ののはな通信 三浦しをん

三浦しをん
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女性同士のHはあんまり想像つかないのだけれど・・・BLではなくGL(百合)って言うらしいです。

小学生の頃、クラスの女子は皆交換日記をしていて、他にも「柄の折り紙」とか「柄付き付きティッシュ」とかを交換し合っていました。とにかく「かわいい」と思うものをコレクションするのが楽しかったのを覚えています。

その頃は、友達同士素直に、あれが好き、これが好きと自分の事をオープンに話すので、友達の趣味がだんだん似てくるようになり、同じ漫画を見たり、好きな登場人物を教えあったり、そして「それは2人の秘密ね」などと言い合ったりしました。もちろん恋愛感情ではなく、「秘密」という大人っぽい言葉への憧れであって、相手の特別になりたいといういわゆる独占欲だとか、嫉妬とかの感情の芽生えだった・・・のでしょうか?

2人の主人公の『のの』と『はな』もそんな多感な年頃の、思春期のやりとりから始まったように思います。

Story
ミッション系のお嬢様学校に通うののとはなは、気の合う親友同士だ。庶民的な家庭に育ち、頭脳明晰、クールで辛辣なののと、外交官の家に生まれ、天真爛漫で甘え上手なはな。自分の気持ちを恋愛感情だと自覚したののは告白する。だが、不器用に始まった2人の恋は、ある裏切りによって崩れ始めて…。一生に一度の運命の恋が、その後の人生を導いてくれる。書簡の往復だけで緻密に紡ぎだされた、大河小説の最高峰。

男子は嫌い!女子の方がいい!は多くの女子が経験する感情だと思うのですが、どちらかというとこの2人は女子校だったので、女子しかいない(男性教師は最悪だった)という環境が尚更そうさせたのかも。

少女時代の手紙がね、ポエム調だったり、少女の残酷さが表れている文章だったり、いろいろな事件についても深刻ぶっているけど、ちょっと楽しんでるの?みたいなの。本当に上手で、わかる!そんな感じ!と懐かしくなりました。(男の人はこういう思いをずーっと述べている文章は苦手かもしれないけれども、女子はこんな感じの手紙をよく書いていたと思う。)

『はな』から『のの』への気持ちってどちらかというと、自分にはない『のの』の頭の良さであったり、冷静さであったり、ちょっと大人っぽいところとかそういうもの(女性が男性に惚れる長所ですよね?)であり、感情の起伏が結構激しい子だなと。『はな』の天真爛漫さが文章からもよく伝わってきました。『のの』から『はな』の場合は、男性が女性にいいなと思うそれと同じだと思っています。

文章が手紙形式なので、上から下までびっしりのボリュームのある文章量でしたが、LINEがない時代からの書く習慣でもあり、相手への溢れる思いが伝わってきます。
最後は、えっ!『はな』どうしてそういう考えに!?という・・・まぁ『はな』らしいといえばらしいのかな?

手紙のやり取りが結局は自分と向き合う時間にもなったんだろうな。恋人であり、友人であり、家族であり、そして人生の戦友でもあった2人の心の記録なのです。

著者:三浦しをん
1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』(草思社)でデビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』(文藝春秋)で直木賞、12年『舟を編む』(光文社)で2012年本屋大賞、15年『あの家に暮らす四人の女』(中央公論新社)で織田作之助賞。19年には『ののはな通信』で島清恋愛文学賞、河合隼雄物語賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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