2024年1月2月に読んだ本をまとめました。
人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。
私の満足度・おススメ度で★をつけています。
★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!
★★★★ とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!
★★★ 読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!
★★ 少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。
★ う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。
あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。
ちぎれた鎖と光の切れ端 荒木あかね
★★★★
史上最年少で江戸川乱歩賞を受賞した荒木あかねの最新作。2023年度、複数のミステリーの賞にランクインしています。
story:あの「悪夢」から抜け出るためには、一度、世界を壊さなければいけなかった。2020年8月4日。島原湾に浮かぶ孤島、徒島にある海上コテージに集まった8人の男女。その一人、樋藤清嗣は自分以外の客を全員殺すつもりでいた。先輩の無念を晴らすためー。しかし、計画を実行する間際になってその殺意は鈍り始める。「本当にこいつらは殺されるほどひどいやつらなのか?」樋藤が逡巡していると滞在初日の夜、参加者の一人が舌を切り取られた死体となって発見された。樋藤が衝撃を受けていると、たてつづけに第二第三の殺人が起きてしまう。しかも、殺されるのは決まって、「前の殺人の第一発見者」で「舌を切り取られ」ていた。そして、この惨劇は「もう一つの事件」の序章に過ぎなかったー。(「BOOK」データベースより)
孤島に密室連続殺人、推理から導き出される次のターゲット、今度は自分の番かと怯える面々。まさにミステリ―ファンが喜ぶ謎解きの面白さが詰まったクローズド・サークル。この作品は、その後さらに新展開を見せる二部構成になっており、2つのミステリーを楽しめる贅沢な一冊となっている。
特筆すべき点は、複雑な社会や人生に対してマイナス思考に陥ってしまいがちな人達の心理状態がリアルに描かれていること。
最初の主人公は、ある犯罪計画を目論んでいる男性。二人目の主人公も風変わりな性格。どちらもクセのある人物で、とても危うげに映ります。謎解きに加え、犯罪心理学的な興味もそそられる。
ボリュームたっぷりの読みやすいミステリーです。
1998年福岡県生まれ。九州大学文学部卒業。2022年『此の世の果ての殺人』で第68回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。本格ミステリーの確かな技法に加え、心理に深く分け入った人間ドラマを描くことから「Z世代のアガサ・クリスティー」と呼ばれている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
まいまいつぶろ 村木 嵐
★★★★★
第170回直木賞候補作品。
story:口がまわらず、誰にも言葉が届かない。歩いた後には尿を引きずった跡が残るため、まいまいつぶろと呼ばれ蔑まれた君主がいた。常に側に控えるのは、ただ一人、彼の言葉を解する何の後ろ盾もない小姓・兵庫。麻痺を抱え廃嫡を噂されていた若君は、いかにして将軍になったのか。第九代将軍・徳川家重を描く落涙必至の傑作歴史小説。(「BOOK」データベースより)
「小便公方」と揶揄されていた第九代将軍・徳川家重と唯一家重の言葉を解する忠光。
物語2人に焦点を当てながらその時代の有様を描いたもの。
家重と忠光の関係に心打たれる者、不信感を募らせる者。ストーリーは2人の主従関係を目の当たりにする人物の視点から描かれているため、江戸の縦社会ならではの己の立場や役割を重んじる武士の道徳がよく表れています。二人の息の合ったやり取りからは、義兄弟にある信頼関係や、長年連れ添ったおしどり夫婦のような以心伝心を感じられる瞬間がありました。しかし、それ以上にバディを越えた精錬な魂の繋がりが美しい。
徳川吉宗を始め、大岡越前守忠相や田沼意次などお馴染みの人物も登場。
読みやすく、心打たれる人間ドラマが中心なので、普段歴史小説を読まれない方にもおすすめ。
もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ☛読書ブログ『まいまいつぶろ』村木嵐
1967年、京都市生まれ。京都大学法学部卒業。会社勤務を経て、95年より司馬遼太郎家の家事手伝いとなり、後に司馬夫人である福田みどり氏の個人秘書を務める。2010年、『マルガリータ』で第十七回松本清張賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
なれのはて 加藤 シゲアキ
★★★★★
アイドルと作家、二足の草鞋を履く加藤シゲアキのミステリー小説。第170回直木賞候補作品。
story:ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動することになったテレビ局員・守谷京斗は、異動先で出会った吾妻李久美から、祖母の遺品である不思議な絵を使って「たった一枚の展覧会」を企画したいと相談を受ける。しかし、絵の裏には「ISAMU INOMATA」と署名があるだけで画家の素性は一切わからない。二人が謎の画家の正体を探り始めると、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた業に繋がっていたー。(「BOOK」データベースより)
以前読んだ『チュベローズで待ってる』は多彩な情景描写とSF要素のあるミステリーが個性的で、アイドルという特殊な環境で生きてきたからこそ、と思わせる華やかでエンタメ性に富んだ小説でした。
一転して、この『なれのはて』は人生の岐路に立った男の葛藤や、歴史の惨禍などを描いた重厚な社会派ミステリーになっており、まさに作家・加藤シゲアキ「第二のスタート」を彩る集大成的作品。
丁寧な文章でテンポ良く進む物語は、とても読みやすく、残酷な歴史とその狭間に消えて行ったある家族の謎に興味を惹かれます。事件の真相を追う主人公も社会に対して無力感を感じたり、トラウマを抱えていたりと、人間や戦争、ジャーナリズムなど、いくつものテーマが散りばめられていて読者を飽きさせません。
広島の生まれで、戦争の歴史に触れる機会も多かったことから、「戦争の恐ろしさ」を若い世代に伝えていく役割や意義を感じている著者。若者も含め広い層に読んでもらいたい物語です。
1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒業。「NEWS」のメンバーとして活動しながら、2012年1月に『ピンクとグレー』で作家デビュー。’21年『オルタネート』で吉川英治文学新人賞と高校生直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
玉瀬家の出戻り姉妹 まさき としか
★★★★★
2018年出版の『玉瀬家、休業中。』を改題し、文庫化。
story:澪子は41歳。夫に浮気されバツイチ引きこもり中。ある日、売れっ子イラストレータとして活躍中の姉が金の無心にやってきて、流れで一緒に実家に出戻ることに。そんな訳あり姉妹を母は他人事と知らぬ顔。女三人の侘しい実家暮らしが始まるが、ある夜“男”の視線を感じて目が覚めてー。帰ればそこに家族がいて居場所がある。実家大好き小説誕生。(「BOOK」データベースより)
収入も仕事の経験もない専業主婦が離婚して独り身に。ハッと人生をふり返った時に、今まで積み重ねてきたと思っていたものが、根こそぎ奪われたような虚無感に襲われたー。
突然不幸のどん底に落とされた彼女たちの物語は、誰にでも起こりうるに日常のリアル。人生、悪い時はどんどんとダメな方へ。何事も空回りする主人公たちが心配になったり、共感したり、彼女たちと自身を比べてちょっぴり安心したり、明日は我が身と身につまされたり。
「たったそれだけのことで死にたくなる」
「やりたいことができないのと、やりたいことがないのとは、どちらがつらいのだろう」
ゆるい会話、つぶやくような本音に「そういうこともあるよね」と心の中で返事をしながらも、なんとなく温かい気持ちに。
ゆっくりと前に進む彼女たちを見て、何気ない日常もいいなと思える。そんな一冊。
1965年生まれ。2007年「散る咲く巡る」で第四十一回北海道新聞文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)
名探偵のままでいて 小西 マサテル
★★★★★
放送作家として活躍する小西マサルのデビュー作・連作短編ミステリー。第21回このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。
story:かつて小学校の校長だった切れ者の祖父は、七十一歳となった現在、幻視や記憶障害といった症状の現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。しかし、孫娘の楓が身の回りで生じた謎について話して聞かせると、祖父の知性は生き生きと働きを取り戻すのだった!そんな中、やがて楓の人生に関わる重大な事件が…。2023年第21回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
人目を引く美人の楓。彼女が遭遇する日常の出来事から殺人事件までの様々な謎を、認知症の祖父が鮮やかに紐解く、安楽椅子探偵ミステリー。
それぞれの物語には有名なミステリー作家や作品名が数多く登場し、著者のミステリー愛が伝わってくると共に、数々の名作にも興味をそそられます。謎や仕掛けが古典作品のオマージュのようにもなっており、6つもの本格ミステリーが楽しめる。
また、「レビー小体型認知症」を患っている祖父に複雑な思いを抱く楓の心情を通して、認知症における家族の在り方を考えさせられ、そして勇気づけられます。楓に想いを寄せる同僚の教師や、クセの強い後輩なども登場し、人の温もりを感じられる優しい物語に。
ミステリーファンから初心者まで楽しめる優しい空気に包まれたミステリーです。
1965年生まれ。香川県高松市出身。明治大学在学中より放送作家として活躍。第21回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2023年に『名探偵のままでいて』(宝島社)でデビュー(「BOOK」データベースより)
東京都同情塔 九段 理江
★★★★★
第170回芥川賞受賞作品。
story:日本人の欺瞞をユーモラスに描いた現代版「バベルの塔」。ザハの国立競技場が完成し、寛容論が浸透したもう一つの日本で、新しい刑務所「シンパシータワートーキョー」が建てられることに。犯罪者に寛容になれない建築家・牧名は、仕事と信条の乖離に苦悩しながら、パワフルに未来を追求する。ゆるふわな言葉と実のない正義の関係を豊かなフロウで暴く、生成AI時代の預言の書。(出版社より)
犯罪者にも人権はある。様々な議論を呼ぶテーマが多様性社会と絡み合って、思想の新境地を開く。「礼儀正しく優しい日本人」と海外から賞賛を浴びるこの国の人々は、別の角度から見ると全くの理解不能な民族集団に写っているのだろうか。個性を尊重しつつ、平等で平和な社会を目指す日本。理想に近づきつつあるように見えるが、実は離れて行っているのかも知れない。社会に従順過ぎる我々はまだ気づいていないのかも知れない。潔癖な正義感に振り回され、自分の言葉を持たなくなっていく日本人の姿が見え、思わず身震いをする。
この作品は、全体の5%に生成AIの文章そのままが使用されているとのことで、斬新で面白い。この新しい試みにより、作家の理論整然全としたの文章との違いが比べられ、果たして近い将来、生成AIの作家は誕生するのかとの議論に思いを巡らせてしまう。
日本の行く末を考えさせられる、皮肉とユーモアに溢れた一冊。
1990年、埼玉生れ。2021年、「悪い音楽」で第126回文學界新人賞を受賞しデビュー。同年発表の「Schoolgirl」が第166回芥川龍之介賞、第35回三島由紀夫賞候補に。23年3月、同作で第73回芸術選奨新人賞を受賞。11月、「しをかくうま」で第45回野間文芸新人賞を受賞。12月、「東京都同情塔」が第170回芥川龍之介賞候補になった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)
続 窓ぎわのトットちゃん 黒柳 徹子
★★★★★
NHKのテレビ放送開始時から芸能界で活躍している黒柳徹子さんのエッセイ。戦後日本で一番売れた書籍『窓ぎわのトットちゃん』の続編。
story:一人ぼっちのトットを乗せて夜行列車は走りはじめた。国民的ベストセラー待望の続編!みんなが会いたかった「その後」のトットちゃん。(「BOOK」データベースより)
目次:「寒いし、眠いし、おなかがすいた」(幸せな日々/銀ブラ、スキー、海水浴 ほか)/トット、疎開する(一人ぼっちの夜行列車/おしっこがしたい ほか)/咲くはわが身のつとめなり(讃美歌と木魚/「咲くはわが身のつとめなり」 ほか)/トット、女優になる(ゼンマイ仕掛けのフランス人形/ヘンな声 ほか)(「BOOK」データベースより)
発売から40年以上経った昨年、『窓際のトットちゃん』は全世界の累計発行部数2500万部以上を記録し、「最も多く発行された単一著者による自叙伝」としてギネス世界記録に認定されました。続編として発売されたこのエッセイも50万部まで伸長しているとのこと。
この『続 窓際のトットちゃん』は前作のトモエ学園のその後のお話。戦時中に体験した空前絶後の連続が何でもない事のようにさらりと綴られており、驚かされっぱなし。不運な出来事も黒柳さんのあまりのたくましさに面白エピソードとして楽しめてしまう所が人気の秘密なのかも。昭和を代表する俳優さんやテレビの今昔など、芸能活動の裏話は輝かしい時代を懐古させると共に、今の時代でも通じる自立した女性像に心を動かされます。
黒柳さんのサバサバしたお人柄が伝わってくる、読みやすくパワーを貰えるエッセイです。
東京都生まれ。俳優、司会者、エッセイスト。東洋音楽学校(現・東京音楽大学)声学科卒業後、NHK専属のテレビ女優第1号として活躍する。『徹子の部屋』(1976年2月~、テレビ朝日)の放送は1万2000回を超え、同一司会者によるテレビ番組の最多放送世界記録を更新中。1981年に刊行された『窓ぎわのトットちゃん』(講談社)は、国内で800万部、世界で2500万部を超える空前のベストセラーに。1984年よりユニセフ親善大使となり、のべ39ヵ国を訪問し、飢餓、戦争、病気などで苦しむ子どもたちを支える活動を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)
青い壷 有吉 佐和子
★★★★★
日本の歴史や社会問題など幅広いテーマで数々のベストセラー作品を生み出した作家・有吉佐和子。没後40年の節目に幻の名作『青い壺』が復刊されました。
story:無名の陶芸家が生み出した美しい青磁の壷。売られ盗まれ、十余年後に作者と再会するまでに壷が映し出した数々の人生。定年退職後の虚無を味わう夫婦、戦前の上流社会を懐かしむ老婆、四十五年ぶりにスペインに帰郷する修道女、観察眼に自信を持つ美術評論家。人間の有為転変を鮮やかに描いた有吉文学の傑作。(「BOOK」データーベースより)
つやのある青緑色が美しい青磁。中でも唐物(中国産)は名物級のものもあり、昔から上流階級の間で人気がありました。
物語は陶芸家の省造が不思議な青い壺を生み出すところから始まります。無名の陶芸家である彼は和製の磁器に手を加え、偽唐物の青磁を作って生計を立てていました。そんな日々の中、たまたま名物級の青磁の壺を作り上げた省造。苦労が報われたと喜びますが、道具屋から古色をつけて唐物風に仕立ててくれと言われて…。
『青い壺』は、人から人へと渡る壺を通して描かれる人間模様が面白い。
価値があると思われる壺。その価値に見合うだけの想いであったり、打算であったり、巡り合わせであったり。織りなす人間模様は滑稽でいて、人情の深さを感じます。
青い壺に人の温かさを感じる時もあれば、呪いが込められているようにも。
使い捨てのものが溢れる時代だからこそ、読んで欲しい物語です。
有吉佐和子(アリヨシサワコ)
昭和6(1931)年、和歌山生まれ。昭和31年に『地唄』で文壇デビュー。紀州を舞台にした『紀ノ川』『有田川』『日高川』三部作、世界初の全身麻酔手術を成功させた医者の嫁姑問題を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、老人介護問題に先鞭をつけ当時の流行語にもなった『恍惚の人』、公害問題を取り上げた『複合汚染』など意欲作を次々に発表し人気作家の地位を確固たるものにする。多彩かつ骨太、エンターテインメント性の高い傑作の数々を生み出した。昭和59年8月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)賞(「BOOK」データーベースより)
※『十二国記 白銀の墟 玄の月』小野 不由美 は次回まとめて記載いたします。