ムゲンのi 知念 実希人

知念実希人
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「僕はククルだよ。君のククルだ。よろしくね、愛衣」
~未知なる読書体験~

こんにちは、くまりすです。今回は、今若者に大人気の医師と作家2つの顔を持つ知念実希人本屋大賞ノミネート作品ムゲンのi」をご紹介いたします。

story:

眠りから醒めない謎の病気“特発性嗜眠症候群”通称イレスという難病の患者を3人も同時に担当することになった神経内科医の識名愛衣。治療法に悩んでいたのだが、沖縄の霊能力者・ユタである祖母の助言により、魂の救済“マブイグミ”をすれば患者を目覚めさせられると知る。愛衣は祖母から受け継いだユタの力を使って患者の“夢幻の世界”に飛び込み、魂の分身“うさぎ猫のククル”と一緒にマブイグミに挑むー。本屋大賞にノミネートされた超大作ミステリー、待望の文庫化!(「BOOK」データベースより)

医療ミステリー

ただひたすら眠り続ける奇病「レイス」を突然、同じ日に四人が発症した。彼らの内三人の治療を任された医師、識名愛衣は彼らを助けるべく治療法を模索する。そんな時、世間で頻繁に起きている通り魔殺人事件のニュースに過去のトラウマが呼び起こされ…

SFのような設定と、出だしから何かが起こる予感に心を掴まれますね。いくつもの謎が散りばめられ、ミステリーファンなら、何か接点があるのではと勘ぐってしまいます。

眠り続ける三人の患者はこの奇病が発症する前「生きているのが嫌になるくらいすごく落ち込んでいた」という共通点を知った愛衣はPTSDの専門家の院長に相談するが、その原因を調べるのは「医師の領域を超えているな。警察、または探偵の仕事だ」と相手にされない。

このPTSDなどの精神疾患と、奇病「レイス」の説明が分かりやすく具体的で、医学の知識のある著者ならではの説得力があります。本当にそんな奇病があるのではないかと錯覚してしまうくらい。

そして、その説得力をもって、院長は通り魔連続殺人の犯行の残虐性と矛盾を指摘し、犯人像について、「『人間』という範疇を逸脱しているということだ。それはもはや、『怪物』まで進化していると言っても過言ではない」と説明した。

それは過去のトラウマを抱えた愛衣には耐えがたい事件の始まりだった…。

ファンタジー

この物語は、奇病と事件の謎を解く医療×ミステリー小説ですが、実はそれだけではありません。

院長にすすめられ、気分転換のため実家に帰った愛衣は、おばあちゃんが昔ユタをやっていたことや、「不思議な力」を持っていることを知る。おばあちゃんは孫である愛衣もその「不思議な力」を持っていることを伝え、患者を助ける方法を語り始めた。

ユタとは霊と交信して様々な問題を解決する霊媒師のこと。そんな「不思議な力」を受け継いでいるなんて言われても、現実味がないですよね。愛衣もその話を信じてはいませんでしたが、気休めに教えられたことを試したところ、眠っている患者の”無限の世界”に入っていったのです。

この物語のもう一つの見どころはファンタジー要素があるところ。患者の心の問題を解決すべく、魂の分身“うさぎ猫のククル”と共に飛び込んだ”無限の世界”は薄暗い森の中だったり、星空の上だったり。恐怖や幻想的な体験はまるで、異世界への冒険の旅に出ている気持ちになります。

この世界で私が…死んだら、現実の私はどうなるの?

この先に何が待っているのか、全く想像できない超大作ファンタジー&ミステリー。読み応えのあるこの物語は予想外の結末に…。

感想

ファンタジーと言って真っ先に思い浮かべるのは、私が子供の頃に大ブームを巻き起こし、私も夢中になったゲーム「ドラゴンクエスト」。何時間でも遊べるスケールの大きさや、主人公になりきり冒険できる楽しさを味わえるRPGは何もかもが新しく、ファンタジーの醍醐味を味わうことが出来ました。

また、ディズニーランドなどは大人子供関係なく楽しめるファンタジーな世界。非日常な空間は現実とはまた違った高揚感や多幸感を得られます。

ファンタジーを扱った小説は数多くありますが、本格ミステリーとの組み合わせはライトなものを除けば、余りなかったように思います。しかも医療ミステリーでは皆無ではないでしょうか。
この物語は、医療とファンタジーという真逆のものを見事に両立させ、生きる意味への問いと答えが描かれています。そして、それをミステリー仕立てにすることによって、残虐性と愛情、生と死、相反するものが混ざり合う刺激的で面白いエンターテインメント性のあるもの仕上がっているのです。

最近の傾向として、色々な要素を取り入れた間口の広い小説が人気のようです。一方でとてもハートフルな癒される物語の人気も健在。
読みやすく、刺激的で面白く、そして心温まるこの物語。多くの若者にこそ読んで欲しい。

著者:知念実希人(チネンミキト)
1978年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業、内科医。2011年、福山ミステリー文学新人賞を『誰がための刃 レゾンデートル』(『レゾンデートル』と改題し文庫化)で受賞し、デビュー。主に医療ミステリーを手がけ、「天久鷹央の推理カルテ」シリーズが評判を呼び、15年に『仮面病棟』が啓文堂文庫大賞を受賞し、ベストセラーに。18年『崩れる脳を抱きしめて』、19年『ひとつむぎの手』、20年『ムゲンのi』で3年連続本屋大賞ノミネート。『ムゲンのi』は第6回沖縄書店大賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
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