2022年4月・5月に読んだ本をまとめました。
基本、人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。
今回から私の満足度、おススメ度で★をつけています。
★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!
★★★★ とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!
★★★ 読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!
★★ 少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。
★ う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。
あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。
ベルリンは晴れているか 深緑 野分
★★★★★
2019年本屋大賞3位の歴史ミステリー。
この物語は、歴史上類を見ない4カ国統治時代のドイツならではの歴史ミステリー。
第二次世界大戦敗戦後のドイツでは、アメリカ、イギリス、フランス、ソビエト連邦の4か国による分割占領が開始され、ベルリン市内のあちこちに、我が物顔の各国の兵士が歩いている有様。
アメリカの占領地で働くドイツ人少女アウグステは、ソ連の占領地の領内で起きた事件の容疑をかけられた。無罪を証明するため、人探しをすることになったのだが…。
ポツダム会談目前の連合国同士の緊張感が高まる中、ドイツを舞台に繰り広げられるアウグステの人探しは、逃げたり、追いかけたり、捕まったりでちょっとした冒険小説のようで面白い。
各国の兵士の雰囲気や対応の違いがリアルで、戦後のドイツの街並みが目に浮かぶようです。
また、ナチスが国民に浸透していく様子、近所に住むユダヤ人の変化など戦時中のドイツ国民の暮らしも描かれていて、知らないことも多いのだと気づかされる。
ナチスやホロコーストについての映画や本は色々ありますが、それを日本人の感覚で表現された物語はそんなに多くないように思います。
ミステリー仕立ての歴史書という風にも感じられ、物語を楽しみながらも外国の歴史を知ることができました。
掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン
★★★★★
2020年本屋大賞〔翻訳小説部門〕第2位の作品。
ルシア・ベルリンの短篇集「A Manual for Cleaning Women」から翻訳家の岸本佐知子がよりすぐった24篇を収録している。
この小説は、著者ルシア・ベルリン自身の人生を基に描いた連作短篇集。
彼女の過酷な幼少時代の経験や貧困、恋愛・結婚観、アルコール依存症、掃除婦から大学の客員教授までの職歴などジェットコースターのように目まぐるしく変わる人生が描かれています。
波乱万丈で苦難の連続の物語だが、豊かな感性とブラックユーモアがきいた文章が思わず笑いを誘い、孤独ながらも凛とした強さを感じられる。
異文化が入り混じる国アメリカの民族の違いや、貧富の差、差別などリアルなアメリカの姿と共に、ハードでかっこいい彼女の生き様が描かれています。
少年 川端 康成
★★★★★
日本人初のノーベル文学賞を受賞した文豪、川端康成の同性愛を描いた作品。これまで全集でしか読めなかった作品が没後50年という節目に、70年ぶりに文庫として復活しました。
川端康成が全集を作成するために旧稿を整理した際に見つけた「湯ヶ島での思い出」と題するもの。
名作『伊豆の踊子』のもとにもなった「湯ヶ島での思い出」。その後半部分「中学寄宿舎で同室にいた少年への愛の思い出」がこの『少年』の内容なのです。
この『少年』は川端康成が青春時代を過ごした寄宿舎で同室の後輩、清野への懊悩や蜜月を中心に描かれています。
美少年・清野への恋愛にも似た感情や、恋人同士のようなスキンシップ。清野から寄せられる無垢な愛情に喜びを感じながらも恋人の一歩手前の関係に悶々とする日々。卒業後、清野から送られてくる手紙など、愛惜と寂寥が滲む文章は情緒的で美しい。
後輩・清野はモデルとなる実在する人物がいるそうで、この小説は日記形式に綴られた川端康成の回顧録つまり自伝的私小説と言えるでしょう。
文豪が描く繊細で美しい同性愛の世界を堪能できる物語です。
塞王の楯 今村 翔吾
★★★★★
吉川英治文学新人賞や、山田風太郎賞など数々の賞を受賞している今村翔吾の2022年直木賞受賞作品。
戦国時代、穴太衆と呼ばれる石垣職人集団と鉄砲職人集団の国友衆の戦いを描いた物語。
穴太衆は質の高い技術をもって堅牢な石垣を作ることで有名であった。方や国友衆は城を難なく落とせるほど優れた鉄砲を創る日本一の技術を持っていた。
最強の楯と矛がぶつかったらどちらが勝つのか?運命の対決に職人の魂とプライドをかけた戦いが幕を開ける。
この物語のクライマックスは2人の天才職人の対決ですが、そこに至るまでの石垣職人匡介の成長や友情を描いた人間ドラマも見どころです。厳しい職人の世界、石垣の積み方や加工なども知ることが出来て面白い。
関ヶ原の前哨戦とも位置付けられる大津城の戦いの場面は一進一退の攻防に胸が熱くなります。
この小説を読む前はただの石に見えた石垣もその奥深さを知った後では、まったく違って見えます。
手に汗握る時代小説でした。
かか 宇佐見 りん
★★★★★
芥川賞作家、宇佐見りんの20歳のデビュー作品。この作品では文藝賞と三島由紀夫賞W受賞している。三島由紀夫賞は史上最年少の21歳での受賞。
愛に飢えている主人公の「うーちゃん」。彼女は心を病んだ母親に対して、憎しみと愛おしさが入り混じった複雑な感情を抱いていた。自身を傷つける母親の痛みをまるで自分の事のように思ううーちゃんは、母親と自分を救うための「これしかない」方法を思いつき、熊野詣に出かけるが…。
思春期の少女の葛藤や、成長を描いている。
今や社会問題にもなっている機能不全家族の描写に読んでいて苦しくなりますが、そんな中でも母親を助けたいと思う思春期の少女の優しさや強さから彼女の生きることへのエネルギーを感じられる。
うーちゃんの日常に浸透しているインターネットやSNSの繋がりは孤独な彼女の避難場所であると同時に、危うげな心の内を映し出していていて、まさに今の若者の姿を象徴しているよう。
自然の風景の中にある寂れた町の閉塞感や、田舎町の活気のない人々の暮らしの表現など、リアルで美しい情景描写に引き込まれる。「怪物級」と多くの作家が驚愕した新星の作家。この小説はまさにど真ん中の現代の純文学でした。
うつくしが丘の不幸の家 町田 そのこ
★★★★★
「女による女のためのR-18文学賞」「2021年本屋大賞」受賞作家の家族小説。
「おわりの家」の主人公、美保理は念願のマイホームを手に入れた。中古住宅の1階部分を夫婦で営む美容室としてリフォームしたが、住居の部分は予算の都合上、手つかずのままだ。ある日、このマイホームが「不幸の家」と呼ばれている事を知ってしまった美保理。縁起が悪いとされている庭の枇杷の木に不安を抱くのだが…。
人生で一番高い買い物と言われているマイホーム。検討を重ねて購入しますが、やはり住んでみないと分からないことはあります。特に中古住宅は前の住人が残した生活跡からその暮らしぶりを想像し、それが悪いものであれば縁起が悪いと感じることも。
この小説は、築21年の家が迎えた5つの家族の物語。時間を遡って、その痕跡や生活跡ができた過程が次第に紐解かれていきます。
ドキッとするミステリー要素もありつつ、物語の中心はあくまでそこに住む家族の人間模様。
家族の不幸を暗示しているような家で、悩み成長していく女性の姿が描かれています。
家族の大切さを再認識する物語でした。
もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👉読書ブログ「うつくしが丘の不幸の家」町田そのこ