読書ブログ2022年6月・7月に読んだ本

伊与原 新
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2022年6月・7月に読んだ本をまとめました。
基本、人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。

今回から私の満足度、おススメ度でをつけています。

★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!

★★★★  とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!

★★★   読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!

★★    少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。

     う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。

あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。

姑の遺品整理は、迷惑です 垣谷 美雨

★★★★

映画化された『老後の資金がありません』など主婦目線の小説でおなじみの垣谷美雨の話題の新刊。

亡くなった姑の遺品整理をすることになった望登子。姑の子供は旦那一人、旦那は会社。手伝ってくれる人もなく一人で姑の部屋を訪れた彼女を待っていたのは、これでもかという程のモノの山。永遠に終わらないのではないかと思われる片付けにうんざりする登美子に様々な苦難が待ち構える…。

高齢化社会になって、より切実になって来た遺品整理の問題。
目まぐるしく変わる現代社会では、時間や金銭的に余裕のある人はそう多くないのが現状です。日常の忙しさに加えてこれ以上用事や出費を増やしたくないですよね。そんな状況の中で降って湧いたように訪れるのがこの「遺品整理」という難題。あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、実際に経験すると「本当に地獄」らしい。

この小説は、遺品整理をすることになった主婦の目線で、何が大変なのか、どんな問題に直面するのか、意外な落とし穴から金銭的なことまで。知っておきたい情報が沢山
何の準備もせずに迎えると大変なことになってしまうこの問題を物語を通して体験できる。役に立つ一冊です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「姑の遺品整理は迷惑です」垣谷美雨

むらさきのスカートの女 今村 夏子

★★★★★

17言語23か国・地域で翻訳出版されている芥川賞受賞作品。著者の今村夏子はこの他、太宰治賞や三島由紀夫賞など数々の文学賞を受賞しています。

近所に「むらさきのスカートの女」と呼ばれている異様な存在感を放つ女性がいるらしい。彼女はいつもむらさき色のスカートを穿いていて、肩まで伸びた黒髪はツヤがなくぱさぱさしている。近所の子供たちの間では、じゃんけんで負けた人が「むらさきのスカートの女」にタッチをしなければいけないという遊びまで流行っているー。

そんな「むらさきのスカートの女」と友達になりたいと思っている黄色いカーディガンの女」がこの第二の主人公であり、物語の語り手です。「黄色いカーディガンの女」から見た「むらさきのスカートの女」の滑稽さや、「黄色いカーディガンの女」の語りの違和感は読んでいて不気味に思えてくるほど。しかし、この物語の面白さはそこにこそあります。

ミステリーやホラーとしても楽しめる先の見えない展開と幾つもの謎。
クセになる気持ち悪さで、ページをめくる手が止まらない。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「むらさきのスカートの女」今村夏子

傑作はまだ 瀬尾 まいこ

★★★★★

瀬尾まいこの本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』の対となる家族の物語

小説家の加賀野は独身の一人暮らし。特に何の不自由も感じず、引きこもり生活を満喫していた。そんなある日、一度の過ちでできた息子、智がやって来る。父親としての責任は養育費を渡すことで果たしていた加賀野は、初めて会う息子に戸惑う…。

養育費を渡すだけで父親としての責務を果たしているつもりだなんて酷い話ですよね。しかし、日本の父親は子供と触れ合う時間が少ないのも事実です。
仕事が忙しいため子供との時間が持てない、もしくは子供との関り方が分からない、義務感ばかりが先に立ち父親を楽しめない。そんな父親という立場に戸惑いがある人も多いのではないでしょうか。
母親の過干渉を描いた小説はたくさんありますが、この物語は子供への無関心、没交渉な父親の姿に重点を置いています。

重いテーマですが、暗くならず軽快な父子のやりとりにほっこり
父親の役割について考えさせられる一冊です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「傑作はまだ」瀬尾まいこ

爆弾 呉 勝浩

★★★★★

江戸川乱歩賞、吉川英治文学新人賞など数々の賞を受賞している呉勝浩のミステリー小説。第167回直木賞候補作品。

刑事の等々力功は、酒に酔った勢いで人を殴ってしまった自称スズキタゴサクという人物の取り調べをしていたが、何を聞いても酒のせいで覚えていないというスズキにあきれ果てる。さらに、自分には霊感があり、事件を予知できると言い出す始末。しかし、本当に彼が予知した場所と時間に爆発が起きる。スズキは自分は犯人ではなく、あくまで霊感だと言い張るが…。

最初からエンディングまでノンストップで繰り広げられるサスペンスはすぐにでも映像化されそうなくらいエンターテイメント性溢れるストーリー
スズキタゴサクなる爆弾テロの容疑者と刑事たちの手に汗握る心理戦がこの小説の見どころです。スズキに翻弄される刑事たちの社会での在り方や人生に対しての考え方、それぞれの葛藤や人間模様がこの物語をさらに深く、面白くしています。

一気読み必至。現代日本の闇をつく、手に汗握るミステリー小説。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「爆弾」呉勝浩

破戒 島崎 藤村

★★★★★

夏目漱石が「明治の小説としては後世に伝ふべき名篇也」と評した不朽の名作自然主義のさきがけとして位置づけられます。
当時、この作品は画期的で大きな反響を呼びましたが、批判の声も多くありました。差別用語を他の言葉に置き換えて、昭和十四年に改訂された後、現在は初版本の表記に戻っています。
今夏、60年ぶりに映画化されました。

明治後期、部落差別がまだ根強く残っていた時代。被差別部落出身の小学校教師・瀬川丑松は、その出自を知られるようなことがあってはならないとの父からの戒めを固く守り、神経をすり減らしながら生きてきた。しかし、父親が亡くなり故郷へ帰ったことをきっかけに丑松の出自が周りで徐々にささやかれるようになり…。

島崎藤村は小説家に転向する前は詩人でした。彼の詩人らしい豊かな自然の描写がこの物語にも表れていてとても美しい。また、その美しさと人間の陰鬱さとの表現の対比によって一層丑松の孤独絶望が表れていました。丑松の烈しい苦悩と、不合理な社会が描かれています。

この小説のテーマは現在でも他の差別問題に置き換えて読むこともできる。
近代日本文学の頂点をなす傑作にふさわしい重厚な作品ですが、とても読みやすい。

チュベローズで待ってる 加藤 シゲアキ

★★★★★

アイドルと小説家という二つの顔を持つ加藤シゲアキのエンターテイメント小説。

最後の望みの綱の会社からも不採用通知を突きつけられた日、光太は路上でテキーラのにおいが沸き立つ嘔吐物を路上にぶちまけていた。病気がちの母と幼い妹とを抱えながら、来春からは学生でも社会人でもなくなってしまう。そんな彼の前に現れた雫という男にホストにならないかと持ち掛けられる光太だが…。

物語の前半は光太の恋や仕事などが中心に描かれていますが、後半になっていくに従ってミステリー味を帯びてくる展開に目が離せなくなります。
また、「お客様を楽しませるというところで、ホストと重なる部分があった」と著者が言う通り、ジャニーズとどこか重ね合わせて読めてしまうこのホストクラブの世界観はとてもリアルで、裏の世界を覗き見る面白さもあります。

これを読んだら、「ジャニーズの子が小説を書いている」なんてとても思えない。
小説家・加藤シゲアキを認めざるを得ない物語です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「チュベローズで待ってる」加藤シゲアキ

熱源 川越 宗一

★★★★★

樺太アイヌの戦いと冒険を描いた第162回直木賞受賞作

北海道のさらに北に浮かぶ島、樺太(サハリン)。人を拒むような極寒の地で、時代に翻弄されながら、それでも生きていくための「熱」を追い求める人々がいた。アイヌのヤヨマネクフとサハリンに流刑になったポーランド人二人の生涯、そして激動の時代を描いた圧巻の歴史小説。

この物語の中心は故郷を奪われた人々の群像劇ですが、アイヌの風俗や習慣など民俗学的視点においても面白い。アイヌは人間が逆らうことの出来ない自然の事象や動植物などにも神(カムイ)の存在を見いだし築いてきました。「熊送り」という儀礼や入墨の習慣など、驚くべき伝統文化が数多く描かれています。

日本、ロシア、そして2つの国に翻弄された樺太を舞台に、明治、大正、昭和と時代を超えた壮大なスケールで描かれた物語です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「熱源」川越宗一

フクロウ准教授の午睡 伊与原 新

★★★★

横溝正史ミステリ大賞や新田次郎文学賞を受賞した伊与原新のミステリー小説。
東京大学大学院理学系研究科の博士課程修了し、ミステリー作家になった経歴を生かした作品。単行本『梟のシエスタ』を文庫化にあたり改題しています。

大学教員の吉川は学部長の宗像教授に呼び出され、生徒から「アカデミックハラスメントを受けている」と訴えられている事を知ります。身に覚えのない疑いをかけられて戸惑う吉川はハラスメント相談員の袋井准教授に助けを求めますが、彼は非協力的で重い腰を上げる気がありません。それどころか、袋井は吉川が抱えている秘密を知り、大学を辞めてくれたらこっちの手間も省けると言うのですがー。

タイトルのフクロウは勿論、この袋井准教授のこと。三白眼や「ほう」と言う口癖、昼はいつも眠たそうにしている夜行性人間などまるでフクロウそのもの。しかも、始終アルコールの匂いまでさせているという有様。個性的ですが、好感が持てるとは言い難いキャラクターの袋井が読んでいて不気味で仕方がありません。反対に、ごく普通の吉川にはエールを送りたくなります。

様々な学内の事件に振り回される吉川は、この袋井という正体不明の男存在に疑問を持ち、彼の正体を探ろうとします。学長選挙有力教授のスキャンダル、全ての事件の裏には袋井の存在が見え隠れします。果たして彼は何者なのか。陰謀渦巻く異色の大学ミステリー。

生のみ生のままで 綿矢りさ

★★★★★

歴代最年少の芥川賞受賞作家。綿矢りさの女性同士の鮮烈なる恋愛小説。

学生時代から好きだった彼・颯と付き合い、幸せをかみしめる逢衣。彼女は颯から旅行先で彩夏と知り合い、地元に帰ってからも親しい友人として交流を重ねます。ある時、別れ話を聞き、心配する逢衣に彩夏は突然キスをしてきてー。

大好きな彼との旅の最中に出会った無愛想な同性の女性。この始まりから恋に発展するというストーリーは一昔前には考えられないことでしたが、今読むと違和感はありません。
逢衣と彩夏の恋も、どうなるの?と期待と不安を込めて読み進めてしまいます。
彼女たちの物語は同性の恋愛小説によくあるファンタジーのような恋愛ではなく、普通の男女の恋愛小説のように描かれています。
同性であるがゆえにぶつかる試練や悩み、周りの反応、そして二人の気持ちなど多くの障害と共に性の描写も多彩で、リアルでいやらしくないエロティシズムを感じます。

著者の耽美的表現でもって美しい恋愛を描いたこの物語は、まさに現代のラブストーリー。リアルな愛の物語です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「生のみ生のままで」綿矢りさ

おいしいごはんが食べられますように 高瀬 隼子

★★★★★

第167回芥川賞受賞作品。。

仕事ができる押尾さんは、彼女の先輩の芦川さんに対して良い印象を持っていません。弱々しい雰囲気のある芦川さんは仕事が出来ない上に、体の弱さを理由に定時で退社するからです。結果、誰かが残りの仕事を引き継ぐことに。いや、一番気に入らないのは、そんな芦川さんに社内の誰もが体調を心配し、気を使い、甘めの採点をしているところ。そんな押尾さんがちょっと気になる先輩、二谷さんも芦川さんの仕事の出来なさにいら立ちますが、反面そこがかわいいく、色気を感じてしまいますー。

押尾さんのように「どうしてあの子だけえこひいきされるんだろう」「自分はなんて損な役回りなのだろう」と、思った経験は誰にでもあるはず。また、何気ない言動や行動が、相手に罪悪感を与えたり虚しさを感じさせたりすることも…。本人に悪気はないのかもしれないけれど、受け取り方は相手によって様々です。

この物語は、ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描かれています

仕事と恋と食事と、この複雑に絡み合った三人の物語はここから予想外の展開に。最後に笑うのは誰なのか。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「おいしいごはんが食べられますように」高瀬隼子
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