読書ブログ2023年5月に読んだ本

読書日記月別
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2023年5月に読んだ本をまとめました。
人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。

今回から私の満足度、おススメ度でをつけています。

★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!

★★★★  とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!

★★★   読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!

★★    少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。

     う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。

あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。

うたかたモザイク 一穂 ミチ

★★★★

BLから直木賞候補の作品まで。人気作家・一穂ミチの短編集。

story:病める時も健やかなる時もーあなたの気持ちにぴったり寄り添ってくれる13の物語。甘くてスパイシーで苦くてしょっぱい、味わい深いあなただけの人生がここにある。(「BOOK」データーベースより)

恋愛、SF、サスペンス、BL、など多彩なジャンルの物語が詰め込まれたアンソロジー。各話ごとに作品のカラーやテイストが異なり、エンタメ性溢れる一冊となっています。ヒューマンドラマだと思っていたら最後にゾッとするようなサスペンスになったり、SFでありながら恋愛小説だったり、思いもかけない展開を楽しめる話が多数。

少し切ない現実、後ろめたさや罪悪感、日常の中に隠れている小さな幸せ。儚く消えやすいものを掬い取った13の物語はセンチメンタルな気持ちと同時に明日への活力も湧いてきます。

大人の女性へ送る人生の機微が詰まった作品です。

一穂ミチ(イチホミチ)
2007年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。『イエスかノーか半分か』などの人気シリーズを手がける。『スモールワールズ』で第43回吉川英治文学新人賞を受賞し、2022年本屋大賞第3位となる。『光のとこにいてね』が第168回直木賞候補、2023年本屋大賞にノミネート。『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』など著作多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

おちくぼ姫 田辺 聖子

★★★★

古典から恋愛小説、エッセイなど幅広い分野で活躍した田辺聖子の古典翻訳作品。

story:貴族のお姫さまではあっても、意地悪い継母に育てられ、召使い同然、粗末な身なりで一日中縫い物をさせられ、床が一段低く落ちくぼんだ部屋にひとりぼっちで暮らしている姫君ーといえば“シンデレラ姫”を思い浮かべることでしょう。姫君と青年貴公子のラブ・ストーリーでもある「おちくぼ姫」は千年も昔に書かれた王朝版「シンデレラ物語」です。若い読者のために現代語訳された、とびきり面白い物語を楽しんで下さい。(「BOOK」データベースより)

継母にいじめられ不幸のどん底にいたお姫様が眉目秀麗な王子様に見初められ形勢逆転。痛快なストーリは昔も今も変わらず人気です。また、身分の差を越えた純愛は多くの女性が夢見るところでしょう。
『落窪物語』はそれまでの上流階級の貴族が主人公の物語ではなく、中流階級の召使が活躍したり、少し下品で滑稽なシーンがあったりと昔の小説にしてちょっと珍しい物語。当時の中流・下層の人たちの暮らしぶりや庶民の喜びや悲しみが生き生きと描かれていて身近に感じられます。

『落窪物語』の原典の中から面白いところを抜き出して書かれたこの『おちくぼ姫』はスピード感のあるストーリーと胸がすくような展開で、一気に読めてしまう。難解な古典を平易な文章でとてもわかりやすく訳されているので、苦手な人でも楽しく読めます。古典の入門におすすめ。

田辺聖子(タナベセイコ)
1928年、大阪生まれ。樟蔭女専国文科卒。63年、『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)』で芥川賞を受賞、88年、『花衣ぬぐやまつわる…わが愛の杉田久女』で女流文学賞、93年、『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞、94年、菊池寛賞を受賞。98年、『道頓堀の雨に別れて以来なり』で泉鏡花文学賞と読売文学賞を受賞。2008年、文化勲章受章。大阪弁で軽妙に綴る現代小説の他に、古典文学の紹介、評伝小説など、著書多数。19年6月死去(「BOOK」データベースより)

日本の黒い霧 松本 清張

★★★

戦後日本を代表する作家・松本清張によるノンフィクション作品。

story:戦後日本で起きた怪事件の数々。その背後には、当時日本を占領していた米国・GHQが陰謀の限りを尽くし暗躍する姿があった。しかし、占領下の日本人には「知る権利」もなく真相を知る術もなかった。抜群の情報収集力と推理力で隠蔽された真相に迫った昭和史に残る名作。名推理として知られる「下山国鉄総裁謀殺論」など。(「BOOK」データーベースより)

目次:下山国鉄総裁謀殺論/「もく星」号遭難事件/二大疑獄事件/白鳥事件/ラストヴォロフ事件/革命を売る男・伊藤律(「BOOK」データーベースより)

戦後占領統治下の日本で起きた重大事件には不可解な部分が数多くありました。松本清張はそれらに関する資料を小説の題材とするよりもノンフィクションでそのまま書く方がリアルに読者に伝わると考え、知り得た情報をそのまま並べた上で、隠された真実の推理を展開。GHQの関与をほのめかす論証は当時の世情もあり、圧倒的な支持を得てベストセラーになりました。当時はまだノンフィクションが一般的に読まれる時代ではなく、同ジャンル隆盛のもととなった作品の一つとされています。また、「黒い霧」という言葉が流行し、不可解な事件や疑惑を形容する言葉となって定着したそうです。

これらの題材をフィクションとして描かれた『小説帝銀事件』や『風の息』などの小説もあり、合わせて読むのもおすすめです。

松本清張(マツモトセイチョウ)
1909(明治42)年12月、福岡県企救郡板櫃村(現・北九州市)に生れる。53(昭和28)年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。56年、それまで勤めていた朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。63年「日本の黒い霧」などの業績により第5回日本ジャーナリスト会議賞受賞。67年第1回吉川英治文学賞受賞。70年第18回菊池寛、90年朝日賞受賞。92(平成4)年8月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

成瀬は天下を取りにいく 宮島 未奈

★★★★★

第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞、宮島未奈のデビュー作。

story:中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない! 話題沸騰、圧巻のデビュー作。(出版社より)

最初から最後までこんな朗らかな気持ちで読める小説はめったにない。ストーリに面白さを持たせるための悪意ある第三者や、足を引っ張る人が一人も登場しない。一冊丸ごと成瀬の個性が光る面白さと、そんな彼女の魅力を読者に伝えようとする成瀬推しの友人談のよう。思わず突っ込みたくなるような展開、掛け合いのようなテンポの良い会話と滑稽なやりとり、漫才を見ているような笑いと楽しさを味わえる物語だと感じました。

周りの目を気にしない行動や、武士のような威厳を感じる話し方。成瀬は人とはちょっと違う独特の感性の持ち主のようですが、なんとなく面白い人として興味を惹かれてしまう魅力があります。気が付けば目で追っている。そんなカリスマ性を持った少女・成瀬の爽やかな青春小説。

読めばあなたも成瀬のファンに。
新しい事に挑戦してみたくなったり、ポジティブな気持ちになれる物語です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈

宮島未奈(ミヤジマミナ)
1983年静岡県富士市生まれ。京都大学文学部卒。2018年「二位の君」で第196回コバルト短編小説新人賞を受賞(宮島ムー名義)。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。同作を含む本書がデビュー作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

くもをさがす 西 加奈子

★★★★★

人気の直木賞作家・西加奈子初のノンフィクション。アメトーーク!「本屋で読書芸人」を始め多くのメディアでも取り上げられた話題の作品。

story:2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、乳がん発覚から治療を終えるまでの約8 ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品。
カナダでの闘病中に抱いた病、治療への恐怖と絶望、家族や友人たちへの溢れる思いと、時折訪れる幸福と歓喜の瞬間ーー。
切なく、時に可笑しい、「あなた」に向けて綴られた、誰もが心を揺さぶられる傑作です。(「BOOK」データベースより)

この『くもをさがす』は人気の直木賞作家・西加奈子がカナダへの語学留学中に罹患した乳がんの闘病記を始め、バンクーバでの暮らしと交流、ジェンダーなどについて書かれたノンフィクション。著者の壮絶な体験と心の変化が日常を通して描かれています。

生の気持ちを豊かな言葉で綴った日記が治治療の進行状態と並行して記されている他、心に寄り添う文章自分を救うような思考や言葉を引用した文章が掲載されており、西さんの心の浮き沈みや心理的な変化がリアルに伝わってくる。

とは言え、このノンフィクションはつらい苦しい闘病記というわけではなく、前向きに日々を乗り越える自然体の西さんの姿や、関西弁で訳される気さくなカナダ人とのやり取り、ハプニングも沢山。ユーモアに富んだ描写や人を生かす言葉に笑ったり泣いたり。
「こんなに自分の体を愛した8カ月はなかった」この本には西さんが抱きしめた様々な感情が詰め込まれていました。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『くもをさがす』西加奈子
西加奈子(ニシカナコ)
1977年、テヘラン生まれ。2004年、『あおい』でデビュー。07年、『通天閣』で織田作之助賞を、13年、『ふくわらい』で河合隼雄物語賞を、15年、『サラバ!』で直木賞をそれぞれ受賞(「BOOK」データーベースより)

名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件 白井 智之

★★★★

アンモラルにしてロジカルな推理。「鬼畜系特殊設定パズラー」の称号を持つ白井智之のミステリー小説。 2023年このミステリーがすごい!」2位の作品。

story:病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウン。調査に赴いたまま戻らない助手を捜しに教団へ乗り込んだ探偵・大塒は、次々と不審な死に遭遇する。だが、「密室」殺人でさえ、奇蹟を信じる人々には、何ら不思議な出来事ではない。探偵は論理を武器に、カルトの妄信に立ち向かう。「現実」を生きる探偵と、「奇蹟」を生きる信者。真実の神は、どちらに微笑むか?(「BOOK」データーベースより)

米国史上最多の死者を出した有名なカルト宗教の事件をもとに描いたミステリー。
属する集団や社会、暮らしによって異なる常識。我々の常識で考えると不可能な現象でも、奇跡を信じる人々には当たり前の出来事に。
この物語の主人公である探偵・大塒はある宗教団体が暮らすジャングルの奥地で殺人事件に巻き込まれます。外界から隔離されたジャングルでの不可解な死。大塒は推理を巡らせますが、神の力を信じる信者たちにとって人の死はまた別の意味で捉えられるもの。まずは彼らに殺人の事実を認識させなければ話になりません。果たして奇跡を信じる者にそれは可能なのかー。考え抜かれたトリックと予想を何度も裏切る展開は驚きの連続です。

カルト集団の異様さと共にどこか気持ち悪さも感じさせる。「怖いもの見たさ」の好奇心をくすぐられるミステリー。クローズドサークルが好きな方にも。

白井智之(シライトモユキ)
1990年千葉県印西市生まれ。東北大学法学部卒業。第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補作『人間の顔は食べづらい』で、2014年にデビュー。15年に刊行した『東京結合人間』が第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補、16年に刊行した『おやすみ人面瘡』が第17回本格ミステリ大賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

ミシンと金魚 永井 みみ

★★★★★

第45回すばる文学賞受賞作。著者・永井みみがケアマネージャーとして働きながら書き上げた作品。

story:認知症を患うカケイは、「みっちゃん」たちから介護を受けて暮らしてきた。ある時、病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と、みっちゃんの一人から尋ねられ、カケイは来し方を語り始める。
父から殴られ続け、カケイを産んですぐに死んだ母。お女郎だった継母からは毎日毎日薪で殴られた。兄の勧めで所帯を持つも、息子の健一郎が生まれてすぐに亭主は蒸発。カケイと健一郎、亭主の連れ子だったみのるは置き去りに。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が、だんだん膨らみだす。
そして、ある夜明け。カケイは便所で女の赤ん坊を産み落とす。その子、みっちゃんと過ごす日々は、しあわせそのものだった。それなのにーー。
暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」。(出版社より)

認知症の老人・カケイさんの視点で描かれた物語。
言葉がすらすらと出てこず、たどたどしくなったり、記憶が途中ですり替わったりと加齢に依る症状に難儀する一方で、思考は饒舌なカケイさん。見かけはかわいいおばあちゃんでも、心の中では辛辣に毒づいているところが面白くリアリティがあります。認知症老人に対する接し方が人によって落差があるからこそ、人間の尊厳を傷つけず丁寧に対応してくれるヘルパーさんに感動を覚え、想像でしかなかった高齢者の気持ちが手に取るようによくわかります。

どんな人間でも、ふり返れば幾多の思い出があり、波乱万丈の人生だったと思えるのではないでしょうか。
カケイさんの寂寥感から来る記憶の反芻に人生の過酷さ無常さを感じますが、そこには必ず人の温もりがあることを教えられる物語です。

永井みみ(ナガイミミ)
1965年神奈川生まれ。ケアマネージャーとして働きながら執筆した『ミシンと金魚』で第四五回すばる文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

闇祓 辻村 深月

★★★★★

人気作家、辻村深月初の本格長編ホラー・ミステリー小説。

story:「うちのクラスの転校生は何かがおかしいー」クラスになじめない転校生・要に、親切に接する委員長・澪。しかし、そんな彼女に要は不審な態度で迫る。唐突に「今日、家に行っていい?」と尋ねたり、家の周りに出没したり…。ヤバい行動を繰り返す要に恐怖を覚えた澪は憧れの先輩・神原に助けを求めるがー。身近にある名前を持たない悪意が増殖し、迫ってくる。一気読みエンタテインメント!(「BOOK」データーベースより)

あなたの周りにちょっと苦手だなと思う人いませんか?一緒にいると調子が狂ったり、雰囲気が悪くなったり…この物語は、たったひとつの出会いから日常が一変し、恐怖のどん底に突き落とされた人々の背筋も凍るお話。
長編小説ではありますが、各章主人公が異なり、最終章でつながる連作短編集のような構成になっています。

「本当に怖いのは幽霊ではなく人間」とはよく言いますね。話の通じない人程やっかいなものはありません。もしかしたらその違和感は、隠された怨念のようなものや呪詛の言葉を無意識に感じ取っているせいかも。よくあるシチュエーションにどこかで会ったことあるような人達。共感できる物語だけに恐怖もひときわ。もしかしてあの人も…

読みやすさと、スリリングな展開で一気読み必至のミステリーです。

辻村深月(ツジムラミズキ)
1980年2月29日生まれ。千葉大学教育学部卒業。2004年『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で直木三十五賞を受賞。18年には『かがみの孤城』で本屋大賞第1位に(「BOOK」データーベースより)

レペゼン母 宇野 碧

★★★★★

梅農家のお母さん×ラップ×放蕩息子。小説現代長編新人賞受賞作品。

story:和歌山県の山間の町に住む深見明子。穏やかに暮らす明子の唯一の気がかりは、女手一つで育て上げた息子の雄大のこと。二度の離婚に借金まみれ、あげく妻を置いて家を飛び出すダメ息子に。いったい、私の何がいけなかったのか。そんな時、偶然にも雄大がラップバトルの大会に出場することを知った明子。「きっとこれが、人生最後のチャンスだ」明子はマイクを握り立ち上がるー!読むと母親に会いたくなること間違いなし!笑えて泣けてグッとくる、前代未聞のデビュー作!(「BOOK」データーベースより)

「親の心子知らず」親の気持ちはなかなか届きにくいもの。
この物語で描かれているのは、すれ違う母・明子と息子の姿。彼らの心情がラップで表現されている所も多々あり、どれもパンチが利いていて面白い。腹立たしい事が起こっても明子の気っ風の良さにスカッとします。

面白いのはシングルマザー明子視点の物語であり、息子は立派な成人男性というところ。息子の雄大は結婚しており、世間一般的には当然自立しているはずの年齢。にも拘らず、未だに反抗期の放蕩息子というから困ったものですね。明子がどこで子育てを間違えたのかと肩を落としながらも心のどこかで信じている姿は母親の愛を感じます。

クライマックスの親子ラップ対決は強烈な本音のぶつけ合い。心に刺さる想いの応酬で、身につまされる言葉も。
笑って泣ける。心に沁みる一冊です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『レペゼン母』宇野碧

宇野碧(ウノアオイ)
1983年神戸市出身。旅、本、食を愛する。2022年『レペゼン母』で小説現代長編新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

ヨモツイクサ 知念 実希人

★★★★

医師と作家2つの顔を持つ知念実希人のバイオ・ホラーミステリー。

story:北海道旭川に《黄泉の森》と呼ばれ、アイヌの人々が怖れてきた禁域があった。
その禁域を大手ホテル会社が開発しようとするのだが、作業員が行方不明になってしまう。
現場には《何か》に蹂躙された痕跡だけが残されてた。そして、作業員は死ぬ前に神秘的な蒼い光を見たという。
地元の道央大病院に勤める外科医・佐原茜の実家は黄泉の森のそばにあり、7年前に家族が忽然と消える神隠し事件に遭っていて、今も家族を捜していた。この2つの事件は繋がっているのか。もしかして、ヨモツイクサの仕業なのか……。
本屋大賞ノミネート『ムゲンのi』『硝子の塔の殺人』を超える衝撃
医療ミステリーのトップランナーが初めて挑むバイオ・ホラー!(「BOOK」データーベースより)

神域に人が介入することにより、とんでもない惨劇の幕が上がる。これはもう、お決まりの展開であり、私達日本人が大好きなホラーストーリーでもありますね。日本神話になぞらえたミステリーや極限のサバイバル、そして忍び寄ってくる恐怖。エンターテイメントの面白いところがギュッと詰め込まれており、映画を観ているようなドキドキ感とスリルを味わえる物語です。

リアルで緊迫感のある医療シーンや、説得力のある生物学は医師である著者ならでは。グロテスクな描写も恐ろしさを際立たせています。生き残りをかけたパニックホラーの側面もあり、息をつく暇もない目まぐるしい展開にハラハラしながらも面白く読めますが、油断していると突然の恐怖に心臓が止まりそうに。

恐ろしくて映像化して欲しくないエンターテイメント小説。
手に汗を握る怒涛の展開にページをめくる手が止まらない。

知念実希人(チネンミキト)
1978年、沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒、日本内科学会認定医。2011年、第4回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を『レゾン・デートル』で受賞。’12年、同作を改題した『誰がための刃』で作家デビュー。「天久鷹央の推理カルテ」シリーズが人気を博し、『仮面病棟』が2015年啓文堂書店文庫大賞を受賞、ベストセラーに(「BOOK」データーベースより)

嫌いなら呼ぶなよ 綿矢 りさ

★★★★★

最年少芥川賞作家・綿矢りさの短編集。

story:「眼帯のミニーマウス」カワイイ命女子VS.整形ポリス。「神田タ」YoutuberVS.粘着ファン。「嫌いなら呼ぶなよ」不倫男VS.妻の女友だち。「老は害で若も輩」綿矢VS.ライターVS.編集者。整形、不倫、SNS、老害…心に潜む“明るすぎる闇”に迫る!(出版社より)

普通の感覚ではちょっと理解できない人や、ずれてると思う人っていますよね。常識から外れたポリシーや、わがままな思考の持ち主である彼らの気持ちは分かりようもないし、わかりたくもないものですが、もし、彼らの立場に立ってこの世界を見ることができるのなら、何か新しい発見や感覚を得ることが出来るのでしょうか?ひいては、その人たちの気持ちが理解できるものなのでしょうか?
このアンソロジーは、そんな風変わりな人やめんどくさい人々にスポットを当てた4つのお話。

3章「嫌いなら呼ぶなよ」の主人公は「不倫は文化」的ないわゆる女性の敵であるイケメンが主人公。とにかく反省もせず、うまいことこの場を逃れようとしか考えていないクズ男にあきれ果てるも、それよりも公然と正義と道徳を振りかざす妻の親友にイラっとさせられ、その尻馬に乗りしたり顔で賛同する妻の親友の夫には嫌悪感も。あれ?私って誰の味方?悪の根源よりも正しい事を言っている人にストレスを感じる矛盾した感覚。知ればきっと何かを悟る?他3編。

綺麗ごとだけでは語れない人間の本質。理解するために是非体感して欲しい物語です。

綿矢りさ(ワタヤリサ)
1984年京都府生まれ。2001年『インストール』で文藝賞を受賞しデビュー。早稲田大学在学中の2004年、『蹴りたい背中』で史上最年少19歳で芥川賞を受賞。2012年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞、2020年『生のみ生のままで』で島清恋愛文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

東の海神 ⻄の滄海 十二国記 小野 不由美

★★★★★

ホラー、ミステリー、ファンタジーと様々なジャンルで名作を世に送り出している著者・小野不由美の代表作。この『十二国記』シリーズで第5回吉川英治文庫賞を受賞。『東の海神 ⻄の滄海』は『十二国記』シリーズのエピソード3に当たります。

story:国が欲しいか。ならば一国をやる。延王尚隆(えんおうしょうりゅう)と延麒六太(えんきろくた)が誓約を交わし、雁国(えんこく)に新王が即位して二十年。先王の圧政で荒廃した国は平穏を取り戻しつつある。そんな折、尚隆の政策に異を唱える州侯が、六太を拉致し謀反を起こす。望みは国家の平和か玉座の簒奪(さんだつ)か──二人の男の理想は、はたしてどちらが民を安寧(やすらぎ)に導くことになるのか。そして、穢れを忌み嫌う麒麟を巻き込む争乱の行方は。(出版社より)

東の海神 ⻄の滄海』は雁国の政変と治乱興亡の歴史が描かれています。
エピソード1の登場人物、雁国の王・尚隆と麒麟・六太が再び登場。運命に翻弄されながらも国家の危機を通して絆が強く結ばれて行く二人。彼らに与えられた使命の重さに苦悩し戸惑う六太とそれに対する尚隆の覚悟がかっこいい。

また、本質を見極めることの大切さも物語を通して伝わってくる。人は見掛けによらぬもの。うわべだけの言葉や態度に騙されることなく、真に信頼のできる人とはどのような人か。様々な登場人物がそれぞれの思いを胸に秘め彼らに関わってきます。共感や道徳感情は果たしてどこまで信用できるのか。本物と虚像、仮面が剥がれ落ちた時、物語は意外な展開へ。

壮大な物語と共に人間の本質を知る六太の成長譚。

小野不由美(オノフユミ)
12月24日、大分県中津市生まれ。京都大学推理小説研究会に所属し、小説の作法を学ぶ。1988年作家デビュー。「悪霊」シリーズで人気を得る。13年『残穢』が第26回山本周五郎賞、20年「十二国記」シリーズが第5回吉川英治文庫賞を受賞(「BOOK」データーベースより)

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