一人でいてもあまり寂しくないのは、自分と話しているからなのだ
こんにちは、くまりすです。今回は芸人であり、エッセイストでもあるオードリー若林正恭さんの「ナナメの夕暮れ」をご紹介いたします。
story
恥ずかしくてスタバで「グランデ」を頼めない。ゴルフに興じるおっさんはクソだ!-世の中を常に“ナナメ”に見てきた著者にも、四十を前にしてついに変化が。体力の衰えを自覚し、没頭できる趣味や気の合う仲間との出会いを経て、いかにして世界を肯定できるようになったか。「人見知り芸人」の集大成エッセイ。([BOOK」データベースより)
自分探し
執筆、漫才、バラエティ番組のMCなど多岐にわたって活躍されているオードリーの若林正恭さんのエッセイは子供の頃からコンプレックスだった内向的な性格を打ち明けるところから始まっています。
めんどくさい人、考えすぎる人、卑屈。彼は納得しないと先に進めない性格をそんな風に表現している。また、先回りして物事を考えるため常に相手の顔色をうかがって行動していたとも。
周りからは見れば、好奇心旺盛で控えめ、頭の回転が速い人、空気が読める人そんな風に映るのではないでしょうか。しかし、本人にとっては心休まることがなく、常にストレスを感じていたそうです。
他人の正解に自分の言動や行動を置きに行くことを続けると、自分の正解がだんだんわからなくなる。
このように感じていたため一人でいる時間が増えたという。
生きづらさを感じている人が多い現代、共感できる人も多いでしょう。
そういった時の自分探しの日常がこのエッセイには沢山詰まっている。旅をしたり、趣味を持ったり、時には現実逃避をしたり、その姿は芸人ではなく悩める普通の人であり、親近感がわきます。
自分の外側ではなく、内側におもしろいことを創るべきなのだろう。
色々なテーマの最後には必ず自分探しをして出した答えがある。それは模索し続けてきた日々の楽しみ方でもあるのでしょう。彼の几帳面で真面目な人となりがうかがえます。
年齢
心身の悩みは年齢と共に変わってくる。若い頃、世界を斜めに見ていた若林さんは昔と比べて色々なものを受け入れられるようになった。その理由として、ネガティブは有り余る体力だと考える。
「おじさんになって、体力がなくなると悩むことができなくなるんだ。」
体力の衰えによって考え方や体が変化していることを告白。おじさんになったことによって起こった悲喜こもごもなエピソードが面白い。
それにしても、救急車で運ばれて死にそうになっている最中にネタとして使おうと考えるのは流石芸人魂だ。
感想
先日ビートたけしさんの自伝をもとにしたドラマ「浅草キッド」を観ました。
下積み時代に出会った師匠、深見千三郎さんの人情味あふれる人柄や、師弟のやり取りに思わず笑ってしまい、芸の道の険しさ、夢に向かって上り詰める姿に感心し、最後にホロリとさせられた。
その中で師匠の言葉に「笑われんじゃねえぞ、笑わせんだよ」というのがあった。
芸人というのは常に、何が面白いのかを四六時中考えていて、人間を良く見ているんですよね。その人間観察と切り取り方が秀逸でその視点に感心するほどです。人間が好きじゃないとできない仕事だというイメージがありました。
若林さんはその想像とはかけ離れた、かなりの人見知りな方のようで驚きましたが、やはり芸人その観察眼は鋭い。どんなことにも興味を示し、自問自答を繰り返して出した答えは説得力と重みがあります。
そんな若林さんは「まえがき」で次のように書いています。
「生き辛いという思いを抱えていて、息を潜めて生きている人はもし良ければお付き合いください。」
人一倍人間を見てきたからこそ人の気持ちが誰よりもよくわかる。生き辛さをずっと抱えてきたからこそ寄り添える。自然と出る本音は気が利いて共感できる。生きづらさを抱えている人が普通に生きるための言葉が沢山ありました。
1978年、東京生まれ。春日俊彰とお笑いコンビ・ナイスミドルを結成。その後、オードリーと改名する。ツッコミ担当。バラエティ番組を中心に、テレビ・ラジオなど活躍の場を広げる。2013年に出版したはじめてのエッセイ集『社会人大学人見知り学部 卒業見込』がベストセラーに。2018年、『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』で第3回斎藤茂太賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「book」データベースより)
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