11月に読んだ本をまとめました。
基本、人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。
今回から私の満足度、おススメ度で★をつけています。
★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!
★★★★ とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!
★★★ 読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!
★★ 少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。
★ う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。
あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。
木曜日にはココアを 青山 美智子
★★★★
今年、本屋大賞2位を受賞されました青山美智子先生のデビュー作。
川沿いに立地する隠れ家のような雰囲気の良いカフェで働く主人公は、週に1回平日の昼下がりに来店し、決まってココアを注文する女性の事が気になり…
美しい詩のような比喩がロマンチックで、魔法の言葉の数々に心が軽くなり、ほっこりします。
読みやすい文章で、子供から大人まで楽しめます。
各章が15分ほどで読めますので、隙間時間にもおすすめ。
寒い季節に心温まる12の物語。
5時過ぎランチ 羽田 圭介
★★★★
芥川賞作家・羽田圭介だから書ける限りなく危険なお仕事&犯罪小説!
皮肉のきいた文章で、ブラックなお仕事にまつわるドラマを詳細に描いています。
食べるために働いているのに、食べる時間もままならない本末転倒。
萌衣はアルバイト先で洗車を頼まれた車に血痕が付いていているのを見つけた。「トランクを開けたら殺すからね」と言うその車の持ち主の小指が欠けているのに気づき、「何も見なかったことにしよう」と心に決めるのだが…
登場人物たちは過酷な労働環境の中、それが労働が当たり前のように、時として生き甲斐のように働いている。詳細過ぎるほど書かれている車のパーツであったり、食べ物に対する異常なほどのストイックな表現は、何かしらその人の抱えている悩みであったり、働く理由であったりすることを匂わせます。
なぜ、その仕事を選んだのか。なぜ、労働条件が良くなかったり、人間関係に不満があるのにその仕事をしているのか。その理由は意外と自分では気づいていない場合も多い。
社会や国の制度に不満がありつつも、なんとなく仕事に充実感があって、真面目に働く人々。
「それはそれで素晴らしい事!」とも、「いや、それでいいのか日本人!」とも、どちらともとれる。
堅苦しいお仕事小説ではなく、それをミステリー仕立てにしているところが面白い。
噛み合わない会話と、ある過去について 辻村 深月
★★★★★
推しも押されぬ人気作家辻村深月の本屋大賞を受賞後第一作目の短編集。
松尾美穂は人生順風満帆の小学校の教師。昔の教え子の兄、高輪佑は押しも押されぬ国民的アイドルになっていた。美帆は佑の弟の担任であったが、佑とも直接関わったこともある。その佑がTV番組の収録で学校に来ることになり、再開に胸を躍らせる美穂だが…
人間の裏側や、人間関係の難しさを描いている。
人に良かれと思ってしている事、日頃の何気ない行動、特に相手に何か言われたわけではないので、それで良しとしている事って結構多いですよね。そして、例えば風の噂で本当は〇〇だと思ってたなんて本音を知って、初めて自分の行いを振り返ったりした経験は誰でもあると思います。
色々な人間が集まるコミュニティの中でなんとなく役割分担が決まっていて、それって、ある意味ちょっとした上下関係なんかでもあるのかも…。そんな大きなことではなく、本当にちょっとした事、些細な事だよね。なんて思っているのは実は自分だけだったりして。
立場や思い出が入れ替わるどんでん返しは本当に驚かされましたし、面白かったです。
今月のブログ閲覧回数もダントツで、当書を読まれている方も多いです。まだ、辻村美月作品を読まれたことのない方は入門編としてもおすすめ。
改訂完全版 毒を売る女 島田 荘司
★★★★
新本格ミステリーのジャンルを切り開いた島田荘司の短編集。サスペンスからミステリー、SFのようなものまでジャンルが豊富です。著者は本格ミステリーの「御手洗潔シリーズ」が有名ですが、作品の幅の広さがうかがえます。
大道寺靖子は高級住宅街に暮らしている。夫は医者で、娘の里美は苦労して入れた幼稚園に通っている。最近仲良くなったママ友から彼女の夫の病気の事で相談を受けた靖子だが、それは感染症の末期だという事が判明し…
1985年~1990年代初頭は昭和のバブル景気。不動産バブルや高級車ブーム、ポケベルがやっと普及された時代で、ラジオ放送全盛期でもありました。各物語からその時代の人々の盛んな交流や活気ある社会の空気が感じられるのと同時に、今も変わらぬ深層心理から人間の本質が垣間見えます。
感染症の恐怖とそれに対する人々の対応は30年前と同じ。表面的な豊かさとは裏腹に人々の内面は何ら進化せず、先行きの見えない社会に不安を抱いています。
著者は人々が暮らす家を舟に、都市を海に例えて、誰も知らないこの国の先行きを漂うノアの箱舟と表現している。
線は、僕を描く 砥上 裕將
★★★★★
水墨画の青春小説。
ひょんなことから水墨画の巨匠、篠田湖山に気に入られて水墨画を始めることとなった主人公の青山霜介。両親の死以後、生きる気力を失っていた霜介は次第に水墨画の世界へのめりこんでいく…
日常の生活で水墨画に触れる機会はあまりない気がします。しかし小学生の頃、墨をすったり、筆で習字を描いたりした経験は誰にでもあるはず。詳しくその世界が分からなくても、なんとなくイメージは出来たりします。
字を書くのですら難しいものをやり直しなしの一発勝負で描く水墨画は、墨の濃淡、線の太さなどを変えて墨一色でこの世の森羅万象を表現しなければいけません。厳しい世界に生きる若い水墨画家たちとの触れ合いを通して、主人公は生きていくための心の強さを身に付けていく。
水墨画についても丁寧に描かれていて、とても読みやすい青春小説。若い人たちにもぜひ読んで欲しい。
漫画化もされています。
常設展示室 原田 マハ
★★★★
美術館の勤務経験もある原田マハのアート小説。6つの短編集。
小さい時から美術館が大好きだった美青は、念願のメトロポリタン美術館のアシスタントキュレーターの職を得て、ニューヨークで充実した毎日を送っていた。しかし、ある時から階段を踏み外したり、壁にぶつかりそうになったりすることが多くなり、ドクターに診てもらうことにしたのだが…
自分の心を震わせる運命の絵に出会ったことはありますか?
最近では、各美術館、博物館がゴッホ展を開催したりしていますね。
名画はその絵や色彩でその時代の風景であったり、人々の暮らしであったり、孤独やさみしさ、希望など様々なことが表現されています。なんとなく惹かれたり、心にグッとくる絵は、観る人の心を映して絵と共鳴しているかも知れません。もしくは画家からの何らかのメッセージを受け取っているのかも。
私はネットで検索して写真を見ながら読みました。本当に美しい絵や美術館の数々で、家に居なが絵画を鑑賞している気分に。
物語を読み終えた後、美術館へ足を運びたくなります。もしかしたら、心の支えになるような運命の絵に出会えるかも。
さざなみのよる 木皿 泉
★★★★★
「野ブタ。をプロデュース」の夫婦脚本家、木皿泉の本屋大賞ノミネート作品。
ナスミは43歳でがんを宣告され、残り少ない人生を病室で過ごしていた。病気になって初めてわかった家族の大切さ、何でもない日常がどんなにすばらしい事かということ。ナスミの想いが淡々と綴られていく…
どんなに不摂生をしても、真剣に健康について考えたり、万が一の事があったらなんて日頃考えている人は少ないと思います。例えば、いざ病気が見つかって入院や手術が必要だと知った時に初めて真剣に考えたりするのではないでしょうか。そして、それは本人だけでなく、家族や友人、同僚など周りの人達も同じことです。
この物語は、ナスミと彼女の死に向き合う人々それぞれのオムニバスの物語。彼らの気づきや告白など、文章の至る所に胸を打つ言葉であったり、考えさせられる言葉が沢山ありました。
物語を通して病気になって初めてわかることや、本当に大切なものは何かを教えてくれます。
納得のいく人生を送れるように、今の幸せを見落とさないように、忙しい毎日を改めて考えるきっかけをくれる物語です。