読書ブログ2023年1月 2月に読んだ本

読書日記月別
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2023年1月・2月に読んだ本をまとめました。
基本、人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。

今回から私の満足度、おススメ度でをつけています。

★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!

★★★★  とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!

★★★   読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!

★★    少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。

     う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。

あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。

しろがねの葉 千早 茜

★★★★★

数々の文学賞を受賞している千早茜の初の歴史小説。直木賞受賞作品。

戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と秘められた鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は意気阻喪し、庇護者を失ったウメは、欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されたー。繰り返し訪れる愛する者との別れ、それでも彼女は運命に抗い続ける。(「BOOK」データーベースより)

この物語の主人公・ウメは強く賢く好奇心旺盛な少女。彼女の人生を通して女性の生き方や、鉱山で働く男たちの過酷な運命と歴史が描かれています。
坑道の底なしの暗さや恐ろしさ。人間味あふれる銀堀やその家族との生活や交流。運命を受け入れる人々のたくましさ。ウメの恋物語。波乱万丈のストーリーはエンターテイメント溢れる面白さです。

じっくりと味わえる文章と、史実を巧みに織り交ぜたストーリー。
ページをめくる手が止まらなくなる歴史小説です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『しろがねの葉』千早茜
千早茜(チハヤアカネ)
1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で第二十一回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。同作は09年に第三十七回泉鏡花文学賞を受賞した。13年『あとかた』で第二十回島清恋愛文学賞を、21年『透明な夜の香り』で第六回渡辺淳一文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

地図と拳 小川 哲

★★★★★

数々の文学賞を受賞している小川哲の長編小説。直木賞受賞作品。

「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野…。奉天の東にある“李家鎮”へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。(「BOOK」データベースより)

日本、清、ロシアそれぞれの事情を抱える複数の人物の視点で描かれた『地図と拳』は、絡み合った思惑が交差するスリリングで壮大なスケールのSF歴史小説。義和団や抗日ゲリラの事件、満州国の都市計画に関わる人々の姿などが史実に基づいて描かれ、その時代の満州の張り詰めた空気をリアルに感じられるでしょう。満州の未来を信じて戦う姿に、この国に理想を夢見た男のロマンが詰まっています。

「なぜ過去の人たちは戦争をしたのか」
膨大な資料をもとに描かれた『地図と拳』は歴史小説でもあり、著者の「なぜ」を追求した戦争小説でもあります。
歴史のあらましを知らなくても物語を楽しむことができまるので、戦争を知らない世代にも読んで欲しい作品です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『地図と拳』小川哲

小川哲(オガワサトシ)
1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年に『ユートロニカのこちら側』で第三回ハヤカワSFコンテスト“大賞”を受賞しデビュー。『ゲームの王国』(2017年)が第三八回日本SF大賞、第三一回山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

この世の喜びよ 井戸川 射子

★★★★

詩人の顔も持つ井戸川射子の芥川賞受賞作品。
『この世の喜びよ』は、ショッピングセンターの喪服売り場で働く女性の心情を描いた物語。そこで出会う人々とのささやかな交流を通して湧き上がる「母」や「女性」としての生々しい感情を描いています。

この小説の一番の特徴は、主人公の女性を「あなた」と表現する手法が使われていること。これは二人称小説と呼ばれる珍しい書き方です。語り手が「あなた」と呼びかけることにより、読者自身が呼びかけられているような錯覚を起こさせます。主人公と同化して、心情が流れ込んでくるような感覚を味わうことでしょう。

また、主人公が相手との対話の中で、かつての自分が見た光景やその時の気持ちを思い出していく過程が丁寧に描かれています。一文一文に繊細さが感じられ、内面が浮き出る言葉はまるで詩のよう。話し言葉の緩急を表現するように言葉を区切ったり、感情を表すために句読点を置いていると思われる文章もあり、一つ一つの言葉が力強く、独特な文章のリズムが感じられます。

著者の感受性の強い表現は詩人なればこそ紡げる文章。
「母」のノスタルジーを感じられ、心に沁み込んでくる言葉が沢山ありました。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『この世の喜びよ』井戸川射子
井戸川射子(イドガワイコ)
1987年生まれ。関西学院大学社会学部卒業。2018年、第一詩集『する、されるユートピア』を私家版にて発行。2019年、同詩集にて第24回中原中也賞受賞。2021年、小説集『ここはとても速い川』で第43回野間文芸新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

荒地の家族 佐藤 厚志

★★★★★

現役書店員でもある佐藤厚志の芥川賞受賞作品。
著者は地元宮城で東日本大震災を経験。日常を小説にするときに、風景として震災が入ってくるのは自然なことだと語っています。

あの災厄から十年余り。しかし、その土地の住民にとって、あの災厄の爪痕はいつまでも消えない傷として心にわだかまりを残しています。
植木職人の坂井祐治は一人親方として仕事に精を出す毎日ですが、心の内には後悔や不安を抱えていました。家族のために苦しい日々を乗り越えようとしますが、なかなかうまくはいきません。そんな時、偶然に再会した友人の変わり様を目にして…

この物語に描かれているのは震災後のそこで暮らす人々の風景。とは言え、登場人物の抱えている問題に震災が起因しているわけではありません。ただ、ふとした時に忍び寄る無力感や停滞感を感じる描写から被災者の渇きがリアルに伝わってきます。心の奥に沈殿している「しこり」は彼らと同じ目線でその風景を見て初めてわかるもので、ニュースや新聞などが伝える復興とはかけ離れたものでした。

私達が知っておくべきことは何なのか。
ニュースや新聞などではわからない「心の復興」を描いた物語です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『荒地の家族』佐藤厚志
佐藤厚志(サトウアツシ)
1982年宮城県仙台市生まれ。東北学院大学文学部英文学科卒業。仙台市在住、丸善 仙台アエル店勤務。2017年第49回新潮新人賞を「蛇沼」で受賞。2020年第3回仙台短編文学賞大賞を「境界の円居(まどい)」で受賞。2021年「象の皮膚」が第34回三島由紀夫賞候補。2023年「荒地の家族」で第168回芥川龍之介賞を受賞。これまでの著作に『象の皮膚』(新潮社刊)がある。(新潮社HP 著者プロフィールより)

君のクイズ 小川哲

★★★★★

直木賞作家・小川哲のクイズ・エンターティメント小説。本屋大賞ノミネート作品。

生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央。次の問題で優勝者が決まるという局面で対戦相手・本庄絆が、問題が読まれる前に早押しボタンを押してしまします。勝負あったと思われた瞬間、本庄が正解を答え優勝を果たすという不可解な事態に。この結果ををいぶかしんだ三島玲央は 真相を解明しようと彼について調べ始めますが…

「いったい彼はなぜ、正答できたのか?」
問題が読まれる前に正解を答えることができるのかという不可解なミステリー。どう考えても不正が行われたとしか考えられない事態ですね。見過ごすことのできないこの問題に三島はクイズプレーヤ―らしく論理的にこの出来事を整理していきます。その過程での三島の思考の描写はクイズプレーヤーの頭の中を覗き観ているようで面白い。クイズプレーヤ―は何を考え、どんな道筋で答えを導き出すのか。なぜ、あんなに早く正解に辿り着くことが出来るのか。
また、問題に隠された仕掛けであったり、プレイヤーの駆け引きや心理であったり、論理的な知識の構築であったり。クイズの奥深さとその裏に隠された彼らの想いも見えてきます。

ロジカルシンキングで展開される謎解きは全くスキがなく鮮やか。思わず「なるほど!!」とうなってしまいます。
楽しみながら「思考力」も鍛えられるクイズの奥深さを味わえる一冊です。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ読書ブログ『君のクイズ』小川哲

犬を盗む 佐藤 青南

★★★★

ミステリー作家・佐藤青南の記念すべき10周年の作品。

資産家の老女が何者かに殺害された。刑事たちは事件を追う内に老女が以前チワワを飼っていたことを耳にする。その殺人事件と同時期にチワワを飼いだした1人の正体不明の男の出現。事件の1年前に死んだはずの老女の犬と謎の男が飼っている犬。そこに何か接点はあるのか。それぞれの思惑が絡み合う、愛犬家ミステリー。

犬の散歩中に道端で井戸端会議をしている人たちを見かけますね。愛犬家同志、可愛いペットの話に花を咲かせているであろう微笑ましい光景ですが、そういったサークルであっても人間関係は複雑のようです。
この物語は、犬を飼ったことのある人なら共感できるあるあるが沢山。かわいい犬視点のエピソードもあり、犬好きにはたまらないお話ですが、多頭飼いや保護犬など社会問題も垣間見え、ペットの在り方と自分本位な人間への問いかけも。

犬への愛がとんでもない方向へ。
可愛いワンちゃんが事件に巻き込まれるミステリー。しかし、可愛いだけじゃない。登場人物の誰もが怪しく、謎解きも楽しめます。日頃本をあまり読まれない方にもお勧め。テンポよく読みやすい文章で気軽にミステリーを楽しめる一冊です。

佐藤青南(サトウセイナン)
1975年長崎生まれ。「ある少女にまつわる殺人の告白」で第9回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、2011年同作でデビュー。2016年『白バイガール』で第2回神奈川本大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

魔王の島 ジェローム・ルブリ

★★★★★

フランスのコニャック・ミステリー大賞・リーヴル・ド・ポッシュ読者大賞受賞作品。
異常心理の人物の犯罪を描くサイコミステリー。心理学的、精神医学的な手法でプロファイリングを行う過程は謎解きの楽しさもありながら、狂気の世界へ足を踏み入れるスリリングな体験もできる物語。

新聞社で働いているサンドリーヌは、一度も会ったことのない祖母の死をきっかけに、生前暮らしていたというノルマンディー沖の孤島を訪れることに。しかし、その島は昔大勢の子供を水難事故で亡くしたといういわくつきの島でした。「囚われの身だから」と謎めいた言葉をつぶやく島の住人はサンドリーヌに「いつまでもこの島にいると出られなくなる」と一刻も早く島を去るように助言しますが、船は一週間後にしか来ないと言われ…

ゲーテの詩をなぞった物語は、何処からともなく聞こえてくる「魔王」の声、ふと忍び寄ってくる気配などホラーの要素もたっぷり。島で行われていたというナチスの実験や開かずの扉など不安と共に謎も膨んでいきます。張り巡らされる伏線に何度も騙されながらもページをめくる手が止まらなくなるでしょう。

翻訳小説ながらとても読みやすく、二転三転とひっくり返るこの驚きは新鮮。真相に近づくにつれ、違和感の正体が明らかに。
本国で評判の高いフランスのミステリー、挑戦してみてはいかがでしょうか。

ルブリ,ジェローム(Loubry,J´er^ome)
1976年、フランス生まれ。外食業界で働くかたわら作家を志し、2017年に長編小説Les chiens de D´etroitでデビューを果たす。『魔王の島』は第三長編で、コニャック・ミステリー・フェスティバルで授与されるコニャック・ミステリー大賞の受賞作となった(「BOOK」データーベースより)

魔性の子 十二国記 小野 不由美

★★★★★

ホラー、ミステリー、ファンタジーと様々なジャンルで名作を世に送り出している著者・小野不由美の代表作。この『十二国記』シリーズで第5回吉川英治文庫賞を受賞。また、『魔性の子』は『十二国記』シリーズのエピソード0、プロローグにあたります。

卒業校に教育実習生としてやってきた広瀬はある不穏な噂を耳にした。神隠しに遭ったと噂される男子高生の身の回りで良くないことが次々と起こっているというのだ。彼に関われば命だって危うくなる。広瀬は噂の的である異質な雰囲気の少年・高里が気になって仕方がないのだが…。

『十二国記』はファンタジー小説ながら、この『魔性の子』のエピソードはホラー色の強い物語。断片的に挟み込まれる幽霊話や、体の一部分だけ見える描写に背筋が寒くなります。
一方で広瀬と高里の関係は、直感的な深い縁を感じられ、まるでソウルメイトのよう。頼もしいやら、怪しいやらで応援したくなります。

報いを受けた人々の悲惨な出来事、残酷な展開も多く、様々な感情が湧いてきますが、そんな読者の感情すら見越したセリフが印象深い。

物語はプロローグとして独立しており、この一冊のみでも楽しめるので、シリーズものに躊躇している方にもおすすめ。でも、この物語の面白さを知れば、きっと続きを読みたくなるでしょう。

小野不由美(オノフユミ)
12月24日、大分県中津市生まれ。京都大学推理小説研究会に所属し、小説の作法を学ぶ。1988年作家デビュー。「悪霊」シリーズで人気を得る。13年『残穢』が第26回山本周五郎賞、20年「十二国記」シリーズが第5回吉川英治文庫賞を受賞(「BOOK」データーベースより)

魔王 伊坂 幸太郎

★★★★★

数々の文学賞を受賞し、映像化作品も多数。言わずと知れた人気作家・伊坂幸太郎『魔王』の新装版。

「偉そうに座ってんじゃねえぞ、てめえは王様かっつうの。ばーか」
乾燥した果物のような皺だらけの老人が、電車の座席でふんぞり返っている若者に向かって突然威勢の良い台詞を大声で発した。
この出来事に端を発し、自身が念じた言葉を人に言わせる能力があることに気付いた普通のサラリーマン安藤。彼は「腹話術」と名付けたその能力を使ってある計画を実行しようとしますが…

超能力を手に入れた主人公が活躍するファンタジー小説かと思わせる始まりですね。勿論、そういう要素も含んでいますが、この『魔王』は日常に潜むファシズムや、その流れに感化される人々の姿を描いたエンターテイメント性溢れる物語。

無関心や言葉の表面だけを捉え深く考えない人々。思考停止ぎみの日本社会はこの先どこへ向かうのか。既視感のある思想の描写や思い当たるような感情は我々の未来を予言しているかのようでドキッとします。

伊坂幸太郎らしい心に残る言葉や、皮肉めいた愉快なセリフも満載で楽しめる。
考えさせられる奥の深い作品でありながら軽快なテンポで読みやすく面白い物語です。

伊坂幸太郎(イサカコウタロウ)
1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。’04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。’08年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞と第21回山本周五郎賞、’20年『逆ソクラテス』で第33回柴田錬三郎賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

ネコ・ロマンチスム 吉行 淳之介

★★★

目次:愛撫(梶井基次郎)/恋人同士(倉橋由美子)/海のスフィンクス(金井美恵子)/ネコ(星新一)/猫の事務所(宮沢賢治)/猫貸し屋(別役実)/猫の首(小松左京)/お富の貞操(芥川龍之介)/ドリス(谷崎潤一郎)/猫(吉田知子)/猫町(萩原朔太郎)/猫踏んじゃった(吉行淳之介)/ネコロマンチシズム(内田百間)(「BOOK」データベースより)

この『ネコ・ロマンチスム』は長らく絶版だった原本に内田百間の『ネコロマンチシズム』を増補したもの。原本は芥川賞作家・吉行淳之介が編者として作ったアンソロジー(同タイトル)。

ネコと言えば可愛く愛らしいイメージ。このアンソロジーもさぞかし魅力的な猫たちの物語に違いない。と思いきや、想像とは全く異なる猫の姿が次から次へと現れます。癒しを求めてこの小説を手に取った読者は驚くかもしれません。ネコの慣用句に不吉なものが多いように、これらの物語に多く描かれているのは私たちが持つネコの別のイメージの方なのです。

とは言え、文豪の表現は巧み。芥川龍之介「お富の貞操」はネコの持つ両方の面をほんのわずかな描写で効果的に描き、物語の情景に深みを持たせています。星新一「ネコ」は著者らしいブラックユーモアでおかしくも少し怖いオチがクセになります。また、内田百間「ネコロマンチシズム」は唯一癒されるネコ好きのためのホッとする作品。

その他、性を主題にした作品もあり、一味違った猫のアンソロジーとなっています。
文豪の作品に興味がある方や、予測不可能な作品を読みたい方に。

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