧憬を呼び覚ます物語に多くの知識人が夢中になり話題になりました。実際に何万光年と遠く離れた異星人と交流する方法がありそうで、少し難しいながらもリアリティがあります。また、現代人を冷笑しているようにも。

もしかして、私達の知らない所でこういったことが既に行われているのではないか?面白いが、先を知るのが怖い、でも気になる。世界中を虜にした一冊です。

※ニュートン力学の三体問題の設定や、多体問題の説明など難しく感じた部分あったので★4にしました。

劉慈欣(リュウジキン)
リウ・ツーシン。1963年、山西省陽泉生まれ。発電所でエンジニアとして働くかたわら、SF短篇を執筆。『三体』が、2006年から中国のSF雑誌“科幻世界”に連載され、2008年に単行本として刊行されると、人気が爆発。中国のみならず世界的にも評価され、2014年にはケン・リュウ訳の英訳版が刊行された。2015年、翻訳書として、またアジア人作家として初めてSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞(「BOOK」データーベースより)

とんこつQ&A 今村 夏子

★★★★★

芥川賞作家今村夏子の2022年新刊。TV番組「アメトーーク!」読書芸人のコーナーで紹介されました。

story:大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店とんこつで働き始めた「わたし」。「いらっしゃいませ」を言えるようになり、居場所を見つけたはずだった。あの女が新たに雇われるまではー(「とんこつQ&A」)。姉の同級生には、とんでもない嘘つき少年がいた。父いわく、そういう奴はそのうち消えていなくなってしまうらしいが…(「嘘の道」)。人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇を収録(「BOOK」データベースより)

4つの物語が入った短編集。いずれも、ちょっと変わった個性の持ち主が登場するお話。
世の中には様々な人がいますが、中には私達には想像も及ばない、まったく異なる感覚で生きている人も。ものの考え方や、行動があまりにも理解しがたいとちょっと怖くなることってありますよね。そういった得体の知れない恐ろしさが醸し出されている4編です。

主人公たちの描写が四者四様にいびつで、彼女たちはとても危うげ。驚かされつつ共感できる部分や、ほっこりする場面も。しかし、油断は禁物。
実際に起きたら恐ろしいと思われる話でも良い話のように表現されていたり、主人公が人間の本質に気付かなかったりと、ハッピーエンドを疑うような展開に気持ち悪さが残ります。そういう見方もあるのかと納得するのか、ホラーだと感じるのかは読者次第でしょう。

クセになる今村夏子ワールド全開の一冊です。

今村夏子(イマムラナツコ)
1980年、広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞しデビュー。「こちらあみ子」と改題し、同作と新作中編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に第24回三島由紀夫賞を受賞。2017年『あひる』で第5回河合隼雄物語賞、『星の子』で第39回野間文芸新人賞、2019年「むらさきのスカートの女」で第161回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

鈍色幻視行 恩 田陸

★★★★

史上初の直木賞・本屋大賞W受賞作家恩田陸の新作ミステリー。15年の連載期間を経て書籍化されました。

story:撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜~』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜~』を読み返した梢は、ある違和感を覚えてー。(「BOOK」データベースより)

人が突然消えてしまう「神隠し」、幽霊が出るいわくつきの物件…伝承から都市伝説まで、巷でまことしやかにささやかれる不思議な話は昔から数多くあり、半信半疑ながらも興味を持って聞いた事は一度や二度ではないはず。中には信憑性があるものや事実を裏付けるものもあり、より好奇心を掻き立てられますね。この物語もそんな社会の片隅に潜んでいる奇怪な噂話にまつわるミステリー。実際に体験した人々の証言によって徐々にその事件の異様さ、気味の悪さが増していきます。

また、ミステリーと並行していわくつきの作品にまつわる人々の人間模様もしっかりと描かれており、より臨場感を味わえます。人生や家族、愛、読書など、複数のテーマが隠されており、全ての問いがフィナーレ―に向かって収拾していく展開はまさしく旅をしているような盛り上がりと余韻を感じられ、読後の少しの疲労と寂しさまでも体験できる。

人生について深く考えさせられる言葉が沢山。
出港した時とは違う自分に。そんな旅が出来る一冊です。

西加奈子(ニシカナコ)
1977年、テヘラン生まれ。2004年、『あおい』でデビュー。07年、『通天閣』で織田作之助賞を、13年、『ふくわらい』で河合隼雄物語賞を、15年、『サラバ!』で直木賞をそれぞれ受賞(「BOOK」データーベースより)

正欲 朝井 リョウ

★★★★★

人気直木賞作家・朝井リョウ、話題のベストセラー小説。今秋映画公開予定。

story:自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよなー。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。第34回柴田錬三郎賞受賞!(「BOOK」データベースより)

グローバル化が進む中で日本は国際社会から多様性を求められてきました。着々と法整備が進み、国民にも浸透してきつつある多様化社会ですが、果たしてそれは真の意味でマイノリティの人が求めている社会なのでしょうか。この『正欲』はマイノリティとマジョリティ双方から見た多様化社会の姿が描かれています。

生きづらさにあえぐ魂の叫びと、衝撃的なニュースからこの物語は始まります。他人と価値観や認識が大きく異なり、全く理解してもらえない悩みを持つ人々。生きている実感や喜びを感じ、分かち合える仲間すらもいない。想像を絶する人生を知り、私達は何を考え、どう行動するべきなのか。「他者と共存しながら自分らしく生きること」の難しさを考えさせられます。

傑作か、問題作か?見せかけの多様化社会に一石を投じる一冊です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『正欲』朝井リョウ

朝井リョウ(アサイリョウ)
岐阜県生まれ。小説家。『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。『何者』で第148回直木賞、『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞、『正欲』で第34回柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

踏切の幽霊 高野 和明

★★★★★

2023年直木賞候補作。高野和明11年ぶりの新作ミステリー。

story:マスコミには、決して書けないことがあるー都会の片隅にある踏切で撮影された、一枚の心霊写真。同じ踏切では、列車の非常停止が相次いでいた。雑誌記者の松田は、読者からの投稿をもとに心霊ネタの取材に乗り出すが、やがて彼の調査は幽霊事件にまつわる思わぬ真実に辿り着く。1994年冬、東京・下北沢で起こった怪異の全貌を描き、読む者に慄くような感動をもたらす幽霊小説の決定版!(「BOOK」データーベースより)

この小説の舞台は今から約30年前の東京。バブル崩壊後とはいえ、まだサラリーマンがバリバリ働くことが普通の時代。記者である主人公や、彼を取り巻く人々の労働観や人生観は競争社会における懐かしい仕事風景を思い起こさせます。

ミステリーですので、話の中心はあくまで事件の謎ですが、面白いのはそこに幽霊話が絡んでくること。恐怖を煽る描写はとても雰囲気があり、それがどんどん実態を伴ってくる過程にヒヤッとする寒さを味わえます。

また、足で情報を稼ぐ取材ならではの証拠の積み重ねが丁寧に描かれ、事件の真相に迫る緊迫感や高揚感がリアル。人の体温を感じられます。

重厚なストーリーですが、とても読みやすい。ミステリーとゴースト組み合わせが新しいミステリーです。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『踏切の幽霊』高野和明

高野和明(タカノカズアキ)
1964年生まれ。映画監督・岡本喜八氏に師事し、映画・テレビの撮影スタッフを経て脚本家、小説家に。2001年『13階段』で江戸川乱歩賞を、2011年の『ジェノサイド』で山田風太郎賞と日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

世界でいちばん透きとおった物語 杉井 光

★★★★

「王様のブランチ」で紹介され、SNSでも人気急上昇。10万部突破の話題作。

story:大御所ミステリ作家の宮内彰吾が死去した。宮内は妻帯者ながら多くの女性と交際し、そのうちの一人と子供までつくっていた。それが僕だ。「親父が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を死ぬ間際に書いていたらしい。何か知らないか」宮内の長男からの連絡をきっかけに始まった遺稿探し。編集者の霧子さんの助言をもとに調べるのだがー。予測不能の結末が待つ、衝撃の物語。(「BOOK」データーベースより)

古今東西、ありとあらゆる形式のミステリーが世に出尽くした中で、今なお新しい驚きをもたらしてくれる。読書家たちの間で話題をかっさらったこの体験型ミステリー小説は思いもかけない仕掛けで読む者に驚きと感動をもたらしてくれます。

物語は主人公が謎に包まれた父親の遺稿の行方を追うストーリーですが、宝探しの感覚と似通ったワクワク感があり、探求心がくすぐられます。父の素顔や恋の行方などほっこりしながらも、謎は意外な方向へ。最後は主人公と共に透きとおった物語を目撃するはず。

人が死ぬような殺伐とした雰囲気はなく、日常の謎を楽しめる。残酷な要素が含まれるミステリーが苦手な方にもおすすめです。

杉井光(スギイヒカル)
電撃小説大賞の銀賞を受賞し、2006(平成18)年電撃文庫『火目の巫女』でデビュー。その後電撃文庫「神様のメモ帳」シリーズがコミカライズ、アニメ化。ライト文芸レーベルや一般文芸誌で活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

木挽町のあだ討ち 永井 紗耶子

★★★★★

元新聞記者の経歴を持つ永井紗耶子の時代小説。山本周五郎賞受賞作品。

story:疑う隙なんぞありはしない、あれは立派な仇討ちでしたよ。芝居町の語り草となった大事件、その真相はーー。ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙は多くの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者という侍が仇討ちの顚末を知りたいと、芝居小屋を訪れるがーー。現代人の心を揺さぶり勇気づける令和の革命的傑作誕生!(出版社より)

江戸の三大娯楽の一つ、歌舞伎。当時、身分の隔てなく大流行し、江戸の町の至る所で芝居小屋がありました。この物語は、江戸の風俗や芝居小屋に携わる人々の人情の機微を描いた物語。登場人物の「一人語り」で進行する物語は読みやすく、その時代の空気を感じられます。彼らの歩んできた道や生き様と共に、仇討ちの真相が炙り出されていく過程はミステリーの面白さも味わえます。

武士にも町人にも、どんな身分であれ、一人一人にある語るべき物語。紆余曲折を経て、芝居小屋に集った彼らを救ったものとは?現代にも通じる言葉も沢山。

普段時代小説を読まない人でも読みやすく古典芸能の面白さも知ることが出来る。時代小説の入門としてもおすすめです。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『木挽町のあだ討ち』永井紗耶子

永井紗耶子(ナガイサヤコ)
1977年、神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒。新聞記者を経て、フリーランスライターとなり、新聞、雑誌などで幅広く活躍。2010年、「絡繰り心中」で小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。2020年に刊行した『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』は、細谷正充賞、本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞を受賞した。2022年、『女人入眼』が第一六七回直木賞の候補作に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

骨灰 冲方 丁

★★★★★

SF、歴史小説、アニメの脚本など幅広いジャンルで活躍する冲方丁の初のホラー小説。

story:大手デベロッパーに勤める松永光弘は、自社の現場に関する『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た穴』というツイートの真偽を確かめるため、地下へ調査に向かう。異常な乾燥と嫌な臭いー人が骨まで灰になる臭いを感じながら進み、たどり着いたのは、巨大な穴が掘られた不気味な祭祀場だった。穴の底に繋がれた謎の男を発見し解放するが、それをきっかけに忌まわしい「骨灰」の恐怖が彼の日常を侵食し始める。(「BOOK」データベースより)

地中深く掘られた暗い穴、異常なほどに乾燥した空気、骨を焼いたような臭い。冒頭からいきなり恐怖の真っただ中に放り込まれ、ページをめくるのにも躊躇してしまうかもしれません。
高層ビル基礎工事のために掘られた地下何階もの深い穴にたった一人で入っていく主人公。一歩一歩進むごとに目にする異様な景色と淀んだ空気の描写がリアルで心拍数はどんどん上がっていき、喉はカラカラに。主人公の悪手にどうしてそっちへ行ってしまうのかと悲鳴をあげたくなります。

祭祀場や目に見えない気配、恐怖心を煽られる現象が次から次へと起き、思わずその物語から逃げたくなりますが、それを上回るスリルと先の読めない展開の面白さがあり、読む手が止まらなくなるでしょう。

ミステリーの要素もあり、SF味も感じられる。令和を代表するホラーになること間違いなし。ぜひ挑戦してみてください。

冲方丁(ウブカタトウ)
1977年岐阜県生まれ。96年、『黒い季節』で第1回スニーカー大賞金賞を受賞してデビュー。2003年、『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞受賞。09年刊行の『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、2011大学読書人大賞、第7回北東文芸賞、第4回舟橋聖一文学賞を受賞。12年、『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

ハヤブサ消防団 池井戸 潤

★★★★★

『半沢直樹』『下町ロケット』などメディア化された企業小説も多数。人気作家・池井戸潤の田園ミステリー。2023年夏にドラマ化されます。

story:連続放火事件に隠されたー真実。東京での暮らしに見切りをつけ、亡き父の故郷であるハヤブサ地区に移り住んだミステリ作家の三馬太郎。地元の人の誘いで居酒屋を訪れた太郎は、消防団に勧誘される。迷った末に入団を決意した太郎だったが、やがてのどかな集落でひそかに進行していた事件の存在を知るー。(「BOOK」データーベースより)

誰もが顔見知りと言っても過言ではない小さな田舎町で起こる連続放火事件。その集落に移り住んだミステリー作家が村人たちと交流を重ねながら、事件の謎を紐解いていくミステリー。

美しい自然と美味しそうな田舎料理、そして気さくな仲間たち。ストレスフリーの田舎暮らしを体験しているかのような癒されるエピソードが沢山あり、消防団の活動や役割も知ることが出来て面白い。実際の出来事なども豊富に盛り込まれているそうで、リアリティのある物語になっています。

温かい人々の交流に重点を置きながらも、過疎化が進む田舎の深刻な問題も。
幅広い世代で楽しめるミステリーです。

池井戸潤(イケイドジュン)
1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ

★★★★★

アメリカ文学の古典とてしても有名な小説。多数のベストセラーを世に送り出したヘミングウェイですが、その中でも『老人と海』はノーベル文学賞を受賞する決め手となった作品と言われています。

story:八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだがー。自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。(「BOOK」データベースより)

有名な作品だけに、あらすじは知っていると言う人も多いでしょう。主人公は、肉体は衰え、粗末な暮らしをしている年老いた漁師。その見た目に反し、とてつもないバイタリティで巨大カジキと死闘を繰り広げる姿は心打たれると共に多くの学びがあり、今なお多くの人に読み継がれています。

この物語は、シンプルな文体で事実を積み上げていくように描かれているのが特徴。その為、老人の一挙一動に彼の生き様が見え隠れし、生きている実感やほとばしるエネルギーを感じられます。
海に一生をささげた男の姿を通して人生とは何かを問いかけます。
また、自然の厳しさや生き物を慈しむ心、人とのつながりの大切さも。

「だが、人間てやつ、負けるようにはできちゃいない」「叩きつぶされることはあっても、まけやせん」
老い、孤独、人生と様々なテーマが盛り込まれおり、読む度に感じ方は異なるでしょう。繰り返し読んで欲しい傑作です。

ヘミングウェイ,アーネスト(Hemingway,Ernest)
1899-1961。シカゴ近郊生れ。1918年第1次大戦に赤十字要因として参加、負傷する。’21年より’28年までパリに住み、『われらの時代』『日はまた昇る』『男だけの世界』などを刊行。その後『武器よさらば』、短編「キリマンジャロの雪」などを発表。スペイン内戦、第2次大戦にも従軍記者として参加。’52年『老人と海』を発表、ピューリッツァ賞を受賞。’54年、ノーベル文学賞を受賞。’61年、猟銃で自裁(「BOOK」データベースより)

風の万里 黎明の空 十二国記 小野 不由美

★★★★★

ホラー、ミステリー、ファンタジーと様々なジャンルで名作を世に送り出している著者・小野不由美の代表作。この『十二国記』シリーズで第5回吉川英治文庫賞を受賞。『風の万里 黎明の空』は『十二国記』シリーズのエピソード4に当たります。

上巻story:人は、自分の悲しみのために涙する。陽子は、慶国の玉座に就きながらも役割を果たせず、女王ゆえ信頼を得られぬ己に苦悩していた。祥瓊は、芳国国王である父が簒奪者に殺され、平穏な暮らしを失くし哭いていた。そして鈴は、蓬莱から辿り着いた才国で、苦行を強いられ泣いていた。それぞれの苦難を負う少女たちは、葛藤と嫉妬と羨望を抱きながらも幸福を信じて歩き出すのだがー。(「BOOK」データベースより)

下巻story:王は人々の希望。だから会いに行く。景王陽子は街に下り、重税や苦役に喘ぐ民の暮らしを目の当たりにして、不甲斐なさに苦悶する。祥瓊は弑逆された父の非道を知って恥じ、自分と同じ年頃で王となった少女に会いに行く。鈴もまた、華軒に轢き殺された友の仇討ちを誓うー王が苦難から救ってくれると信じ、慶を目指すのだが、邂逅を果たす少女たちに安寧は訪れるのか。運命は如何に。(「BOOK」データベースより)

慶国の王になった陽子。この国を知るために、また王としての責務を知るために民の暮らしに溶け込みますが…。
陽子、祥瓊、鈴、それぞれの成長と国政の物語。多感な年頃の少女達。同じくらいの年齢の女性がいれば、どうしても比べてしまうのは仕方のない事。
傷つきやすさであったり、他人を思いやる余裕のなさであったり、視野の狭さであったり。上巻は少女たちの心情が丁寧に描かれ、若さゆえの行動にハラハラさせられます。

下巻はそんな彼女たちがようやく真実に辿り着き、運命に立ち向かいます。悩み失敗し、時には他人とぶつかりながらも、前に向かって進む。強くなっていく彼女たちの姿がまぶしい。矛盾だらけの国政に対して彼女達やその国の人々が取った行動とは…。

心に刺さるリアルファンタジー。学生さんを始め、多くの人の人に読んで欲しい物語です。

小野不由美(オノフユミ)
12月24日、大分県中津市生まれ。京都大学推理小説研究会に所属し、小説の作法を学ぶ。1988年作家デビュー。「悪霊」シリーズで人気を得る。13年『残穢』が第26回山本周五郎賞、20年「十二国記」シリーズが第5回吉川英治文庫賞を受賞(「BOOK」データーベースより)

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