2024年3月・4月に読んだ本をまとめました。
人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。
私の満足度・おススメ度で★をつけています。
★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!
★★★★ とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!
★★★ 読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!
★★ 少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。
★ う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。
あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。
ずっとお城で暮らしてる シャーリ・ジャクソン
★★★★★
恐怖小説で知られるシャーリィ・ジャクスンの代表作。文庫版で待望の復刊です。
story:あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。ほかの家族が殺されたこの屋敷で、姉のコニーと暮らしている…。悪意に満ちた外界に背を向け、空想が彩る閉じた世界で過ごす幸せな日々。しかし従兄チャールズの来訪が、美しく病んだ世界に大きな変化をもたらそうとしていた。“魔女”と呼ばれた女流作家が、超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作。(「BOOK」データベースより)
この物語の主人公・通称メリキャットは村一番の資産家のお屋敷で暮らす女の子。一見、彼女とその家族は貴族のような心持で、穏やかな暮らしをしているように見えます。しかし、彼女の独白から漂う違和感の数々。やがて、このお城のようなお屋敷で起こった忌まわしい事件が明らかになって行き…。
冒頭からゴシックホラーを思わせる不穏さと、謎めいた物語に心を掴まれます。どこか息苦しく、現実感がぼやけていく感覚は魔女と呼ばれた著者ならではの世界観。霞んだ写真が鮮明になってくるように真実がくっきりと浮かび上がってくる展開にドキドキ。違和感の正体にゾッとするでしょう。
美しい風景に隠された悪意が恐ろしい。
不快感がクセになるホラーミステリーです。
1916年、アメリカ・サンフランシスコ生まれ。シラキュース大学卒業。1940年、評論家のスタンリー・エドガー・ハイマンと結婚。1965年没(「BOOK」データベースより)
ジーヴズの事件簿(才智縦横の巻) P・G・ウッドハウス
★★★★★
本国イギリスでは名探偵シャーロックホームズと並び称される程人気のある「ジーヴズ」シリーズ。皇后美智子さまもご愛蔵されているとのことで話題になりました。
story:20世紀初頭のロンドン。気はいいが少しおつむのゆるい金持ち青年バーティには、厄介事が盛りだくさん。親友ビンゴには浮かれた恋の片棒を担がされ、アガサ叔母は次々面倒な縁談を持ってくる。だがバーティには嫌みなほど優秀な執事がついていた。どんな難帯もそつなく解決する彼の名は、ジーヴズ。世界的ユーモア小説の傑作選。(「BOOK」データベースより)
富裕層の貴族とお屋敷の一切を取り仕切る執事。この小説は、古き良き時代のイングランドの上流階級の日常を、皮肉を交えて描いたユーモア小説。日本ではあまりなじみがないようですが、著者・ウッドハウスは20世紀を代表する世界的なユーモア作家であり、英国圏ではジーヴズを知らぬものはいないと言うくらい有名なのだとか。
機略に富んだ英国執事・ジーヴズと、憎めない貴族ウースターのやり取りが絶妙でクスリと笑える。様々な珍事に呆れかえり、執事に掌の上で転がされている貴族の姿にニヤニヤ。つまらない事で見栄を張る貴族の姿も滑稽に映ります。コントのような面白さがある彼らのやり取りは、すったもんだの末、手際の良過ぎる執事の活躍によって大団円を迎える。
噛み合ってるのか、合ってないのか。
笑い、癒されるイギリス版ジョークを堪能できる短編集です。
1881年イギリス・ギルフォード生まれ。ダリッジ・カレッジ卒業後、銀行勤務を経て20代で専業作家に。ユーモア小説の書き手として知られ、天才執事ジーヴズのシリーズに代表される著書は世界中で読み継がれている(「BOOK」データベースより)
母という呪縛 娘という牢獄 齊藤 彩
★★★★★
ニュースで大々的に取り上げられた「滋賀医科大学生母親殺害事件」の実録犯罪ルポルタージュ。
story:2018年3月、滋賀・守山市野洲川の河川敷で、両手、両足、頭部を切断された体幹部だけの遺体が発見された。遺体は激しく腐敗しており、人間のものか動物のものかさえ判別が難しかったが、その後の捜査で、近所に住む58歳の女性のものと判明する。女性は20年以上前に夫と別居し、31歳の娘と二人暮らしで、進学校出身の娘は医学部合格を目指して9年間もの浪人生活を経験していた。警察は6月、死体遺棄容疑で娘を逮捕する。いったい二人の間に何があったのかー。司法記者出身のライターが、獄中の娘と交わした膨大な量の往復書簡をもとにつづる、渾身のノンフィクション。(「BOOK」データベースより)
医学部受験を繰り返し、9年もの間浪人生活を余儀なくされた大学生による母親殺害事件。世間を震撼させた事件のため、記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。毒親、教育虐待、DV、モラルハラスメント。家庭内で起こりうる虐待の数々を母親から受けていた被告のあかり(仮名)。懺悔し、罪を償うことを決めた被告の協力のもと、事件の全貌を記したこのノンフィクションは、筆舌に尽くし難い環境で育った彼女の失われた青春が詳細に描かれています。
社会から閉ざされた環境で、共依存関係に陥った母と娘。病的なまでに医学部に固執する母親が、娘の人格を無視し破壊し、自身をも蝕んでいく過程や、自由の一切を奪われ、囚人のような生活を送る娘の姿に、この世の地獄を見ました。どこかで挽回できるチャンスはなかったのか。SOSを求められなかったのか。事件報道の際に感じた疑問は、あかりの立場で読んでみると何処にも逃げ場がないように感じられます。
国連から勧告が出るほどに子供の人権が危機的状況にある日本。現代日本の社会問題、教育虐待の壮絶さを知る一冊です。
1995年東京生まれ。2018年3月北海道大学理学部地球惑星科学科卒業後、共同通信社入社。新潟支局を経て、大阪支社編集局社会部で司法担当記者。2021年末退職。本作がはじめての著作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
解錠師 スティーヴ・ハミルトン
★★★★★
エドガー賞など世界のミステリ賞を獲得した話題作。日本では、2013年度『このミステリーがすごい! 海外篇』1位。
story:八歳の時にある出来事から言葉を失ってしまったマイク。だが彼には才能があった。絵を描くこと、そしてどんな錠も開くことが出来る才能だ。孤独な彼は錠前を友に成長する。やがて高校生となったある日、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり、芸術的腕前を持つ解錠師に…非情な犯罪の世界に生きる少年の光と影を描き、MWA賞最優秀長篇賞、CWA賞スティール・ダガー賞など世界のミステリ賞を獲得した話題作。このミステリーがすごい!2013年版海外編。2012年週刊文春ミステリーベスト10海外部門第1位。(「BOOK」データベースより)
犯罪者の視点で語られる犯罪小説、ケイパー・ストーリー の醍醐味は何と言っても追われる者のスリルを味わえること。この物語の主人公は、どんな金庫も攻略する天才マイク。彼は犯罪に手を染める少年だが、悪党すらも一目置くその手腕を発揮する姿はかっこ良く、一本筋の通った性格が孤高のヒーローのようにも映ります。好感が持てるマイクに感情移入してしまうのは仕方のない事で、タイムリミットのせまる金庫破りのシーンはハラハラが止まりません。
また、マイクのトラウマや裏社会に足を踏み入れた理由など、過去を行ったり来たりしながら見えてくる彼の真実はアメリカン・ハーボイルドの面白さも感じられます。
言葉を発することが出来ないマイクだからこそ、生き生きと描かれる本音。彼の青春と共にアメリカにおける少年犯罪の実情も見えてくる。
スリリングな展開に目が離せないクライムサスペンスを堪能できる物語。
1961年、ミシガン州デトロイト生まれ。ミシガン大学卒。IBMに勤務するかたわら書いたという1998年のデビュー作『氷の闇を越えて』では、ハードボイルド小説の新たな担い手として高く評価され、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞、アメリカ私立探偵作家クラブ(PWA)賞の最優秀新人賞などを受賞。2009年の『解錠師』では、MWA賞最優秀長篇賞、英国推理作家協会(CWA)賞スティール・ダガー賞、バリー賞、全米図書館協会のアレックス賞に輝いた。ニューヨーク州在住(「BOOK」データーベースより)
リラの花咲くけものみち 藤岡 陽子
★★★★★
看護師と小説家の2つの顔を持つ藤岡陽子の”獣”医学小説。吉川英治文学新人賞、未来屋小説大賞受賞作品。
story:幼い頃に母を亡くし、父が再婚した継母とうまくいかず不登校になった岸本聡里。愛犬だけが心の支えだった聡里は、祖母に引き取られペットたちと暮らすうち、獣医師を志すように。北農大学獣医学類に入学すると、慣れない寮生活が始まった。面倒見のよい先輩、気難しいルームメイト、志をともにする同級生らに囲まれ、学業や動物病院でのアルバイトに奮闘する日々。伴侶動物の専門医を目指していた聡里だが、馬や牛など経済動物の医師のあり方を目の当たりにし、「生きること」について考えさせられることにー北海道の地で、自らの人生を変えてゆく少女の姿を描いた感動作!(「BOOK」データベースより)
「獣医師を目指す少女の成長を描く感動的物語」と聞くと、愛くるしい動物たちとの心温まる交流や癒されるエピソードなどを想像しますが、そう思って手に取られた方は少し驚くかもしれません。牛舎の清掃から始まり、馬の難産シーンや治験のエピソードなど、実際にそれらの仕事に携わっている方々のリアルを目の当たりにするからです。これは、動物に対する愛情とショッキングな出来事の間で揺れ動く主人公・聡里の視点で、公にはあまり知られていない獣医師の真の姿を見ることができる物語。
北海道の美しく厳しい大自然を舞台に登場する可愛い動物たち。過酷な大学生活と精神的にキツい実習。聡里が悩み成長していく姿にエールを送りながら読んでいるつもりが、いつの間にかパワーを貰っている自身に気付くはず。
人の強さ想いの暖かさに勇気づけられ、動物に助けられることも。
頑張る人の背中を押してくれる一冊です。
1971年、京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。新聞社勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。慈恵看護専門学校卒業。2009年『いつまでも白い羽根』(光文社)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです))(「BOOK」データベースより)
星の王子さま アントアーヌ・ド・サン・テグジュペリ
★★★★★
フランスの小説家、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの代表作。世界累計発行部数が2億万部以上の言わずと知れた名作。
story:砂漠に飛行機で不時着した「僕」が出会った男の子。それは、小さな小さな自分の星を後にして、いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった…。一度読んだら必ず宝物にしたくなる、この宝石のような物語は、刊行後六十年以上たった今も、世界中でみんなの心をつかんで離さない。最も愛らしく毅然とした王子さまを、優しい日本語でよみがえらせた、新訳。([BOOK」データベースより)
絵本から児童書、小説まで。子供から大人まで幅広い世代が楽しめる『星の王子さま』は世界300以上の言語で翻訳されている永遠の名作。作者自身による愛らしい挿絵も沢山あり、童話のように楽しめますが、暗喩的な表現も多く、大人が読むための物語とも言えます。
「おとなはだれだって、はじめはこどもだったのだから。」
『星の王子さま』が読み継がれている理由のひとつは、子供たちの微笑ましいやりとりの中にハッと気づかされる名言がいくつもあり、心に響く言葉の数々に出会うことができること。社会生活をしていく中で得た常識や価値観が、大人に窮屈さを感じさせている時もあるのでは。素直な子供の目で見ることができたのなら、この世界も違って見えるはず。
人生を豊かなものにするために必要なものは何か?
大切なことに気付かせてくれる物語です。
1900-1944。名門貴族の子弟としてフランス・リヨンに生れる。海軍兵学校の受験に失敗後、兵役で航空隊に入る。除隊後、航空会社の路線パイロットとなり、多くの冒険を経験。その後様々な形で飛びながら、1929年に処女作『南方郵便機』、以後『夜間飛行』(フェミナ賞)、『人間の土地』(アカデミー・フランセーズ賞)、『星の王子さま』等を発表、行動主義文学の作家として活躍した。第2次大戦時、偵察機の搭乗員として困難な出撃を重ね、’44年コルシカ島の基地を発進したまま帰還せず(「BOOK」データーベースより)
地雷グリコ 青崎 有吾
★★★★
第77回日本推理作家協会賞【長編および連作短編集部門】ノミネート作品。
story:射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。
平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとはーーミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。
地雷グリコ / 坊主衰弱 / 自由律ジャンケン / だるまさんがかぞえた / フォールーム・ポーカー(「BOOK」データベースより)
グリコ、神経衰弱、だるまさんがころんだ。私たちが子供の頃から慣れ親しんた遊びを大人でも楽しめるようにアレンジしたゲームが盛りだくさん。この物語は、天才?少女真兎が挑む様々な真剣勝負をリアルタイムで楽しめるゲームバトル小説。脳トレパズルに興じているような感覚で、物語を楽しみながら頭の体操にもなる新感覚の読書体験ができます。
読者は懐かしさを感じられるちょっと間抜けなバトル名と、本気でゲームに興じる高校生たちの盛り上がりに誘われ、ついこの真剣なバトルに参加してみたくなるはず。作者が仕掛けたミスリードの数々に歯噛みしつつも、アハ体験の閃きがクセになりそう。
章を追うごとに上がっていく難易度にどこまで対抗できるか。
彼女たちの駆け引きに挑戦するもよし、洞察力に富んだ頭脳に感嘆するもよし。
読みやすく楽しめる一冊です。
1991年神奈川県生まれ。明治大学卒。在学中の2012年『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)
芥川龍之介・菊池寛共訳 完全版 アリス物語 ルイス・キャロル
★★★★★
『不思議の国のアリス』の公式初版をもとに芥川龍之介、菊池寛が翻訳または校正したものをもとに加筆編集したもの。
story:もし『不思議の国のアリス』を日本の文豪が翻訳したら?そんな夢のような構想が現実となったのが、1927年刊行の書籍『アリス物語』。芥川龍之介と菊池寛による訳文は、アリスや不思議の国の登場人物たちがいきいきとユーモラスに描かれ、今なお色あせない魅力にあふれています。本書は、原書にあったいくつかの不足を補い、注釈や解説を付加した『完全版 アリス物語』です。(「BOOK」データベースより)
今年で出版160周年を迎た『鏡の国のアリス』はルイス・キャロルが知人の少女アリスのために作った話がもとになっているそうです。言葉遊び、屁理屈、ジョーク、パロディ、風刺など遊び心が溢れているアリスの物語は、教訓主義が色濃い当時のイギリスの児童文学に旋風を巻き起こしました。多くの子供たちの心を掴み、翻訳された言語の数は聖書に次ぐ多さとも言われています。
芥川・菊池の『アリス物語』はオリジナルの補足を付けたり、タルトを饅頭と訳出したりとイメージしやすいように工夫され、優しさとその時代らしさが随所にみられて面白い。『完全版アリス物語』は彼らの翻訳に加えて、二人のエピソードもふんだんに盛り込まれており、芥川龍之介・菊池寛ファンも満足の内容になっています。
イギリスの絵本作家マーガレット・タラントの有名な挿絵も沢山あり、中も外も一冊まるごと可愛い。
贈り物にもおすすめです。
1986年生まれ。小説家、研究者。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。小説に『フラミンゴの村』(第三十五回すばる文学賞)などがある。研究者としての専門は芥川龍之介。国際芥川龍之介学会会員、日本ルイス・キャロル協会会員。龍谷大学国際学部講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
おそろし 三島屋変調百物語事始 宮部 みゆき
★★★★★
ミステリーから時代小説、ファンタジー小説など多彩なジャンルで活躍する宮部みゆきのホラー時代小説シリーズ。2014年にドラマ化されています。
story:17歳のおちかは、ある事件を境に、ぴたりと他人に心を閉ざした。ふさぎ込む日々を、叔父夫婦が江戸で営む袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働くことでやり過ごしている。ある日、叔父の伊兵衛はおちかに、これから訪ねてくるという客の応対を任せると告げ、出かけてしまう。客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていき、いつしか次々に訪れる客のふしぎ話は、おちかの心を溶かし始める。三島屋百物語、ここに開幕。(「BOOK」データベースより)
怪談を100話語り終えると、本物の霊や妖怪が現れる。江戸時代に庶民の間に広がった「百物語」は怖がることを楽しむ日本の伝統ある語りものの文化の一つです。この物語はそんな「百物語」のスリルと恐怖を味わえるお話。
ある事情で叔父の家に身を寄せているおちかは、ひょんなことから常識では考えられない不思議で恐ろしい身の上話を聞くことに。彼らの口から語られる物語は江戸の人情と血なまぐさい歴史とが混ざり合い、不気味でありながらも幻想的な世界に迷い込んだように錯覚させられます。
一方で、恐ろしい怪談話の中に人の温かさや運命の残酷さなども感じられ、ヒヤッとさせられたりホロリとさせられたり。義理人情の厚い時代だからこそ悲しさも優しさもより深く心に染み入ります。
「百物語」を聞き過ぎると、あなたもあちらの世界へ…
読みやすく、ミステリ―風味のあるストリーで読む手が止まらない一冊です。
1960年東京生まれ。東京都立墨田川高校卒業。法律事務所等に勤務の後、87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。92年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞長編部門、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、93年『火車』で山本周五郎賞、97年『蒲生邸事件』で日本SF大賞、99年『理由』で直木賞、2001年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞を受賞。02年司馬遼太郎賞と芸術選奨文部科学大臣賞文学部門、07年『名もなき毒』で吉川英治文学賞、08年英訳版『BRAVE STORY』でBatchelder Awardを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
白銀の墟 玄の月 十二国記 小野 不由美
★★★★★
ホラー、ミステリー、ファンタジーと様々なジャンルで名作を世に送り出している著者・小野不由美の代表作。この『十二国記』シリーズで第5回吉川英治文庫賞を受賞。『白銀の墟 玄の月』は『十二国記』シリーズのエピソード9に当たります。
十二国の一つ「戴国」で起こった動乱を描いたお話。書き下ろしの新章はシリーズでも最長の四巻構成となっています。
前エピソード『黄昏の岸 暁の天』で明らかになった「戴国」の内乱。国を取り戻すべく動き出した泰麒、李斎一行に待ち受ける試練の数々。かすかな希望を胸に戦い続ける彼らに光は差すのかー。
なかなかつかめない驍宗の足取りにもどかしい気持ちを抱えつつ、徐々に明らかになっていく阿選の目的と真相にフィナーレに向けてのボルテージも上がっていく。手に汗握る総力戦が繰り広げられるクライマックス、情け容赦ないシナリオに最後の最後までハラハラさせられっぱなしです。ぜひその目で壮大な物語の結末を見届けてください。
ものの捉え方や考え方が変わる、ドキッとする言葉が沢山。
心に刺さるリアルファンタジー。学生さんを始め、多くの人の人に読んで欲しい物語です。
小野不由美(オノフユミ)
12月24日、大分県中津市生まれ。京都大学推理小説研究会に所属し、小説の作法を学ぶ。1988年作家デビュー。「悪霊」シリーズで人気を得る。13年『残穢』が第26回山本周五郎賞、20年「十二国記」シリーズが第5回吉川英治文庫賞を受賞(「BOOK」データーベースより)