2025年1月・2月に読んだ本をまとめました。
人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。
私の満足度・おススメ度で★をつけています。
★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!
★★★★ とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!
★★★ 読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!
★★ 少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。
★ う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。
あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。
カラスの親指 by rule of CROW’s thumb 道尾 秀介
★★★★★
直木作家・道尾秀介によるミステリー小説。日本推理作家協会賞受賞作品。2012年に阿部寛さん主演で映画化されました。
story:人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは?息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。「このミス」常連、各文学賞総なめの文学界の若きトップランナー、最初の直木賞ノミネート作品。第62回日本推理作家協会賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
詐欺師である主人公・タケとそのバディ・テツらのやりとりとりが面白いコミカルなミステリー。
タケを始めとする詐欺師の面々のちょっと抜けたところや、おバカな感じが滑稽で微笑ましく、詐欺師ながら憎めないキャラクターたちが物語を盛り上げてくれます。彼らの心の重りである過去にしんみりさせられながらも、少しずつ違和感が積もっていくもやもやにページをめくる手が止まらなくなりました。
後半は一転してエンタメ性溢れるハラハラドキドキの展開に。ミステリーとしても小さな伏線回収がいくつもあり、騙させれる楽しさを何度も味わえますが、油断していると…。
笑いあり、涙あり、まさかの結末でミステリーの醍醐味を味わえる。
気持のよい読後感で楽しめた作品でした。
1975年東京都出身。2004年『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。07年『シャドウ』で本格ミステリ大賞、09年『カラスの親指』で日本推理作家協会賞、10年『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞、11月『月と蟹』で直木賞を受賞)(「BOOK」データベースより)
DTOPIA 安堂 ホセ
★★★
2024年下半期、芥川賞受賞作品。
story:舞台は南太平洋の楽園、ボラ・ボラ島。白人女性“ミスユニバース”を巡って10人の男が競う。Mr.L.A.、Mr.ロンドン、そしてMr.東京ーやがてショーの視聴者たちは「自分だけのDTOPIA(デートピア)」を編集しはじめ、楽園の時間は膨張する。第46回野間文芸新人賞候補作。第172回芥川賞受賞。(「BOOK」データベースより)
日本人は一般的に、人と同じであることに安心感を持つ傾向が強いと言われています。その理由として農耕民族的性格や、世界唯一の単一王朝国家であること、同じ価値観を育てる教育などがよく挙げられています。そんな日本特有の感性をグローバル化するため、今多様性社会への取り組みが促進されていますが、果たしてどこまで浸透しているのかは疑問です。なんとなくずれているような政策に押しつけがましさを感じている人も多いのではないでしょうか。
マイノリティーであることで日本での生きにくさを感じている登場人物たちは、個としての自身を守るために葛藤し、時にはタブーに踏み込むことも。クレイジーでえげつない描写や、皮肉たっぷりであけすけな文章は読者を選びますが、多岐に渡るテーマは、社会問題をグローバルな視点でとらえることが出来ます。
日本人的感性から言えば、寄り添える部分もありながら共感出来ない部分も多々あるかもしれませんね。芥川賞作品ですが、純文学というよりはバイオレンスなエンタメ小説風にも読めました。
1994年、東京都生まれ。2022年、『ジャクソンひとり』で第59回文藝賞を受賞しデビュー。同作は2023年に第168回芥川賞候補、また2024年にフランス語版となる「Juste Jackson」がマルキ・ド・サド賞の候補となった。2023年、2作目となる『迷彩色の男』を発表。同作は2024年に170回芥川賞候補となり、デビュー以来2作連続の芥川賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
ゲーテはすべてを言った 鈴木 結生
2024年下半期、芥川賞受賞作品。
story:高名なゲーテ学者・博把統一は一家団欒のディナーで、彼の知らないゲーテの名言と出会う。ティー・バッグのタグに書かれたその言葉を求めて、膨大な原典を読み漁り、長年の研究生活の記憶を辿るがー。ひとつの言葉を巡る統一の旅は、創作とは何かという深遠な問いを投げかけながら、読者を思いがけない明るみへ誘う。若き才能が描くアカデミック冒険譚!第172回芥川賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
「自分自身を信じてみるだけでいい。 きっと、生きる道が見えてくる。」
「生きている間は、なにごとも延期するな。なんじの一生は、実行また実行であれ。」
ドイツのみならず世界文学においても高く評価されている文豪ゲーテ。生きるための知恵や真理が詰まった彼の言葉はナポレオンやベートーヴェンなどの偉人たちにも影響を与えました。今なお語り継がれている名言の数々は日常の様々な場面で私たちに気づきと生きる力を与え続けてくれます。
物語は、ゲーテ研究の第一人者である大学教授の統一が、見たこともないゲーテの引用文と思われる言葉と出会い、探求心を深めていくストーリ。それが本当に正しいゲーテの言葉かどうかを紐解いていく過程には偉人たちの名言や古典が多数引用されており、知識や教養を深められるアカデミックミステリーとしても楽しめます。また、インテリジェンス溢れる文体で読みやすいのも魅力の一つ。
文学的なテーマがやや堅苦しく感じる人もいるかもしれませんが、文学に対する熱量を感じられる新しい形の作品なので、気負わずに読んでみては。
2001年福岡県生まれ。2024年、「人にはどれほどの本がいるか」で第十回林芙美子賞佳作を受賞。本作がデビュー作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
砂の王国 荻原 浩
★★★★★
story:全財産は、3円。私はささいなきっかけで大手証券会社勤務からホームレスに転落した。寒さと飢えと人々からの侮蔑。段ボールハウスの設置場所を求め、極貧の日々の中で辿りついた公園で出会った占い師と美形のホームレスが、私に「新興宗教創設計画」を閃かせた。はじき出された社会の隅からの逆襲が始まる!(「BOOK」データベースより)
この物語の主人公はその職業柄、多くの人間の負の面を見てきたと自負しており、人間の本質を突いた妙案はある意味、不安定な現代人を示唆しているようにも思えます。
宗教に嵌めようとする主人公たちと、まんまとハマっていく人々の滑稽な姿を読者はリアルな喜劇として楽しむわけですが、これを宗教から自身が夢中になっているものと置き換えると、傍観者的な立場で見ることは出来ないはず。
著者らしい社会への観察力と物事の本質に迫る鋭い洞察力そして、柔らかい語り口。ドキリとさせられる沢山のフレーズも、ユーモアのある皮肉にも人間に対する温かいまなざしが感じられました。
主人公たちが本当に求めていたものと手に入れたものは…。心の拠り所を持たない日本人の危うさと、思考停止の怖さ。
読みやすい徹夜必死のエンタメ小説です。
1956年埼玉県生まれ。成城大学卒業後、コピーライターを経て、97年『オロロ畑でつかまえて』で第10回小説すばる新人賞受賞。2005年『明日の記憶』で第18回山本周五郎賞受賞、14年『二千七百の夏と冬』で第5回山田風太郎賞受賞。16年『海の見える理髪店』で第155回直木賞受賞(「BOOK」データーベースより)
まるまるの毬 西條 奈加
★★★★★
南星屋シリーズ1作目。吉川英治文学新人賞受賞作品。
story:親子三代で菓子を商う「南星屋」は、売り切れご免の繁盛店。武家の身分を捨てて職人となった治兵衛を主に、出戻り娘のお永とひと粒種の看板娘、お君が切り盛りするこの店には、他人に言えぬ秘密があった。愛嬌があふれ、揺るぎない人の心の温かさを描いた、読み味絶品の時代小説。吉川英治文学新人賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
江戸時代、砂糖が大変高価だったこともあり、公家大名などの献上菓子と庶民が口にする菓子とは区別されていました。饅頭や飴などの贅沢品は庶民の口に入るのは難しく、せんべいや団子、芋ようかんなどが、上菓子の対称的な意味の駄菓子として一般庶民に親しまれていました。
そんな時代にあって安価で美味しい和菓子を提供する下町の菓子舗「南星屋」が、庶民に人気なのも頷けます。店主である主人公の治兵衛が相違工夫を重ねた和菓子の描写は本当に美味しそうで、食べたくなります。
物語の第1章「カスドース」は、治兵衛が販売した菓子が、名家の門外不出とされる菓子にそっくりだと引っ立てられるお話。他所売りを禁じられ、庶民の口に入ることが無い「お留め菓子」。それがなぜ売られているのかと、藩のご家老から訴えられるという絶体絶命の窮地に治兵衛は…。
他、江戸の人情溢れる7つの物語。
心が温かくなる、そして和菓子が食べたくなる連作短編集です。
1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞を、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を、18年『無暁の鈴』で第1回細谷正充賞を受賞。21年には『心淋し川』で第164回直木三十五賞を受賞した(「BOOK」データベースより)
かにみそ 倉狩 聡
★★★★
公募の文学賞である『日本ホラー小説大賞』(現「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」)優秀賞作品。
story:全てに無気力な20代無職の「私」は、ある日海岸で小さな蟹を拾う。それはなんと人の言葉を話し、体の割に何でも食べる。奇妙で楽しい暮らしの中、私は彼の食事代のため働き始めることに。しかし私は、職場でできた彼女を衝動的に殺してしまう。そしてふと思いついた。「蟹…食べるかな、これ」。すると蟹は言った。「じゃ、遠慮なく…」。捕食者と「餌」が逆転する時、生まれた恐怖と奇妙な友情とは。話題をさらった「泣けるホラー」。第20回日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
言語を理解し、人と会話する動物が登場する心癒される物語は数多くあります。しかし、爬虫類や昆虫などが喋り出せば少し恐怖を感じるかもしれませんね。その中でも苦手な人も多い節足動物となると、どうしてもホラーのように感じられるのは私だけでしょうか。
「泣けるホラー」と銘打たれたこの作品に登場する蟹は、言葉を操れるだけではなく、テレビも見るし主人公にアドバイスまでする。カニと主人公とのやりとりにほっこりさせられ、こんなカニなら飼ってみたいと思えるほど好感度も抜群ですが、賢く合理的な反面、感情が欠落しているのが不安要素。しかも、何でも食べる大食漢ときている所にこの後の恐怖の展開を予感させられますが…。
彼らのやり取りがコミカルに描かれているため、グロさもありながら奇譚的な怖面白さがあります。しかし、その中に潜んでいる意味は深く、そして切ない。
ホラーが苦手な人でも楽しめるホロっとされられるホラーです。
倉狩聡(クラガリソウ)
1982年東京都生まれ。国際製菓専門学校夜間部卒業。2013年、『かにみそ』で第20回日本ホラー小説大賞“優秀賞”を受賞。その奇抜なアイデアと繊細な情景描写で話題となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
〈このブログ記事の参考資料〉
*ウイキペディア ほか