2022年 本屋大賞
本屋大賞とは、全国の書店員が選んだ「いちばん!売りたい本」です。
書店に行くと、多くの本が並んでいますが、どれを買ったらよいか迷いますよね。書店員さんは毎日書籍に触れていて、たくさん読まれる方が多いです。また、著者や売れ筋についての知識が豊富で、情報交換も盛んに行っています。
本屋大賞は過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」本を投票し決めるものです。ノミネートされた上位10作品の中から選ばれます。
全体を通して比較的読みやすく、多くの読書家の間でも人気の作品が多い傾向ですので、本選びに迷ったら、是非参考にしてください。
※全て単行本です(2022年4月6日現在)
同志少女よ、敵を撃て 逢坂 冬馬
「凄い新人が現れた!」と話題になった逢坂冬馬のアガサ・クリスティー賞受賞、2022年本屋大賞ノミネート作品。
story:1942年、独ソ戦のさなか、モスクワ近郊の村に住む狩りの名手セラフィマの暮らしは、ドイツ軍の襲撃により突如奪われる。母を殺され、復讐を誓った彼女は、女性狙撃小隊の一員となりスターリングラードの前線へ──。第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
小さな村に住んでいた少女セラフィマは、突如現れたドイツ軍に殺されそうになったところを赤軍兵に助けられます。殺された家族や村人の敵を討つために、狙撃訓練学校で狙撃兵としての訓練を受けることになった彼女は、そこで同じような境遇の仲間と出会い、やがて戦地へ赴くことに…
第二次世界大戦中の独ソ戦において射撃手として戦った少女の物語。
権力者のエゴとプロパガンダによって、大切な家族と日常を奪われた少女セラフィマ。彼女の目に映る戦いの描写が生々しく、戦争の残酷さ、理不尽さ、そして人間の脆さが伝わってきます。その一方で、少女の成長や友情も描かれていて、テンポの良いストーリーは読みやすく面白い。
言葉や歴史も丁寧に説明されていて、戦史に苦手意識のある人でも手に取りやすい。
同じ過ちを繰り返して欲しくない。彼女たちの目から歴史を知ることで、より平和の尊さを実感できるでしょう。
1985年生まれ。明治学院大学国際学部国際学科卒、『同志少女よ、敵を撃て』で、第11回アガサ・クリスティー賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)([BOOK」データベースより)
赤と青とエスキース 青山 美智子
story:メルボルンの若手画家が描いた一枚の「絵画」。日本へ渡って三十数年、その絵画は「ふたり」の間に奇跡を紡いでいく。一枚の「絵画」をめぐる、五つの「愛」の物語。彼らの想いが繋がる時、驚くべき真実が現れる!仕掛けに満ちた傑作連作短篇。(「BOOK」データベースより)
1970年生まれ、愛知県出身。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。第28回パレットノベル大賞佳作受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1回宮崎本大賞を受賞。『お探し物は図書室まで』が2021年本屋大賞2位に選ばれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
スモールワールズ 一穂 ミチ
story:夫婦、親子、姉弟、先輩と後輩、知り合うはずのなかった他人ー書下しし掌編を加えた、七つの「小さな世界」。生きてゆくなかで抱える小さな喜び、もどかしさ、苛立ち、諦めや希望を丹念に掬い集めて紡がれた物語が、読む者の心の揺らぎにも静かに寄り添ってゆく。吉川英治文学新人賞受賞、珠玉の短編集。(「BOOK」データベースより)
目次:ネオンテトラ/魔王の帰還/ピクニック/花うた/愛を適量/式日
2008年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
正欲 朝井 リョウ
人気直木賞作家・朝井リョウ、話題のベストセラー小説。2023年秋映画公開。
story:自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよなー。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繋がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。第34回柴田錬三郎賞受賞!(「BOOK」データベースより)
グローバル化が進む中で日本は国際社会から多様性を求められてきました。着々と法整備が進み、国民にも浸透してきつつある多様化社会ですが、果たしてそれは真の意味でマイノリティの人が求めている社会なのでしょうか。この『正欲』はマイノリティとマジョリティ双方から見た多様化社会の姿が描かれています。
生きづらさにあえぐ魂の叫びと、衝撃的なニュースからこの物語は始まります。他人と価値観や認識が大きく異なり、全く理解してもらえない悩みを持つ人々。生きている実感や喜びを感じ、分かち合える仲間すらもいない。想像を絶する人生を知り、私達は何を考え、どう行動するべきなのか。「他者と共存しながら自分らしく生きること」の難しさを考えさせられます。
傑作か、問題作か?見せかけの多様化社会に一石を投じる一冊です。
1989年、岐阜県生まれ。小説家。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『何者』で第148回直木賞、14年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)([BOOK」データベースより)
六人の嘘つきな大学生 浅倉 秋成
TV番組「王様のブランチ」が主催する「2021年ブランチBOOK大賞」大賞受賞作品。その他、多数のミステリーランキングにランクイン。映画化も予定されています。
story:IT企業「スピラリンクス」の最終選考に残った波多野祥吾は、他の五人の学生とともに一ヵ月で最高のチームを作り上げるという課題に挑むことに。うまくいけば六人全員に内定が出るはずが、突如「六人の中から内定者を一人選ぶ」ことに最終課題が変更される。内定をかけた議論が進む中、発見された六通の封筒。そこには「●●は人殺し」という告発文が入っていたー六人の「嘘」は何か。伏線の狙撃手が仕掛ける究極の心理戦!(「BOOK」データベースより)
この中に犯人がいるー。ミステリーの醍醐味を味わえる戦慄と緊迫のシチュエーションですが、就職活動中の6人の学生は意外な場所でこの状況に遭遇します。物語の舞台は、一つの合格枠を巡ってディスカッションするはずの部屋。ある出来事を境にその場所が密室の事件現場に。
ロジカルな謎解き、緊張感が高まる会話劇、疑心暗鬼の中繰り広げられる心理戦など、ミステリーのスリルもありながら、人間模様もしっかりと描かれていて面白い。同志だと思っていた仲間が、ライバルになり、敵としてお互いを追い詰めていく。それぞれの立場や状況が目まぐるしく入れ替わり、先の読めない展開にページをめくる手が止まらなくなるでしょう。
人間の本質に共感したり、恐怖を感じたり。人間不信になるかも知れませんが、そこがまた、面白い。イチオシのミステリー小説です。
1989年生まれ。2012年に『ノワール・レヴナント』で第13回講談社BOX新人賞Powersを受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)([BOOK」データベースより)
夜が明ける 西 加奈子
story:15歳のとき、俺はアキに出会った。191センチの巨体で、フィンランドの異形の俳優にそっくりなアキと俺は、急速に親しくなった。やがてアキは演劇を志し、大学を卒業した俺はテレビ業界に就職。親を亡くしても、仕事は過酷でも、若い俺たちは希望に満ち溢れていた。それなのにーー。この夜は、本当に明けるのだろうか。苛烈すぎる時代に放り出された傷だらけの男二人、その友情と救済の物語。(出版社より)
1977年、テヘラン生まれ。2004年、『あおい』でデビュー。07年、『通天閣』で織田作之助賞を、13年、『ふくわらい』で河合隼雄物語賞を、15年、『サラバ!』で直木賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)([BOOK」データベースより)
残月記 小田 雅久仁
story:「俺は突然わけもわからないうちに何もかもを失って、一人になった!」不遇な半生を送ってきた男がようやく手にした、家族というささやかな幸福。だが赤い満月のかかったある夜、男は突如として現実からはじき出される(「そして月がふりかえる」)。「顔じゅうが濡れている。夢を見ながら泣きじゃくっていたのだ」早逝した叔母の形見である、月の風景が表面に浮かぶ石。生前、叔母は言った。石を枕の下に入れて眠ると月に行ける。でも、ものすごく「悪い夢」を見る、と…(「月景石」)。「満月はいつだって俺たちに言う。命を懸けろと」近未来の日本、人々を震撼させている感染症・月昂に冒された若者。カリスマ暴君の歪んだ願望に運命を翻弄されながら、抗い続けてゆく。愛する女のために(「残月記」)。ダークファンタジー×愛×ディストピア。息を呑む感動のエンターテインメント!(「BOOK」データベースより)
目次:そして月がふりかえる/月景石/残月記
1974年宮城県生まれ。関西大学法学部政治学科卒業。2009年『増大派に告ぐ』で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビュー。12年に刊行した受賞後第一作の『本にだって雄と雌があります』で、第3回Twitter文学賞国内編第1位を獲得するなど熱い支持を得る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
硝子の塔の殺人 知念 実希人
story:ミステリを愛するすべての人へ
当作の完成度は、一斉を風靡したわが「新本格」時代のクライマックスであり、フィナーレを感じさせる。今後このフィールドから、これを超える作が現れることはないだろう。ー島田荘司
ああびっくりした、としか云いようがない。これは僕の、多分に特権的な驚きでもあって、そのぶん戸惑いも禁じえないのだがーー。ともあれ皆様、怪しい「館」にはご用心!ー綾辻行人
500ページ、一気読み!知念実希人の新たな代表作誕生
作家デビュー10年 実業之日本社創業125年 記念作品
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。この館で次々と惨劇が起こる。
館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。さらに、血文字で記された十三年前の事件……。
謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。散りばめられた伏線、読者への挑戦状、圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。著者初の本格ミステリ長編、大本命!
【目次】プロローグ/一日目/二日目/三日目/最終日/エピローグ/『硝子の塔の殺人』刊行に寄せて 島田荘司(出版社より)
1978年、沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒、日本内科学会認定医。2011年、第4回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を『レゾン・デートル』で受賞。12年、同作を改題、『誰がための刃』で作家デビュー(19年『レゾンデートル』として文庫化)。「天久鷹央」シリーズが人気を博し、15年『仮面病棟』が啓文堂文庫大賞を受賞、ベストセラーに。『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』『ムゲンのi(上・下)』で、18年、19年、20年本屋大賞連続ノミネート(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
黒牢城 米澤 穂信
ミステリー作家、米澤穂信の直木賞受賞作品。各ミステリー賞でも6冠を達成しています。
story:本能寺の変より四年前。織田信長に叛旗を翻し有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起こる難事件に翻弄されていた。このままでは城が落ちる。兵や民草の心に巣食う疑念を晴らすため、村重は土牢に捕らえた知将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めるがー。事件の裏には何が潜むのか。乱世を生きる果てに救いはあるか。城という巨大な密室で起きた四つの事件に対峙する、村重と官兵衛、二人の探偵の壮絶な推理戦が歴史を動かす。第166回直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
荒木村重が籠城する有岡城内で人質、自念が死んだ。自決かと思われたその死体にはなんと矢傷があり、その部屋は密室状態だった。村重の家臣たちの動揺を鎮めようと、その時に自念の部屋を見張っていた家臣から証言を取るも誰も犯行を行うことは不可能だと思われた。行き詰った村重は地下の牢に閉じ込めた黒田官兵衛の知恵を借りようとするのだが…
この物語は、織田信長に反旗を翻した村重が籠城した有岡城内で起こったミステリーを描いている。科学的な解決法は皆無なこの時代、探偵小説さながらに官兵衛、村重の冴えわたる推理が展開されます。
また、籠城の緊迫感のなか起こる事件は、人々の心に疑心暗鬼を植え付け、さらに次の事件の引き金に。追い詰められていく有岡城と村重、そして家臣たちとの関係の変化などが複雑に絡み合い、衝撃の結末へ向かって物語が動いていく。
ミステリの精髄と歴史小説の王道、歴史ミステリーの面白さを詰め込んだ一冊。
第12回山田風太郎賞
『このミステリーがすごい! 2022年版』(宝島社)国内編第1位
週刊文春ミステリーベスト10(週刊文春2021年12月9日号)国内部門第1位
「ミステリが読みたい! 2022年版」(ハヤカワミステリマガジン2022年1月号)国内篇第1位
『2022本格ミステリ・ベスト10』(原書房)国内ランキング第1位
「2021年歴史・時代小説ベスト3」(週刊朝日2022年1月14日号)第1位
『この時代小説がすごい! 2022年版』(宝島社)単行本第3位
1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞奨励賞(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞してデビュー。11年に『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、14年には『満願』で第27回山本周五郎賞を受賞。『満願』および15年発表の『王とサーカス』は3つの年間ミステリ・ランキングで1位となり、史上初の2年連続三冠を達成した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
星を掬う 町田 そのこ
story:手に掬い取れるものが、星のようにうつくしく輝きを放つものであればいい。
そのひとつに、わたしとの記憶もあったら、嬉しいな。
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、かつて自分を捨てた母・聖子がいた。他の同居人は、家事を完璧に担う彩子と、聖子を理想の「母」と呼び慕う恵真。
「普通」の家族関係を築けなかった者たちの奇妙な共同生活は、途中、うまくいきかけたものの、聖子の病で終わりを告げーー。
すれ違う母と娘の感動長篇。
〈解説〉夏目浩光(出版社より)
1980(昭和55)年生れ。2016(平成28)年「カメルーンの青い魚」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。翌年、同作を含むデビュー作『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』を刊行。’21(令和3)年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞([BOOK」データベースより)