SF小説10選(国内篇)

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SFとは何か?

正体不明の感染症が流行し、人類が未曾有の危機に陥った2020年。まるでコロナパンデミックを予見していたかのような小松左京のSF小説『復活の日』が話題になりました。感染症が風邪のウィルスであることや、人が姿を消した街の風景など似通っている部分も多く、予言の書として注目されると共に、ありうるかもしれないその結末に不安を募らせた人も多いのではないでしょうか。

SFという言葉が日本であまり知られていなかった頃、レイ・ブラッドベリやアーサー・クラークなどの海外のSF作家の作品に導かれて多くの作家や漫画家がこの未知の文学ジャンルに足を踏み入れました。
彼らはマイナーであるSFを盛り上げようと、1970年の大阪万博を機に「国際SFシンポジウム」を開催。世界各国からSF作家が来日し、アーサー・C・クラークと小松左京の対談も実現しました。万博での科学の展示やアポロの月面着陸など、高度経済成長と共に科学全般に対する世間の関心が高まり、やがてSFブームが到来します。

小松左京の『日本沈没』がベストセラーになり、星新一が数々の名作を世に生み出し、ショートショートを一般に広めました。「タイムリープ」は筒井康隆が『時をかける少女』で生み出した造語だとも言われています。彼らは日本独自のSFを作った「日本SF作家第一世代」であり、SF御三家と称されています。科学技術の進歩に伴う社会への期待と警鐘を反映した作品は多くの今を予言しており、その見識の広さに人気が再燃しています。

また、『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』『ドラえもん』『機動戦士ガンダム』『AKIRA』などのアニメ・漫画や映画『猿の惑星』『スター・ウォーズ』『エイリアン』など多数の伝説的作品もSF黄金期と呼ばれるこの時代に生まれました。

次第にSFはジャンルの垣根を越え、多くの物語に含まれるようになりました。そのため現在はSFの定義が曖昧になりつつあります。「SFファンタジー」「SFホラー」と表現され、SFの文字は省略されることも。しかし、「タイムトラベル」「パラレルワールド」「AI」などSF的な要素は様々な文学に取り入れられ、親しまれています。

今回は、そんなエンターテイメント性溢れる人気の日本のSF小説をご紹介いたします。
様々な空想科学の物語がありながらも一貫しているテーマは「人間」。
人情溢れる物語の魅力を兼ね備えた日本のSF小説で想像力を鍛えてみては?

蒲生邸事件 宮部 みゆき

~永遠に消えることのない、過ぎ去った時の痕跡~

ミステリーから時代小説、ファンタジー小説など多彩なジャンルで活躍する宮部みゆきの日本SF大賞受賞作品。上下巻。

stoy:予備校受験のために上京した受験生・孝史は二月二十六日未明に宿泊中のホテルで火災に見舞われます。間一髪で孝史を助けた男は、時間旅行の能力を使って難を逃れたと告白。その上、辿り着いた先は昭和十一年二月二十六日未明の東京永田町だと言うのです。あと三十分もしないうちに二・二六事件が始まるー。しかし、孝史は男の話を今一つ信じられなくて…。

雪降りしきる帝都・東京。目の前にはレトロな洋館。シチュエーションは素敵ですが、いかんせんタイムスリップした時代と場所が悪かった。
SFでは王道のタイムトラベルと近代日本史上、最大のクーデター事件を交えたこの物語は好奇心そそられるスリル満点の作品。上下巻のボリュームを感じさせない巧みなストーリー展開と人情味あふれる人物描写で一気に物語に引き込まれます。

主人公・孝史の視点で描かれる当時の街の風景や人々の暮らし、彼が感じる「時代錯誤」感と彼自身に感じる主体性のなさはリアリティがあり、まるで読者自身もその時代を体感しているような感覚に。いつの間にか孝史に共感し、彼の人間的成長ぶりが微笑ましくもなります。歴史が身近に感じられ、読了後には生まれてもいない時代にノスタルジーを覚えてしまうかも。
密室の謎もあり、読み始めたら止まらない徹夜本です。

タイムトラベル【ミステリー・二.二六事件・歴史】

宮部みゆき(ミヤベミユキ)
1960年生まれ、東京・深川育ち。法律事務所勤務を経て、87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。以降、「龍は眠る」で日本推理作家協会賞(92年)、「本所深川ふしぎ草紙」で吉川英治文学新人賞(同年)、「火車」で山本周五郎賞(93年)、「蒲生邸事件」で日本SF大賞(97年)、「理由」で直木賞(99年)、「模倣犯」で毎日出版文化賞特別賞(2001年)、「名もなき毒」で吉川英治文学賞(07年)を受賞(「BOOK」データベースより)

空の中 有川 浩

~「フェイク・は・瞬・が・喜ぶ・を・する」胸躍らせる、未曾有のスペクタクルエンタテインメント~

『図書館戦争』や『阪急電車』などメディア化多数の人気作家・有川ひろ(有川浩)のSF長編。『塩の街』『海の底』と合わせて自衛隊三部作と言われています。

stoy:200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残った自衛隊パイロットは調査のために高空へ飛んだ。高度2万、事故に共通するその空域で彼らが見つけた秘密とは?一方地上では、子供たちが海辺で不思議な生物を拾う。大人と子供が見つけた2つの秘密が出会うとき、日本に、人類に降りかかる前代未聞の奇妙な危機とはー。(「BOOK」データーベースより)

高度2万メートルへの挑戦。日本の航空業界の威信をかけたスワローテイルの飛行試験中に起きた爆発事故。そして同じ空域で起きた2度目の爆発事故。何かを予感させる始まりにワクワクしますね。この物語は、未確認生物に遭遇した人類の危機を描いたSF小説。もし、未知の領域に謎の生き物が生息していたら。その生物が高い知能を持っていたら。そして人類に敵対心を抱いたら。思わぬ事態にそれぞれ交差する思惑。やがて悲劇の幕が上がります。

また、それと並行して恋愛ストーリーも。好感と共感が持てる男女四人の若者らしい純朴さと初々しさにドキドキ。
運命に翻弄される少年、復讐に駆られる少女、愛する人のために戦う人達、そして彼らを取り巻く人々。切なく、あたたかい人間模様とスリル満点の未確認生物のとの駆け引きにページをめくる手が止まらなくなるでしょう。

ワクワク、ドキドキしたい方にお勧めの一冊です。

未確認生物航空自衛隊・高知県・恋愛】

有川浩(アリカワヒロ)
高知県生まれ。第10回電撃ゲーム小説大賞『塩の街wish on my precious』で2004年デビュー。『図書館戦争』シリーズで大ブレイク(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

ペンギン・ハイウェイ 森見 登美彦

~ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。だから、将来はきっとえらい人間になるだろう~

数々のベストセラー作品を持つ森見登美彦の日本SF大賞受賞作品。児童書もあり、2018年にアニメ映画化されています。

stoy:ぼくの街の空き地に突如ペンギンが現れた。様々な疑問を解明するためぼくたちは街を探検し「毎日の発見」をノートに記録し研究を重ねる。しかし、ペンギンの研究は驚きの連続で謎は増えていくばかり。ぼくが日々体験する不思議な出来事とたくさんの発見がぼくを作っていくのだー。

もし子供の頃に戻れるのなら、もっと勉強して様々な経験を積むのに。世の大人たちのそんなため息交じりの後悔を我が子にはして欲しくないと願うのですが、なかなか子供には届きにくいものです。
この物語の主人公・アオヤマ君はそんな大人の未練を知っているかのような賢い小学四年生。世界は広く、可能性は無限大。しかし、それは日々の積み重ねの上に成り立っている。だからボクは毎日ノートをたくさん書く習慣を持っているのである。

何と言っても、彼のませたモノローグや台詞が面白い。論理的でちょっと偉そうな言葉遣いだが、子供らしい素直で無邪気な話の内容にクスッとしてしまいます。
ペンギンの謎を研究する「ペンギン・ハイウェイ」の他、ガキ大将スズキ君の「スズキ君帝国」や街を探検する「プロジェクト・アマゾン」そしてなぜか不思議な気持ちになる「お姉さん」とおっぱい。不思議に満ちたひと夏の冒険は、子供の頃に持っていた好奇心や探求心を思い出させてくれます。

大人になるのが楽しみで仕方がないアオヤマ君に訪れた試練。応援しているつもりが、はっと気付かされる。クスッと笑えて、エネルギーを貰える物語です。

SFファンタジー【ペンギン・小学生・冒険】

森見登美彦(モリミトミヒコ)
1979年、奈良県生まれ。京都大学農学部卒、同大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞、10年『ペンギン・ハイウェイ』で日本SF大賞を受賞(「BOOK」データベースより)

ハーモニー 伊藤 計劃

~優しさに殺される!!慈母によるファシズム・ユートピアの臨界点~

アメリカ合衆国のSFの賞であるフィリップ・K・ディック賞特別賞の他、受賞星雲賞(日本長編部門)・日本SF大賞受賞などを受賞した長編SF小説。コミック、アニメ化されています。

stoy:21世紀後半、“大災禍”と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択したーそれから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、ただひとり死んだはずの少女の影を見るー(「BOOK」データーベースより)

科学医療の進歩により、日本国民全員が寿命を全うできるようになった未来。人々は心身共に徹底的に管理された社会で平和を享受していました。お互いが慈しみ、支え合い、ハーモニーを奏でる。そんなユートピアを心から憎んでいた友人のミァハと感化される主人公の少女・トァンの物語。トァンの目に映る健康至上主義の社会がとにかく不気味で息苦しい。
彼らがたどり着く究極の未来。そして、トァンが見たのものとは…。

驚いたのは文中にHTMLタグのようなものが挿入されていること。様々な感情や事柄がまるで機械化されたかのように感じられ、この世界に潜んでいる恐怖が浮かび上がってきます。
同時自殺事件にまつわる謎のミステリーの面白さもあり、将来起こりうるかも知れない恐ろしい世界観に心を掴まされ、読む手が止まらなくなるでしょう。

デストピア・ユートピア【未来・少女・医療】

伊藤計劃(イトウケイカク)
1974年10月生まれ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』で作家デビュー。「ベストSF2007」「ゼロ年代SFベスト」第1位に輝いた。2008年、オりジナル長篇第2作となる『ハーモニー』を刊行。第30回日本SF大賞のほか、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門を受賞。2009年3月没。享年34。2011年、英訳版『ハーモニー』でフィリップ・K・ディック賞特別賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

新世界より 貴志 祐介

~子どもたちは思考の自由を奪われ、家畜のように管理されていた~

『新世界より』は、『青の炎』『黒い家』『悪の教典』など数々ベストセラー作品で有名な著者・貴志祐介が30年間の構想を経て世に送り出した傑作SF小説。2012年にアニメ化されています。上中下巻。

stoy:1000年後の日本。念動力(サイコキネシス)の能力を持った人間らが生きる世界。
この物語の主人公、渡辺早季が暮らす集落は、のどかな田園風景が広がる周囲わずか五十キロメートルほどの小さな町。人々は平和に穏やかに暮らしていましたが、決して町の外側に出てはいけないという掟がありました。ある日、早季と同級生は好奇心からその外側に足を踏み出しますが…。

1000年後の未来は呪力を使う人間や異形の化け物が存在する超自然的な空想世界。早季の手記という形で展開されるこの物語は、私達がこれから歩むかもしれない人類の未来を描いています。
徹底的に管理された社会、病的に美しいユートピア。不自然な世界で生きる人々が何の疑問も持たずに生を享受している姿に読者は違和感を抱くはず。なぜ、このような世界になったのか、1000年の間に何が起こったのか、恐ろしい真相が徐々に明かされていきます。

手に汗握る超能力バトルに「種」の存続を懸けた戦争、息つく暇もない怒涛の展開に圧倒されるでしょう。アニメを観ているような楽しさもありながら、人間社会への警告も。
圧倒的な世界観に浸れる物語です。

SFファンタジー【異世界・超能力・戦闘・グロテスク・ネズミ・虫】

貴志祐介(キシユウスケ)
1959年大阪府生まれ。京都大学経済学部卒。生命保険会社に勤務後、作家に。96年「ISOLA」が日本ホラー小説大賞長編賞佳作となり、『十三番目の人格ISOLA』と改題して角川ホラー文庫より刊行される。翌年、『黒い家』で第4回日本ホラー小説大賞を受賞、同書は130万部を超えるベストセラーとなる。2005年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞(「BOOK」データベースより)

旅のラゴス 筒井 康隆

~人間はただその一生のうち、自分の最も適していてもっともやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればそれでいい筈だ~

小松左京・星新一と並んで「SF御三家」とも称される筒井康隆のベストセラーSF小説。
この作品は「スタジオジブリのアニメ化」というデマが発端で認知度が上がり大ヒットしたという経緯があるそうです。今では筒井康隆の一番の人気作品に。

stoy:一瞬の内に異空間を超え別の場所へ移動する「転移」相手の心が読める「読心」。様々な超自然的能力を獲得した人間たちが暮らす星がありました。旅人ラゴスはその星で様々な人と出会いを重ねます。多くの知識を有するラゴス。彼の目に未発達な文明はどのように映るのでしょうか。示唆に富んだ人生の物語。

冒険小説のようなストーリーも面白く、飄々とした主人公も好感が持てます。
読みやすい文章で、ファンが多いのも納得の一冊。人生観が変わるかも。

タイムスリップ【旅・知識・冒険・未来】

筒井康隆(ツツイヤスタカ)
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。’60年、弟3人とSF同人誌“NULL”を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が“宝石”に転載される。’65年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。’81年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、’87年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、’89(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、’92年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。’96年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。’97年、パゾリーニ賞受賞。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。’02年紫綬褒章受章。’10年、菊池寛賞受賞。’17年、『モナドの領域』で毎日芸術賞を受賞(「BOOK」データベースより)

きまぐれロボット 星 新一

~「そんなこと、心配したこともないわ。そこまでの知恵はない生き物よ」幅広い年代が楽しめる傑作ショートショート集

星新一は「日本SF御三家」の一人。ショートショートを一般に広め、「ショートショートの神様」とも呼ばれています。星新一の大伯父は文豪・森鴎外。

stoy:おなかがすいたら料理をつくり、あとかたづけに、へやのそうじ、退屈すれば話し相手に。なんでもできるロボットを連れて離れ島の別荘に出かけたお金持ちのエヌ氏。だがロボットはしだいにおかしな行動を…。博士の不思議な発明、発見が様様な騒動を巻き起こす。傑作ショートショート集。(「BOOK」データーベースより)

生涯にわたって1000以上の作品を世に送り出してきた星新一。実は今、人気が再燃しているそうです。独特の世界観と読みやすさ。そして何より、あっと驚くオチが面白い。また、50年近く前の作品にも拘らず、スマートホンやネット通販などまるで今の世界を予言しているような話も多く、全く古さを感じません。

この小説はどちらかというと子ども向けの作品で、ショートショートに童話を加えたもの。AIが日常にある今を予見したかのようなストーリーが36作品も。過激な内容はなく、やさしい文章で子供から大人まで楽しめる作品になっています。
もう少し上の世代向けであれば、ベストセラーの『ボッコちゃん』、『ようこそ地球さん』などもおすすめ。ユーモア溢れる作品から、人類への警鐘ともとれるストーリーまで楽しめます。

子供の読書入門や普段本を読まない人、また隙間時間にもおすすめ。
楽しい読書時間をお約束できる一冊。

ロボット【ショートショート・ブラックユーモア】

星新一(ホシシンイチ)
1926年東京生まれ。東京大学農学部卒。57年日本初のSF同人誌「宇宙塵」の創刊に参加。68年『妄想銀行』で第21回日本推理作家協会賞受賞。ショートショートの第一人者として1001以上の作品を発表した。その他、時代小説、少年小説など多方面で独創性を発揮。著書多数。97年永眠(「BOOK」データベースより)

ボトルネック 米澤 穂信

~「…何でもなくなれば、いいんじゃないかな」もう一つの世界で知った真実~

幅広い世代に人気のミステリー作家・米澤穂信が学生時代より温めていた青春SF小説。

story:亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した…はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。(「BOOK」データベースより)

どうしてこんな家庭に生まれたのだろう。なぜ誰も自分の事をわかってくれないのだろう。周りの人によってもたらされる不幸や理不尽な出来事に押しつぶされそうになる時、自身の運命を呪うこともあるかもしれません。しかし、果たしてそれは環境だけが原因なのでしょうか。この物語は「もし自分の人生を別の誰かが生きていたら?」そんな奇妙な世界を体験するミステリー。

自分が存在しない世界に迷い込んでも妙に冷めている主人公とその世界にだけ存在する姉。彼らのやり取りや会話の中には生きるために必要な知恵とヒントが沢山。元の世界に帰る方法を模索している内に浮かび上がる謎と事件も目が離せません。人生に悩んでいる人に読んで欲しい。現実の厳しさと想像力の大切さを教えてくれる物語です。

パラレルワールド【金沢・家族・青春・ミステリー】

米澤穂信(ヨネザワホノブ)
1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で第五回角川学園小説大賞(ヤングミステリー&ホラー部門)奨励賞を受賞してデビュー。『氷菓』をはじめとする“古典部”シリーズはアニメ化、漫画化、実写映画化され、ベストセラーに。2011年『折れた竜骨』で第六四回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。2014年『満願』で第二七回山本周五郎賞を受賞。2021年『黒牢城』で第一二回山田風太郎賞を受賞、さらに2022年同作で第一六六回直木賞、第二二回本格ミステリ大賞を受賞。『満願』と2015年刊行の『王とサーカス』はそれぞれ三つの年間ミステリランキングで一位に輝き、史上初の二年連続三冠を達成した。さらに『黒牢城』は史上初めて四つの年間ミステリランキングを制覇した(「BOOK」データベースより)

彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ) 森博嗣

~人工生命体と人間。両者の違いは何か?~

理系ミステリーを数多く発表している人気作家・森博嗣のSFミステリー小説。
登場人物などから著者の別の小説『百年シリーズ』の続編とも捉えられますが、既刊シリーズを読まずとも楽しめる内容になっています。

stoy:人類は人工細胞を用いて人間に限りなく近い生命体「ウォーカロン」を作ることに成功しました。この物語は「ウォーカロン」と人間が当たり前に共存するようになった未来を描いています。
研究者ハギリはある日「先生に危険が及ぶ可能性がある」と警告する女性・ウグイの訪問を受けます。驚くハギリですが、それを肯定する出来事が彼の身に起こり…。

細胞を用いて病気を治したり新たに作り出したり。科学の進歩は目覚ましく、人間の寿命はどんどん延び、今や人生100年時代とも言われるようになりました。このは物語は科学技術の成果を享受した人類の未来を予見しているのようにも思われます。「ウォーカロン」が作られるようになった経緯や人間性の変化など、謎を紐解いていくに従って説得力が増してくるところが面白く、怖い。

また、ハギリの命を狙っているのは何者か、どうしてハギリを狙うのかなど様々な謎も散りばめられています。軽快なセリフはユーモアたっぷりで、ミステリーとしても楽しめる物語。
科学が発達した未来はユートピアかそれともデストピアなのか。

AI【未来・ミステリー・Wシリーズ

森博嗣(モリヒロシ)
作家、工学博士。1957年、愛知県生まれ。1996年に『すべてがFになる』(講談社)で第一回メフィスト賞を受賞しデビュー。以後、続々と作品を発表し、人気を博している。(「BOOK」データベースより)

Ank : a mirroring ape 佐藤 究

~「これは感染爆発ではない」超絶エンタメ長編~

直木賞作家・佐藤究の大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞受賞作品。
stoy:2026年10月、京都で突然暴動が発生したとの報告がもたらされました。多数の死傷者を出した暴動の原因は不明。SNSを通じて世界中に拡散されたものの中には「AZ」つまり、ほとんどゾンビ(Almost Zombie)という言葉も。アンクという名の1頭のチンパンジーの逃走から端を発した暴動は、恐ろしい災厄の幕が開けだったのです。

街にいきなりゾンビが現れ、次々と人を襲っていく。まるで映画のような出来事が現実に、しかも日本で起きてしまう。例えば何かのウィルスや化学物質、未確認生物などすぐに思いつくような原因は見当たらない。人々はなす術もななくただ恐怖に怯える。こんな地獄絵図が展開される物語は、パニック映画のような面白さがある一方で、長く生物界の頂点に君臨している人類の脆弱さも描かれています。

災厄が起きる前のエピソードを挟みながら、暴動が起きた原因が少しずつ明かされていく展開は謎解きのような面白さがあり、並行して進んでいく惨劇は人類滅亡へのシナリオを予感させスリル満点。
人間がゾンビになる原因を科学的に証明できるのかという疑問も手伝って、ページをめくる手が止まらなくなるでしょう。

私達がこうして生きていられるのも生命進化のとてつもない奇跡なのかもしれません。
人類の起源の神秘を感じることが出来る物語です。

ゾンビ【進化・チンパンジー・ミステリー】

佐藤究(サトウキワム)
1977年、福岡県生まれ。2004年、佐藤憲胤名義の『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、同作でデビュー。’16年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。’18年、『Ank:a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞、および第39回吉川英治文学新人賞を受賞。’21年、『テスカトリポカ』で第34回山本周五郎賞、第165回直木三十五賞受賞(「BOOK」データベースより)
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