うつくしが丘の不幸の家 町田そのこ

町田そのこ
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~「それでもわたしたち、この家で暮らしてよかった」人生の喜びも悲しみもすべて包み込む、本屋大賞受賞作家が贈る傑作家族小説~

こんにちはくまりすです。今回は、本屋大賞受賞町田そのこの「うつくしが丘の不幸の家」をご紹介いたします。

story:

築21年の三階建て一軒家を購入し、一階部分を店舗用に改築。美容師の美保理にとって、これから夫の譲と暮らすこの家は、夢としあわせの象徴だった。朝、店先を通りかかった女性に「ここが『不幸の家』だって呼ばれているのを知っていて買われたの?」と言われるまではーー。わたしが不幸かどうかを決めるのは、他人ではない。『不幸の家』で自らのしあわせについて考えることになった五つの家族をふっくらと描く、傑作連作小説。(出版社より)

目次:おわりの家/ままごとの家/さなぎの家/夢喰いの家/しあわせの家/エピローグ(「BOOK」データベースより)

憧れのマイホームのはずが…

庭付きの1戸建て住宅、アイランドキッチン、ウオークインクローゼットに趣味の部屋も。
誰もが憧れのマイホームを夢見ていますが、現実問題なかなか理想通りにはいかないですよね。
それでもマイホームというものを手に入れた瞬間はとても幸せな気持ちになれるでしょう。

おわりの家」の主人公、美保理は念願のマイホームを手に入れた。中古住宅の1階部分を夫婦で営む美容室としてリフォームしたが、住居の部分は予算の都合上、手つかずのままだ。ある日、このマイホームが「不幸の家」と呼ばれている事を知ってしまった美保理。縁起が悪いとされている庭の枇杷の木に不安を抱くのだが…。

庭に実の成る木を植えるのは縁起が悪いこととされています。
実が成るということは、やがて実が落ちるということでもあります。また、実の匂いから虫が集まりやすく、虫の死骸が庭に増えてしまう可能性も。そういうことから、昔から不吉と言われているのです。

「昔っから言うじゃないですか、病人が増えるとか、死人が出るとか」

業者にそう言われたことを思い出し、美保理は木を切ろうとします。その時目にしたのは、壁の奇妙な位置に刺さっている釘でした…。

家は人生

何かしら、これ

前の住人が残していった痕跡に悪い想像をしてしまう美保理。

前の住人の事は気になりますよね。売りに出されていたということは、何かしら住めなくなった理由があるはずです。その原因を知りたいと思うのは当然のこと。
この小説は、築21年の家が迎えた5つの家族の物語。時間を遡って、その痕跡や生活跡ができた過程が次第に紐解かれていきます。

また、彼女の悩みは家の事だけでなく、夫との関係にも。
幸せになるために努力を重ね、ようやく手に入れたと思った幸せの場所が「不幸の家」だなんて…
昔から望んだようにはうまくいかない美保理にとって人生はつらい事ばかり。

しあわせになるために買ったのに、そんなのってないじゃないですか。

理不尽な運命に堪えていた思いが決壊した美保理。その時、彼女の前に現れたのは…

感想

街を歩くと和・洋、思い思いのデザインの家が目に飛び込んできます。日本の街並みがヨーロッパのように統一されていないのは、日本の住宅の平均寿命が約30年と短いのも一つの要因だとも言われています。
しかし、自分の好みにデザインできるのはとてもうれしいこと。住む人の価値観がなんとなく表れたりして、その人となりを想像したりすることもあるのではないでしょうか。

最近では中古住宅も人気ですが、この小説の主人公のように過去の住人の事が気になるのは家にその人の「念」が残っているのではないかという不安があるからと言われています。
「念」とは持ち主の思いや、感情や記憶がこもっているという考え方。そのエネルギーみたいなものが自分に悪影響を与えたり、時には怖いものを見たりするのではないかと想像するのです。

ミステリーやホラー仕立ての小説に家や家族を題材にすることが多いのもそういった深層心理があるからかも知れません。
この物語もちょっとそういったドキッとする謎や不気味な部分もあって楽しめました。

しかし、物語の中心はあくまでそこに住む人、家族の人間模様。
本来、家はくつろげる場所、素の自分に戻れる場所のはずですが、いつもそうだとは限りませんよね。
置かれている状況にしんどくなった時、もう駄目だと思った時、どうすれば自分らしく生きることが出来るのか、時には自分の居場所を見つめなおす場面もあるかと思います。
家はそこに住んでいる家族そのもの。人生そのもの。そこに居心地の良さがあれば、幸せだと思えるものです。

著者:町田そのこ(マチダソノコ)
1980年生まれ。2016年、「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。2017年、同作を収録した短編集『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。2021年、『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

関連作品👇夜空に泳ぐチョコレートグラミー 町田そのこ

story:思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋、そして、ともには生きられなかったあの人のことーー。大胆な仕掛けを選考委員に絶賛されたR-18文学賞大賞受賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」。すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。
R-18とありますが、ソフトR-18くらい。2021年「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞を受賞した作家のデビュー作。登場人物がかなりつらい状況であったり、深刻な悩みを抱えているが、読後感は良い。5つの短編に分かれているので、合間にちょっとずつ読める。女性のための物語。
(まだ、読書ブログを始めた頃に書いたものなので、我ながら初々しい感想です。よろしければ。)👇
もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」町田そのこ
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