2023年8月9月に読んだ本

読書日記月別
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2023年8月・9月に読んだ本をまとめました。
人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。

私の満足度・おススメ度でをつけています。

★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!

★★★★  とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!

★★★   読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!

★★    少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。

     う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。

あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。

ハンチバック 市川 沙央

★★★★★

第169回芥川賞受賞作品。

story:重度障害者の井沢釈華は、十畳の自室からあらゆる言葉を送り出す。圧倒的圧力&ユーモアで選考会に衝撃を与えた文学界新人賞受賞作。第169回芥川賞受賞。(「BOOK」データーベースより)

私は神の本を憎んでいた。
TVやラジオ、インターネット、様々なメディアで取り上げられ、話題になったこの言葉は、2023年上半期の芥川賞を受賞したハンチバック』の中の一文。

この物語は障害者の赤裸々な気持ちが綴られており、加えて、著者も難病の「先天性ミオパチー」であることから、社会性のある作品として多くの人の関心を集めています。

ページをめくると冒頭から過激な内容が目に飛び込んできて、驚かされます。主人公のひねくれた思考であったり、斜に構えた態度であったり、他者への軽蔑だったり。人間としての負の部分を包み隠さず、同情を誘うことなくあっけらんと描かれていて、強いメッセージを感じられるでしょう。

障害があるだけで、その中身は健常者と何ら変わることがない。そう気づかせてくれる一冊です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『ハンチバック』市川沙央

市川沙央(イチカワサオウ)
1979年生まれ。早稲田大学人間科学部eスクール人間環境科学科卒業。筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側彎症および人工呼吸器使用・電動車椅子当事者。「ハンチバック」で第128回文學界新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

沈黙 遠藤 周作

★★★★★

世界13か国語に翻訳された遠藤周作の代表作。谷崎潤一郎賞受賞作。2度映画化されています。

story:島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制の厳しい日本に潜入したポルトガル人司祭ロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる……。神の存在、背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の根源的な問題を衝き、〈神の沈黙〉という永遠の主題に切実な問いを投げかける長編。(「BOOK」データベースより)

キリシタン弾圧下の長崎を舞台にした物語主人公のロドリゴやフェレイラは実在した宣教師をモデルにしており、史実に基づいた歴史小説。戦後日本文学の代表作として高く評価されています。

歴史の授業で「禁教令」や「踏み絵」という言葉を学びますが、その実態がどのようなものであったかまではあまり触れません。この小説はキリシタンや宣教師への迫害、過酷な拷問など実際に行われていた歴史が生々しく描かれ、隠れた史実を知ることができます。

物語は宣教師ロドリコの視点で描かれており、貧しい百姓の暮らしや、表情のない村民など虐げられた人々の姿がありありと目に浮かびます。暗い雰囲気がありながらも、情緒的な文章と筆力で興味深く読むことが出来ます。

歴史だけではなく、無宗教とも多宗教とも言われる日本人の宗教観や、神と信仰の意味、人間のエゴイズムなど数多くのテーマもあり、考えさせられます。

日本人なら知っておきたい歴史。ページをめくる手が止まらない古典の傑作です。

遠藤周作(エンドウシュウサク)
1923年東京都生まれ。’48年慶應義塾大学文学部仏文科卒業。’50年カトリック留学生として、戦後日本人初めての渡仏、リヨン大に学ぶ。’55年『白い人』で第33回芥川賞受賞。’58年『海と毒薬』で新潮社文学賞・毎日出版文化賞、’66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞、’80年『侍』で野間文芸賞、’94年『深い河』で毎日芸術賞を受賞。また狐狸庵山人の別号をもち、「ぐうたら」シリーズでユーモア作家としても一世を風靡する。’85年~’89年日本ペンクラブ会長。’95年文化勲章受章。’96年9月、73歳で逝去(「BOOK」データベースより)

悪い夏 染井 為人

★★★★★

横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作品。染井為人のデビュー作。

story:26歳の守は生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知った守は、真相を確かめようと女性の家を訪ねる。しかし、その出会いをきっかけに普通の世界から足を踏み外してーー。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出を目論む地方ヤクザ。加速する負の連鎖が、守を凄絶な悲劇へ叩き堕とす! 第37回横溝ミステリ大賞優秀賞受賞作。(出版社より)

生活保護をテーマにした人間群像劇。
この物語は、セーフティーネットであるはずの生活保護を不正受給する「ろくでなし」の人々しか登場しないノワールサスペンス。彼らのあまりのクズっぷりに嫌悪感を覚えるも、現状から抜け出そうと右往左往する姿は人間味が溢れていて憎み切れません。

ケースワーカーと生活保護受給者、ヤクザが入り乱れて、それぞれのエピソードがつながっていく展開はハラハラ、ワクワクさせられて面白い。一方で、人生の坂道を転がり落ちる様がリアルに描かれ、恐怖と共に何とも言えない無力感も。重いテーマながらもどこか滑稽な彼らの姿に、深刻になり過ぎず没頭できます。

社会の闇を覗き見ているような感覚で読めますが、ひょっとしたら明日は我が身かも。日本の格差社会をリアルに描いた作品です。

染井為人(ソメイタメヒト)
1983年千葉県生まれ。2017年、『悪い夏』で第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

私たちの世代は 瀬尾まいこ

★★★★★

本屋大賞受賞作家・瀬尾まいこの新刊。

story:小学三年生になる頃、今までにない感染症が流行し二人の少女、冴と心晴は不自由を余儀なくされる。母子家庭の冴は中学生になってイジメに遭い、心晴は休校明けに登校するきっかけを失って以来、引きこもりになってしまう。それでも周囲の人々の助けもあり、やがて就職の季節を迎えたー。(「BOOK」データベースより)

新型コロナ感染症が猛威を振るっていたあの時期、息苦しい日常と先行き不透明な未来に皆、孤独と不安を抱えていました。それは我々大人だけでなく、子供たちも同じ思いだったに違いありません。突然変わってしまった生活サイクル、奪われた学校生活と笑い合える友達。あのコロナ禍で子供たちは何を思い、どう感じたのでしょうか。

この物語は、青春を「未曾有の災禍」の中で過ごした少女たちのリアルな姿と、大人へと成長するこれからの未来が描かれています。多感な思春期に社会と接する機会が失われた子供たち。青春の空白は想像以上にストレスを与え、彼らの人生に大きな影響を与えていたのです。彼らが得たもの、失ったもの。

子供たちの目から見た、知られざるコロナ禍の世界。
人間の強さと、ひとの温もりが感じられる物語です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『私たちの世代は』瀬尾まいこ

瀬尾まいこ(セオマイコ)
1974年、大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年、単行本『卵の緒』でデビュー。2005年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞を、2009年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞を受賞。2019年に本屋大賞を受賞した『そして、バトンは渡された』は、2021年に映画化され、文庫版は同年の年間ベストセラーランキング文庫部門(トーハン及び日販)で第一位に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

狂気の山脈にて H・P・ラヴクラフト

★★★

怪奇小説の巨匠ラヴクラフトの作品集。タイトルの『狂気の山脈にて』は「クトゥルフ神話」の長編傑作。

story:ダイヤー率いるミスカトニック大学探検隊は、南極大陸に足を踏み入れた。彼らは禁断の書『ネクロノミコン』の記述と重なる、奇怪きわまる化石を発見する(表題作)。一九〇八年五月十四日、ピーズリー教授の身に異変が起きた。“大いなる種族”との精神の交換がなされたのだ(「時間からの影」)。闇の巨匠ラヴクラフトの神話群より傑作八篇を精選し、新たに訳出。あなたに、眠れぬ夜を約束する。(「BOOK」データベースより)

「クトゥルフ神話」は20世紀のアメリカでラヴクラフトを始め、その作家仲間や友人によって創作された神話であり、ラヴクラフトの作品『クトゥルフの呼び声』が基になっているそうです。邪悪な神や悪魔などが登場するその世界観は、現代でも小説やアニメ、ゲームなど様々な分野の作品のモチーフとなっています。
また、ラヴクラフトは不可解で、得体の知れない恐怖を描いた自らの作品世界を「コズミック・ホラー」と称し、村上春樹やスティーヴン・キングなど多くの作家に影響を与えました。

地下へ降りて、何か恐ろしいものに少しずつ近づいていったり、怪物や悪魔の気配を感じたり。じわじわと恐怖が増していく過程がスリリングで、SF要素もある壮大な設定は怖いモノ見たさの好奇心をくすぐるでしょう。幻想的で怪奇な世界が好みの方に。

ラヴクラフト,H.P.(Lovecraft,Howard Phillips)
1890-1937。アメリカ・ロードアイランド州生れ。病弱で、少年期から幻想小説、怪奇小説に耽溺。30代から「ウィアード・テールズ」などのパルプ雑誌に寄稿。60篇ほどの作品を発表したが、単行本として刊行されたのは『インスマスの影』1冊のみ。不遇のまま生涯を閉じる。友人オーガスト・ダーレスらの尽力もあり、死後にその独自の作風が高く評価される。“クトゥルー神話”の始祖として、多くの作家に影響を与え、世界中の読者に敬愛されている
(「BOOK」データーベースより)

こころ 夏目 漱石

★★★★★

日本文学を代表する文豪・夏目漱石の不朽の名作。『こころ』は「朝日新聞」に連載された長編小説であり、『彼岸過迄』『行人』と合わせて、後期3部作と呼ばれています。

story:親友を裏切って恋人を得たが、親友が自殺したために罪悪感に苦しみ、自らも死を選ぶ孤独な明治の知識人の内面を描いた作品。鎌倉の海岸で出会った“先生”という主人公の不思議な魅力にとりつかれた学生の眼から間接的に主人公が描かれる前半と、後半の主人公の告白体との対照が効果的で、“我執”の主題を抑制された透明な文体で展開した後期三部作の終局をなす秀作である。(「BOOK」データベースより)

特に、信念や価値観といった人間性、人間の心に潜むエゴイズムなど人間心理が手に取るようにわかるくらい丁寧に言葉を尽くして表現されており、その細やかさと心理分析力、破綻のない行動原理とそれに基づいた説得力に卓越した文章力を感じさせます。その上、読みやすく、先が気になるストーリー展開に目が離せません。

心を動かす名言も沢山。
一度は読んでおきたい。日本近代文学における最高傑作と言われている小説です。

夏目漱石(ナツメソウセキ)
1867-1916。江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)に生れる。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、「吾輩は猫である」を発表し大評判となる。翌年には「坊っちゃん」「草枕」など次々と話題作を発表。’07年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50(「BOOK」データベースより)

異常(アノマリー) エルヴェ・ル・テリエ

★★★★

フランスで最も権威のある文学賞のひとつゴンクール賞受賞作品。

story:もし別の道を選んでいたら…良心の呵責に悩みながら、きな臭い製薬会社の顧問弁護士をつとめるアフリカ系アメリカ人のジョアンナ。穏やかな家庭人にして、無数の偽国籍をもつ殺し屋ブレイク。鳴かず飛ばずの15年を経て、突如、私生活まで注目される時の人になったフランスの作家ミゼル…。彼らが乗り合わせたのは、偶然か、誰かの選択か。エールフランス006便がニューヨークに向けて降下をはじめたとき、異常な乱気流に巻きこまれる。約3カ月後、ニューヨーク行きのエールフランス006便。そこには彼らがいた。誰一人欠けることなく、自らの行き先を知ることなく。圧倒的なストーリーテリングと、人生をめぐる深い洞察が国際的な称賛をうける長篇小説。ゴンクール賞受賞、フランスで110万部突破ベスト・スリラー2021(ニューヨーク・タイムズ、パブリッシャーズ・ウィークリー)。(「BOOK」データーベースより)

フランスでは100万部以上売れたベストセラー小説。超人気ゲームクリエイターの小島秀夫監督も2022年のミステリーNo1にあげており、手に取る人も多いようです。
ジャンルはSFに分類されていますが、群像劇形式で人間模様がしっかりと描かれており、文学的要素や哲学的要素も多く、ジャンルの垣根を超えたエンターテイメント作品として楽しめます。

個性豊かな登場人物たちの日常が、ある出来事を境に一変します。現実にはあり得ないと思いつつも、その仕組みの考察は完全には否定できない説得力があり、「もしかしたら今いるこの世界も…」と錯覚してしまうかも。そこから起こるパニックとヒューマンドラマはSF映画のようなドラマティックな展開に。

もし、自身の身に降りかかったら?
それぞれの人間ドラマに共感したり、涙を誘われたり。一冊で沢山の人生を味わえる物語です。

ル・テリエ,エルヴェ(Le Tellier,Herv´e)(ルテリエ,エルヴェ)
1957年、パリ生まれ。小説家、ジャーナリスト、数学者、言語学者など、多方面で活躍する。1992年より、国際的な文学グループ“潜在的文学工房(ウリポ)”のメンバーとして、小説の新しい形式と構造を探求する作品を発表。2019年には4代目の会長に就任する。30ほどの著作を刊行する長いキャリアを経て、63歳のとき、『異常』で一挙に世界的に注目される。2020年、同作はフランスで最高峰の文学賞ゴンクール賞を受賞し、同国内で110万部を突破。40の言語で翻訳が決まっている(「BOOK」データーベースより)

ある閉ざされた雪の山荘で 東野 圭吾

★★★★★

東野圭吾初期のミステリー作品。

story:1度限りの大トリック!劇中の殺人は真実か?俳優志願の男女7人、殺人劇の恐怖の結末。
早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか? 驚愕の終幕が読者を待っている!(「BOOK」データーベースより)

日本を代表する作家、東野圭吾は今や海外でも37もの国と地域で翻訳されるほどの人気作家に。今年、デビュー38年目にして著作100冊目を刊行、全著作の国内累計発行部数1億部突破の偉業を達成しました。

この『ある閉ざされた雪の山荘で』はそんな数ある東野作品の中でも初期の作品。
異色な設定のクローズドサークルや、何重にも張り巡らされた仕掛けが面白い。外部と遮断された閉鎖空間で時間を追うごとに減っていくメンバー。状況的にも精神的にも追い込まれていく過程は新本格ミステリーならではのドキドキ感が味わえます。作品解説ではアガサクリスティ『そして誰もいなくなった』や綾行人『十角館の殺人』を意識したような作品とも書かれており、完成された作品世界へと読者を誘います。

2024年1月に映画公開予定のサスペンス・エンターテイメント。
読みやすく、謎解きを楽しめるミステリーです。

東野圭吾(ヒガシノケイゴ)
1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学工学部卒業。85年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、12年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で第7回中央公論文芸賞、13年『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、14年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。19年に野間出版文化賞を受賞(「BOOK」データーベースより)

西部戦線異状なし レマルク

★★★★★

ドイツの作家・レマルクが描いた第一次世界大戦の西部戦線。ナチスの迫害を受け、一時は焚書の対象にもなりました。

story:1918年夏、焼け爛れた戦場には砲弾、毒ガス、戦車、疾病がたけり狂い、苦熱にうめく兵士が全戦場を埋め尽す中にあって、冷然たる軍司令部の報告はただ「西部戦線異状なし、報告すべき件なし」。自己の体験をもとに第一次大戦における一兵士ボイメルとその戦友たちの愛と死を描いた本書は、人類がはじめて直面した大量殺戮の前で戦慄する様を、リアルに文学にとどめたものとして、世界的反響を呼び起こした。(「BOOK」データベースより)

ドイツ軍の志願兵パウル・ボイメルの視点で描いた戦争文学。そういう風に書くと、悲惨な戦争の物語だと解釈されるでしょう。勿論そうなのですが、違った角度から見れば、これは戦場で悩み成長し、仲間と共に日々を生き抜いた青年・パウルの青春の物語とも受け取れます。

ページをめくると牛肉、白いんげんの煮たのなど美味しそうな料理を仲間と楽しく食べ、青空の下、開放的な気分で友人と語り合うシーンから始まります。それ等の様子がとても楽しそうに描かれている反面、前線でのシーンは淡々と表現されているのが印象的。砲弾が降ってきたり、毒ガスがまかれたりと想像を絶する惨状に直面しながらも、そこに恐怖や絶望などの感情はなく、ただ死があるだけという戦争のリアルが伝わってきます。

何の腹の足しにもならないひもじい食事から、手作り料理の御馳走まで。物語は食べるシーンがとても多く、死と隣り合わせの戦場で生命の力強さと戦争の残酷さがより浮き彫りに。
一度は読んで欲しい名作です。

レマルク(Remarque,Erich Maria)
1898-1970。ドイツ生まれ。1916年、第一次世界大戦に出征し、戦後は小学校教員やジャーナリストなどの職に就きながら、小説を執筆する。’29年、『西部戦線異状なし』を発表し、一躍世界的な人気作家となる。’32年、反戦作家としてナチスの迫害を受け、スイスに移る。翌年国籍を剥奪され、著書は焚書の処分を受ける。’39年アメリカに移住)(「BOOK」データベースより)

近畿地方のある場所について 背筋

★★★★★

web小説サイト「カクヨム」から人気に火が付いたホラー小説。

story:近畿地方のある場所にまつわる怪談を集めるうちに、恐ろしい事実が浮かび上がってきました。(「BOOK」データベースより)

「怖すぎる」「鳥肌が止まらない」とネットで話題になったホラー小説。書籍化されてもその勢いは止まらず、様々なランキングでも上位に。

この作品を多くの人が「怖い」と感じる一番の理由は、モキュメンタリーと呼ばれる手法を用いて物語を構成している事。怪談話のレポートや、心霊体験をした人へのインタビュー、それらと関わりのありそうなネットへの書き込みなどドキュメンタリー形式で断片的に入ってくる情報がとてもリアルで、現実に起こっているかのような恐怖の疑似体験を味わうことに。

また、バラバラに見えたエピソードが次第に繋がりを見せて、ある事実を浮かび上がらせていくストーリーはミステリーのような面白さも感じられます。

怖いけれど、続きが気になって止められない。ゾクゾクが止まらない一冊です。
是非、最後まで読んで真実を見つけてください。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『近畿地方のある場所について』背筋

著者:背筋
情報はありません。

図南の翼 十二国記 小野 不由美

★★★★★

ホラー、ミステリー、ファンタジーと様々なジャンルで名作を世に送り出している著者・小野不由美の代表作。この『十二国記』シリーズで第5回吉川英治文庫賞を受賞。『図南の翼』は『十二国記』シリーズのエピソード6に当たります。

story:この国の王になるのは、あたし! 恭国(きようこく)は先王が斃(たお)れて27年、王不在のまま治安は乱れ、妖魔までも徘徊(はいかい)していた。首都連檣(れんしよう)に住む少女珠晶(しゆしよう)は豪商の父のもと、なに不自由ない暮らしと教育を与えられ、闊達な娘に育つ。だが、混迷深まる国を憂えた珠晶はついに決断する。「大人が行かないのなら、あたしが蓬山(ほうざん)を目指す」と──12歳の少女は、神獣麒麟(きりん)によって、王として選ばれるのか。(出版社より)

十二国の世界では、選ばれた王がそれぞれの国を治めるのが本来の国のあるべき姿。王が不在の恭国は村が廃れ、人々の暮らしも心も荒んでいました。そんな国に生まれた12歳の少女・珠晶は恭国を救う新たな王として選ばれるために、蓬山へ旅立つのですが…。

この物語の主人公・珠晶は、大変頭の良い少女。社会の仕組みをきちんと理解し、その上で善悪の区別もつきますが、少し自信過剰な所も。大人への不信感や、向こう見ずな行動など子供らしい可愛さと危うさがとてもリアルに描かれていてハラハラします。珠晶の潔癖な考え方からは、少女の人生経験の少なさと、様々な経験から保身に身を固めた大人の狡さ、怠慢さとの両方が見え隠れします。

人が大人になっていくにつれて得るものと失うものがリアルに表現され、子供の眩しさに大人は身につまされるでしょう。
心に刺さるリアルファンタジー。学生さんを始め、多くの人の人に読んで欲しい物語です。

小野不由美(オノフユミ)
12月24日、大分県中津市生まれ。京都大学推理小説研究会に所属し、小説の作法を学ぶ。1988年作家デビュー。「悪霊」シリーズで人気を得る。13年『残穢』が第26回山本周五郎賞、20年「十二国記」シリーズが第5回吉川英治文庫賞を受賞(「BOOK」データーベースより)

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