モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語 内田 洋子

内田洋子
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~小さな村の本屋の足取りを追うことは、人々の好奇心の行方を見ることだった~

こんにちは、くまりすです。今回はYahoo! ニュース本屋大賞2018〈ノンフィクション本大賞〉ノミネート作品内田 洋子モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語」をご紹介いたします。

story

トスカーナの山深いその村では、何世紀にもわたり本の行商で生計を立ててきた。籠いっぱいの本を担いで国じゅうを旅し、「読む」ということを広めた。-偶然の出会いに導かれ村人に消えゆく話を聞きながら、突き動かされたように書いた奇跡のノンフィクション。本と本屋の原点を描き、各紙誌で絶賛された本と本屋の原点を示してくれる読み継がれるべき1冊。
文庫化にあたり、構成を一部変更。写真数点を加え、〈文庫版あとがき〉を追補。(出版社より)

目次
それはヴェネツィアの古書店から始まった/海の神、山の神/ここはいったいどこなのだ/石の声/貧しさのおかげ/行け、我が想いへ/中世は輝いていたのか!/ゆっくり急げ/夏のない年/ナポレオンと文化の密売人/新世界に旧世界を伝えて/ヴェネチアの行商人たち/五人組が時代を開く/町と本と露天商賞と/ページに挟まれた物語/窓の向こうに(「BOOK」データベースより)

モンテレッジォ

水の都として有名なイタリア、ヴェネツィアの路地の奥にヴェネツィアに関する本や美術の本だけを取り扱う古書店があった。偶然見つけたその本屋の店主アルベルトはこちらの要望に合った本を、豊富な種類の中から探し出してくれることで信頼があり、常連客も多い。そのアルベルトの出身地モンテレッジォの村では昔、本の行商が行われ、本の原点と言われているようだ。そのこと知った私は興味を惹かれ、その村を訪れることにした…

ヴェネツィアと言えば、中世の街並みが残る異国の情緒漂う風景が思い浮かびます。その路地裏の古書店って、なんだか映画の世界のようですね。
しかし、太陽と水に恵まれた地中海に隣接するイタリアは海の幸、山の幸、農作物など、食べ物が豊富なイメージがあります。そんな国の自然豊かな村で何故、食べ物ではなく本を売るようになったのかという疑問はもっともです。

その謎を解くべくジャコモやマッシミリアーノの力を借りて彼らの故郷の村を訪れるところは、紀行文のようでイタリアの風景を楽しめる。また、村人たちの人柄も、その村の歴史厳しい生活を物語っているようです。

そして、私は村人に話を聞くうちに、本の行商の謎はイタリアの歴史に深く関係していたことを知る…。

モンテレッジォの村の風景

本の歴史

「全国の本屋がそれぞれ一推しの本を挙げ、最終候補六作品から受賞作一作品が選ばれる。」
日本の本屋大賞に当てはまるものがイタリアにもあり、「露天商賞」と言うらしい。1953年に生まれたこの賞の第1回受賞作品は、巨大なカジキマグロと闘う老人を描いたあの作品で、ノーベル文学賞に先駆けて受賞している。この歴史ある賞の発祥地がモンテレッジォだと言うのです。

そして、この「露天商賞」の名前の由来にモンテレッジォの本の行商の謎が隠されていました。

本の行商を行ったきっかけや、彼らが歩んだ苦難の道、そして本に対する想いをを村人が私にポツポツ話し始めます。
異教徒の侵攻、ナポレオン一世の支配、イタリア統一運動、二つの大戦へと至るイタリアの数千年の歴史の旅と共に、本の行商人の生き様が見えてきます。

各地方に渡り歩き、本を広めた行商人は、大衆や出版社にとって欠かせない存在になっていました。
イタリア人のマヌツィオが考案した文庫本や、詩を取り入れた本などが若者や女性などにも層を広げ、本の普及の後押しをした。知識は財産である。本の行商人のプライドが世界の発展へとつながったのです。

感想

最近、本のプロがその人に合った本を選んでくれるサービスが人気らしい。本にあまりなじみがない人や、忙しくて本を選ぶ時間がない人、同じような本ばかり選んでしまう人にとってはいい本に出合う近道になるようだ。
本のコンシェルジュがいる書店や、書店の店長がお薦めの本を一万円分選んで届けてくれる「一万円選書」など、その方法は多岐にわたるようです。

モンテレッジォの村の本の行商人はこの本のプロとイメージと重なる。まだ字を読めない人も多い時代から「本」を大衆にに普及させた彼らの功績は大きく、その仕事ぶりは彼らの誇りを感じます。

イタリアの紀行文のようだと楽しみながら読み始めましたが、イタリアの歴史が混じってくると「そういえば学校でそんなことを習ったような」と正直、ちょっと苦戦しました。しかし、歴史が人にどのように関わってくるかという視点から学ぶと頭に入りやすいですね。
火山の噴火による自然災害、気候変動がもたらす経済への影響の話や、ダンテや詩人の話など、盛りだくさんで面白かったです。勉強になりました。

そして、私も世界でたった一つの本のお店を持ちたくなりました。

著者の内田洋子はこのエッセイで、露天商賞の授賞式で金の籠賞を受賞されました。イタリア人以外にこの賞が送られるのはこの作品が初めてだそうです。

金の籠賞(GERLA D’ORO)
1952年に<露天商>賞を創設した本の行商人たちが贈る、シンボルである賞です。本を広め、守り、読むことの価値を広めてきた功績をたたえて贈られます。
著者:内田洋子(ウチダヨウコ)
1959年兵庫県神戸市生まれ。東京外国語大学イタリア語学科卒。通信社ウーノアソシエイツ代表。欧州と日本間でマスメディアに向けて情報を配信。2011年、『ジーノの家 イタリア10景』で日本エッセイスト・クラブ賞、講談社エッセイ賞を同時受賞。2019年、ウンベルト・アニェッリ記念ジャーナリスト賞、2020年、イタリア版の本屋大賞・第68回露天商賞受賞式にて、外国人として初めて“金の籠賞(GERLA D’ORO)”を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
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