姑の遺品整理は、迷惑です 垣谷 美雨

垣谷美雨
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~「どうしてこんなに溜め込むの!?」誰もが直面する“人生の後始末”をユーモラスに描く「実家じまい」応援小説~

こんにちはくまりすです。今回は映画化された『老後の資金がありません』など主婦目線の小説でおなじみの垣谷美雨姑の遺品整理は、迷惑です」をご紹介いたします。

story:

郊外の団地で一人暮らしをしていた姑が、突然亡くなった。嫁の望登子は業者に頼むと高くつくからと自力で遺品整理を始める。だが、「安物買いの銭失い」の姑を甘く見ていた。至る所にぎっしりと詰め込まれた物、物、物。あまりの多さに愕然とし、夫を駆り出すもまるで役に立たない。無駄を溜め込む癖を恨めしく思う望登子だが、徐々に姑の知らなかった顔が見えてきて…。(「BOOK」データベースより)

共感の声多数の遺品整理

今やほとんどの家庭が「核家族」の時代。家族のあり方が変化すると共に嫁姑問題という言葉もあまり聞かなくなりました。それぞれの世帯の価値観を尊重し、程よい距離で良い関係を築くことが、円満の秘訣ですね。

そんな普通の家庭に暮らす主婦の多くが経験した、もしくは経験するであろう問題が、この「遺品整理」。片付けるだけでしょ?いえいえ、事はそんなに簡単ではないのです。
この小説は経験者が口を揃えて「本当に地獄だった」と言うこの問題に直面したある主婦の物語。

亡くなった姑の遺品整理をすることになった望登子。姑の子供は旦那一人、旦那は会社。手伝ってくれる人もなく一人で姑の部屋を訪れたのですが…。

お義母さん、どうしてここまで物を溜め込んできたんですか?

思わず愚痴が出てきてしまう。
彼女を待っていたのは沢山の衣類に、紙類に置物、賞味期限切れの調味料に…出るわ出るわ、本当に一人暮らしなのかと疑う程のモノの山。おまけに姑の住んでいた部屋はエレベーターがない賃貸マンションの4階。新聞の束一つ捨てるのにも重労働。早く片付けないと毎月の家賃代も痛い。業者に頼むと莫大な費用がかかる…。

捨てるのが大変というだけじゃないんですよ。もったいないという気持ちまで、否応無く引き継がなきゃならないんですよ。

舅の初任給から定年までの給料明細や形見…確かにそういったものは捨てにくい
経験しなければ分からない望登子の言葉にに思わずうなずいてしまいます。
しかし、そんなのはまだ序の口。隣の住人が姑から預かったものがあると持ってきたものは、想像もしなかったものだった…。

母親と姑

望登子は度々、ケンカ口調で天井に向かって文句を言う。
仕事や家事に加えて、1時間以上の距離にあるマンションへ出向いての遺品整理。生前から良い印象を持っていなかった姑の遺品整理。そんな理不尽な忙しさにイライラが最高潮に。

ああ、やっぱり実家の母は気遣いのできる人だった。こんな混乱を子供に残さなかったんだもの。

望登子の母親が亡くなった時は「断捨離」を済ませてくれていたおかげで、彼女は遺品整理をする必要もなかった。死後、周りの人に迷惑をかけないように配慮してくれていた母親とどうしても比べてしまいます。姑への憤りと対照的に実の母親に感謝する望登子。
しかし、なぜか込み上げてくる寂しさ

母の気配は既にどこにもなかった。
ねえ、お母さん、お母さんってどんな人だっけ?

一方で、遺品一つ一つに、近隣住民からの感謝の言葉に、姑の生き様や意外な一面が見えてきて…。

感想

遺品整理というのは、やったことがない人が想像する何倍、いや何十倍も骨が折れる。
とは解説に書かれている言葉。

私の祖母も押し入れいっぱいにものを溜め込んでいました。同居していたので一部屋だけの整理でしたが、それでもドラえもんのポケットのように、狭い押し入れの中から無限にモノが出てきたのを覚えています。
その時は家族で行いましたが、それを一人で、しかも生活空間の全てとなると…。

この物語は経験者からすると「全くその通り」と共感の声が上がるくらいリアルなんだそうです。
突然の知らせに夫には「仕事で疲れてるんだ」と伝家の宝刀を抜く。そして釈然としないまま一人でこの作業をやることになる。でも、夫は決まって、手は出さないけど口だけは出す。「えっ、それ捨てるの?勿体ないんじゃない?誰かに声かけたら?貰ってくれる人いるかもよ?バザーに出したら?勿体ないからとりあえず家に置いとこうよ。」
あぁ…想像に容易い。

これはhow to本というわけはありませんが、物語を通して「遺品整理」のシミュレーションが出来るのも良いですね。

結婚式にお葬式、受験や就職。人生の節目ごとに様々なイベントが訪れますが、その多くは家族や知人を通じて経験したり、経験者の話を聞いたりして自然と事前準備を行います。
しかし、「遺品整理」については話題に上ることは余りなく、多くの人が初体験だという著者の主張は確かに的を射ている。これからの高齢化社会において、ひとつの行事と位置付けられるようになっていくのではないでしょうか。

著者:垣谷美雨(カキヤミウ)
1959年、兵庫県生まれ。明治大学文学部卒業。2005年、「竜巻ガール」で第27回小説推理新人賞を受賞し、デビュー。少子高齢化と介護、結婚難、熟熱離婚、住宅問題など身近な題材を取り上げた作品で支持を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

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