2025年11月・12月に読んだ本をまとめました。
人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。
私の満足度・おススメ度で★をつけています。
★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!
★★★★ とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!
★★★ 読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!
★★ 少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。
★ う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。
あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。
秋の花 北村 薫
★★★★★
story:絵に描いたような幼なじみの真理子と利恵を苛酷な運命が待ち受けていた。ひとりが召され、ひとりは抜け殻と化したように憔悴の度を加えていく。文化祭準備中の事故と処理された女子高生の墜落死ー親友を喪った傷心の利恵を案じ、ふたりの先輩である『私』は事件の核心に迫ろうとするが、疑心暗鬼を生ずるばかり。考えあぐねて円紫さんに打ち明けた日、利恵がいなくなった…。(「BOOK」データベースより)
直木賞作家・北村薫さんの人気作品。ミステリ―ジャンルのひとつである「日常の謎」を描いた「円紫さん」シリーズ第3作。シリーズの中でも特に人気のこの作品は唯一人の死を扱った長編本格ミステリー。
シリーズの人気の理由は、ミステリーながら純文学の味わいを堪能できる所にあります。
何気ない描写の中に澄んだ秋の空気が感じられ、光度の低い風景に見る「もの悲しさ」が物語を通して漂ってきます。映し出される情景描写に人間の強さと脆さ、青春の輝きと残酷な現実が見事に表現され、淡々と、しかし余白のある文章により、人の暖かさを感じられました。
純文学にある深い人間心理と本格の面白さが上手く合わさった情緒溢れるミステリー小説。
たった一言で、母という存在の偉大さを感じさせる最後の一文に感嘆し、涙が溢れました。
秋に読みたいミステリーです。
1949年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。高校で教鞭を執りながら執筆を開始。89年『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、2006年『ニッポン硬貨の謎』で本格ミステリ大賞(評論・研究部門)、09年『鷺と雪』で直木賞、16年日本ミステリー文学大賞を受賞。アンソロジーやエッセイ、評論などにも腕を振るう“本の達人”としても知られる(「BOOK」データベースより)
伯爵と三つの棺 潮谷 験
★★★★★
story:フランス革命が起き、封建制度が崩壊するヨーロッパの小国で、元・吟遊詩人が射殺された。容疑者は「四つ首城」の改修をまかされていた三兄弟。五人の関係者が襲撃者を目撃したが、犯人を特定することはできなかった。三兄弟は容姿が似通っている三つ子だったからだ。DNA鑑定も指紋鑑定も存在しない時代に、探偵は、純粋な論理のみで犯人を特定することができるのか?時代の濁流が兄弟の運命を翻弄する。(「BOOK」データベースより)
鋭敏な頭脳と非凡な観察力、そしてずば抜けた推理力。名探偵の閃きに衝撃を受け、種明かしに度肝を抜かれた時の高揚感は、忘れられない心的体験としてミステリーファンの心をとらえ続けています。今なお名作と語り継がれているミステリー小説の多くが、科学が介入しない黄金時代のミステリーや、ロジックの面白さを追求する知的好奇心をくすぐる推理小説です。
この物語も、そんなミステリーファンの期待に応えた18世紀のフランスが舞台のミステリー。架空の小国で起きる殺人事件は、歴史知識がなくとも楽しめるファンタジー性の高いストーリーと論理的な解決を追求する本格ミステリー両方の面白さを兼ね備えています。好感の持てる登場人物が多く、随所でクスっとさせられ楽しく読めるました。
あっと驚く真実。騙される楽しさを何度も味わえる一冊です。
1978年京都府生まれ。第63回メフィスト賞受賞。2021年、デビュー作『スイッチ 悪意の実験』が発売後即重版に。同年『時空犯』で「リアルサウンド認定2021年度国内ミステリーベスト10」の第1位に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
テスカトリポカ 佐藤 究
★★★★★
story:メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会う。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へ向かった。川崎で生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモは、バルミロに見いだされ、彼らの犯罪に巻きこまれていく。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国の恐るべき神の影がちらつくー。人間は暴力から逃れられるのか。第165回直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
グローバルな裏社会を描いたハードボイルド・ノワール長編小説。
『テスカトリポカ』は、この世のダークサイドで繰り広げられる無法者たちのハードコアな犯罪小説。正義や道徳が存在しない悪人同士の計略や暴力の数々、次元の違うバイオレンスはある種のエンターテイメント性を感じさせます。生死を分ける一手や桁違いの暴力、タガの外れた思考回路など本性をむき出しにした人間の姿に恐怖を感じつつも、そのエネルギーにアドレナリンが触発されました。
また、世界のどこかで起きていても不思議ではないリアルなこの物語に、血塗られた古代文明を絡めたストーリーも面白い。忌まわしいアステカ神話が現代に蘇ったかのような展開に想像力を掻き立てられ、目が離せなくなりました。
人種差別などの社会問題を背景に登場人物の個性もしっかり描かれており、面白いだけではない骨太のおすすめ作品です。
1977年福岡県生まれ。2004年、佐藤憲胤名義の『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、同作でデビュー。16年、『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。18年、『Ank:a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞、および第39回吉川英治文学新人賞を受賞。21年、本作で第34回山本周五郎賞、および第165回直木三十五賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
ぼきわんが、来る 澤村 伊智
story:“あれ”が来たら、絶対に答えたり、入れたりしてはいかんー。幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。それ以降、秀樹の周囲で起こる部下の原因不明の怪我や不気味な電話などの怪異。一連の事象は亡き祖父が恐れた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか。愛する家族を守るため、秀樹は比嘉真琴という女性霊能者を頼るが…!?全選考委員が大絶賛!第22回日本ホラー小説大賞“大賞”受賞作。(「BOOK」データベースより)
2018年に公開された岡田准一さん主演映画「来る」の原作小説。
日本各地に伝わる民間伝承や地名の由来。その中には後世への警告の意味が込められているものも少なくありません。もし、その禁忌に踏み込めば…現代の闇が民俗学にある不気味さを更に際立たせる、人気ホラー小説。
物語は、主人公が子供の頃の記憶から始まります。ある恐ろしい体験と、意味深な祖母の言葉。無駄のない読みやすい文章が、何気ない日常の「隙間」をよりリアルに感じさせ、想像力と不安を掻き立てます。
同時に人間の持つ闇もサスペンスとして描かれており、怪異と人間、ベクトルの違う恐ろしさが同居している所も怖面白い。怖いだけでなくエンターテイメントとしての面白さもあるので、後味は悪くなく、ホラーが苦手な人でも楽しめる一冊です。
1979年生まれ、大阪府出身。幼少期より怪談/ホラー作品に慣れ親しみ、岡本綺堂作品を敬愛する。2015年、『ぼぎわんが、来る』(受賞時のタイトルは「ぼぎわん」)で第22回日本ホラー小説大賞“大賞”を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
ババヤガの夜 王谷 晶
★★★★★
story:お嬢さん、十八かそこらで、なんでそんなに悲しく笑う?暴力を唯一の趣味とする新道依子は、関東有数規模の暴力団・内樹會にその喧嘩の腕を買われる。会長が溺愛する一人娘の運転手兼護衛を任されるが、彼女を苛酷な運命に縛りつける数々の秘密を知りー。血が逆流するような描写と大胆な仕掛けで魅せる不世出のシスター・バイオレンスアクション!(「BOOK」データベースより)
日本人初!イギリスのミステリー文学賞・翻訳部門「インターナショナル・ダガー賞」受賞作品。
どんな物語でも女性のキャラクターは必ず女性らしい一面が描かれており、可愛げがあることによって受け入れられている所があるように思います。しかし、この小説の女性主人公は男顔負けの腕力と格闘センスを持っており、尚且つ性格も感性も男性そのもの。LGBTQの観点からも評価されているこの『ババヤガの夜』は、主人公が彼女であろうと彼であろうと成り立つ面白さを持っている物語です。
また、バイオレンスアクションと銘打っている通り暴力的場面が多いお話ですが、悪い奴等を片っ端からのしていく様はどこかユーモラスで爽快。アクション漫画的な面白さがあり、主人公の活躍を楽しく読めました。
「えっ!?」と驚く仕掛けも用意されており、ミステリーとしても面白い。
とても読みやすくて、一気に読みしてしまう一冊です。
1981年東京都生まれ。著書に『完璧じゃない、あたしたち』、エッセイ『どうせカラダが目当てでしょ』『40歳だけど大人になりたい』など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
ある犬の飼い主の一日 サンダー・コラールト
★★★★★
story:本好きの中年男ヘンクは、離婚して老犬スフルク(ならず者)と暮らすICUのベテラン看護師。ある朝、運河沿いを散歩中、へばってしまった老犬をすばやく介抱してくれた女性がいた。この日は、かわいい姪の17歳の誕生日。元妻の情事の現場に出くわして以来、恋なんていうものとは無縁に生きてきたヘンクだが、けさ出会った同世代の女性にときめいている自分を発見する。戸惑う彼の背中を、姪のローザがどんと押す。離婚、不遇だった兄の死、やり手の弟との不仲、忍び寄る老い…人生の辛苦をさまざまに経験してきた男が、生きるよろこびを取りもどしていくさまをつぶさに描く。2020年、コロナに見舞われたオランダで、多くの人たちを慰め、励ましたベストセラー小説。リブリス文学賞受賞。(「BOOK」データベースより)
オランダの権威ある文学賞「リブリス文学賞」受賞作品。
オランダ小説の翻訳は日本ではあまり馴染みがないのですが、この『ある犬の飼い主の一日』はコロナ禍のオランダでベストセラーになった作品。
主人公はうだつが上がらない中年男性ヘンク。些細な事にもこだわり、臨機応変に対応するのが苦手な性格の為、人間関係もうまく行きません。物語はそんな彼のある一日の行動や感じたことが一つ一つが丁寧に記されています。日常のルーティン、愛犬スフルクとの交流、そして人間関係の悩み。普通なら気にも留めない色々に対してこだわるヘンク。彼の目を通して見るからこそ見えてくるものがあります。
読み進めていくうちに人生を豊かにする宝物を見つけることでしょう。そして、未来は日々の延長上にあるのだと気づかされます。一日の終わりに読みたい胸の奥が温かくなる物語です。
1961年、アムステルフェーン市に生まれる。アムステルダム自由大学で歴史学専攻ののち、医学関係の出版社に勤務。2006年、スウェーデンに移住。スウェーデン人の妻と3人の子どもとともにストックホルム近郊に暮らす。短篇集『あなたの愛する人の瞬時の帰還』により、2014年、ファン・デル・ホーフト賞受賞。2020年、『ある犬の飼い主の一日』により、権威あるリブリス文学賞を受賞(「BOOK」データベースより)
