SF小説・海外篇

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なぜ、いまSFなのか

SFでしか得られない価値があると言う。
現代に蘇った恐竜、未確認生命体とのコンタクト。時間を遡る冒険に、放射能により汚染された地球…。

テクノロジーの進化による未来の構想図に興奮を覚えたり、科学と政治が絡み合った黙示禄に不安を募らせたりと、スペクタクルなSFの世界に魅せられた経験は誰にでもあるのではないでしょうか。驚くべき想像力と該博な知識で描かれた物語は、エンターテイメントの世界だけに留まらず、現代社会に警鐘を鳴らす予言の書としても注目されています。

例えば、漫画家・手塚治虫に多大な影響を与えたSF作家・レイ・ブラッドベリは、アメリカでテレビが普及し始めた当時に「画像や音声などの感覚的なものばかりの社会」になることを予見。記憶力や思考力の低下における思考停止社会への警鐘を鳴らしました。また、SFの開祖として知られているジュール・ヴェルヌは人工衛星や水素エネルギー社会など現代科学技術の進歩の数々を予言した作品を多く発表しています。

そんな、未来を見通す力を持った作家たちの作品に触れることは、わたしたちの想像力や発想力を鍛え、豊かにする効果もあると言われています。ビル・ゲイツやイーロン・マスクなど読書家で知られている世界のビジネスパーソンもSFの名作にインスパイアされ、革新的なアイデアを次々と生み出しているのだとか。また、ビジネスシーンでは奇想天外なSF的思考を取り入れる「SFプロトタイピング」なども盛んに行われています。

「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」
ヴェルヌが語った言葉にあるように、科学は凄まじい勢いで進化しています。人間のような自然な会話や、人の手を介すことなく学習が行える人工知能が登場し、話題になっています。2025年の大阪万博ではあの「空飛ぶ車」が披露される予定だとか。テクノロジーの急速な発展は私たちに多くの希望をもたらしますが、同時に脅威を感じる瞬間もあるかもしれませんね。

この「SF小説10選(海外篇)」では半世紀以上も前の作品にも拘らず今なお傑作として読まれ続けているSF 黄金時代を彩ったSFの古典人気の名作10作品を選びました。価値観を一変させる作品、壮大なスケールに圧倒される物語。ぜひとも読んでおきたい歴史的名作ばかりです。未来へのイマジネーションを感じる物語をどうぞ。

星を継ぐもの ジェームズ・P.ホーガン

~ハードSFの巨星が一世を風靡した歴史的傑作。星雲賞受賞作品。~

ハードSFの巨匠・ホーガンのデビュー作。1980年に邦訳され、熱狂的な支持を集めました。創元SF文庫最大のヒット作品となっています。

story:月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行なわれた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、5万年以上も前に死んでいたのだ。謎は謎を呼び、一つの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見されたが……。(「BOOK」データーベースより)

科学知識に裏付けされた壮大なストーリーと生命進化の謎。ハードSFの金字塔とも言えるこの物語は、科学技術が発達した今でも想像力が掻き立てられるスケールの大きい作品。当時のテクノロジーや未来に対する期待と不安が高い熱量で伝わってきます。

月で発見された死体は5万年前のものだった。限られた手掛かりから理に適った仮説が導き出されるたびに、その創造力と説得力に興奮し、探求心を掻き立てられます。精巧なディテールで作り上げられた世界観はエンタメ性も高く、並外れた論理的思考で謎をひもとくミステリーの側面もありながら、未知なる宇宙への冒険小説としても楽しめます

そして、予想外の展開と驚くべき結論。興味深い謎に心を掴まされ、空想的な物語として楽しむはずが、仮説と検証の繰り返しによって、いつの間にか真実味を帯びてくる過程は鳥肌もの。

宇宙規模の進化論と未来への警鐘。知的好奇心が止まらない一冊ではないでしょうか。

SFジャンル【ハードSF】

ジェイムズ・P・ホーガン
1941年、英国ロンドン生まれ。コンピュータ・セールスマンだったが、1977年に一気に書き上げた長編『星を継ぐもの』でデビュー。同書は日本に翻訳紹介されると同時に爆発的な人気を博し、翌年の星雲賞を受賞。さらに『創世記機械』『内なる宇宙』でも同賞を受賞した。『造物主(ライフメーカー)の掟』『時間泥棒』など、最新科学技術に挑戦する作品を矢つぎばやに発表し、現代ハードSFの旗手として幅広い読者を獲得した。また『未来の二つの顔』『未来からのホットライン』『星を継ぐもの』は星野之宣によって漫画化されている。2010年没。(出版社より)

一九八四年  ジョージ・オーウェル

~思想統制、監視ー現代を予見した20世紀世界文学の最高傑作~

近代文学の傑作とされるディストピアSF小説。。世界54カ国の著名な作家100人の投票によって選ばれた100冊、ノルウェー・ブック・クラブ「史上最高の文学100」にも選出されています。

story:20世紀世界文学、至高の傑作が新訳版で登場!
〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する超全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。しかし彼は、以前より完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと出会ったことを契機に、伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが……。解説/トマス・ピンチョン。(出版社より)

アメリカのトランプ前大統領就任式の際、大統領を持ち上げる嘘の報道を「オルタナティブ・ファクト(もう1つの事実)」と聴衆を言い包める発言があったそうです。この政権の手法を指して、コメンテイターが「オーウェリアン」(オーウェル的な)と形容したことから、このオーウェルの風刺小説『一九八四年』が米国での売り上げが急増したとか。

この物語の舞台は、独裁政権が徹底して情報を管理する近未来。個人の思想までをも管理され、国家が認めない事実は初めからなかったことに。「承認されていない考え方」思考犯罪を取り締まる思想警察という発想や、「嘘だと分かっていても完全な真実として認識し、そのどちらも受け入れる能力」二重思考の概念など、行き過ぎた管理社会に警鐘を鳴らしています。

アルゴリズムによって知らず知らずの内に情報を操作されている現代のインターネット社会。AIの普及で人々は思考停止しつつあります。今こそ読むべき一冊です。

SFジャンル【ディストピア】

オーウェル,ジョージ(Orwell,George)
1903年、英国領インドのベンガルに生まれる。文学のみならず、二十世紀の思想、政治に多大なる影響を与えた小説家。名門パブリック・スクールであるイートン校で学び、その後、数年間ビルマの警察に勤務。やがて職を辞し帰国すると、数年間の放浪を経て、作家となった。主な著作に長篇小説『動物農場』などがある。1950年没(「BOOK」データベースより)

幼年期の終わり アーサー・チャールズ・クラーク

~”人類が宇宙を制する日は来ない” 異星人との遭遇により新たな道を歩み始める人間の姿~

SF界の「ビッグ・スリー」の一人、20世紀を代表するSF作家・アーサー・C・クラークの代表作。
人類の黙示禄として、広く親しまれてきた傑作SF小説。三島由紀夫が「自分が読んだ最も不気味な小説」としてこの作品を挙げ、高く評価したそうです。

story:地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とはなにか?異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。

ある日、上空を見上げるとそこには巨大な宇宙船がー。今やSF映画・小説の定番となっているこの設定の物語が、SF文学創世期の1950年代に描かれていたと言うから驚きです。
地球よりも遥かに優れた文明を持つ宇宙人の存在や、地球にやって来た目的の謎などスリルと恐怖を感じながらも、好奇心がくすぐられるスペクタクルを味わえます。

攻めてくるでもなく、何かを要求するわけでもない。高みから地球を見下ろしている宇宙人の不気味さと、なす術もない人類の構図。それだけでも十分に面白いのですが、この小説が傑作とされているのは、もう一歩踏み込んだ革新的なストーリーが展開されるから。

人間の弱さに絶望し、未来へ思いを馳せる。恐ろしい未来予想図ですが、一方で人間愛に溢れた物語でもありました。読みやすく、SFの面白さを堪能できる一冊です。

SFジャンル【ファーストコンタクト】

クラーク,アーサー・C.(Clarke,Arthur C.)(クラーク,アーサーC.)
1917-。イギリス生まれ。子供のころから熱烈なSFマニアだった。公務員、空軍士官を経て、1946年、短編小説「太陽系最後の日」で作家デビュー。その後『銀河帝国の崩壊』『幼年期の終わり』などの長編作を発表し、科学に関する豊富な知識を駆使したハードな作風でSF界の第一人者となる。スタンリー・キューブリックと一緒に構想した『2001年宇宙の旅』で、その名声は世界的なものに。(「BOOK」データベースより)

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? フィリップ・キンドレッド・ディック

~「おれは生きた動物を飼いたい」めくるめく白昼夢の世界~

言わずと知れた不朽の名作。SF映画の歴史を塗り替えた映画「ブレードランナー」の原作小説です。

story:第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しか飼えないリックは、かくて火星から逃亡した〈奴隷〉アンドロイド八人の首にかかった賞金を狙って、決死の狩りを始めた! 現代SFの旗手が斬新な着想と華麗な筆致で描く悪夢の未来世界!(「BOOK」データベースより)

放射能汚染によって、地球上の多くの生物が息絶えた未来。今となっては現実味を帯びてきたこの設定は人類の行きつく先を暗示しているかのようにも思われます。
物語の中心は、バウンディハンターのリックとアンドロイドの対決。1対1の戦闘や駆け引きのスリル満載のハードボイルドな展開が面白い。

一方で、人間そっくりのアンドロイドの見分け方や人間とロボットの境界、生き物を飼うことに対するこだわりなど「人間性とは何か」を問うテーマも。人間として生まれつき備えている性質と、アンドロイドが欠落しているものの正体は何か。彼らの本質を表す衝撃の行動は鳥肌ものです。

現代では身近になったAI。彼らとの共存はどんな未来が待っているのでしょうか。
今だからこそ読んで欲しい。面白いSF小説を読みたい人に。

SFジャンル【フューチャー・ノワールサイバーパンク】

ディック,フィリップ・K.(Dick,Philip K.)(ディック,フィリップK.)
アメリカの作家。1928年生まれ。1953年に短編作家として出発し、その後長編を矢つぎばやに発表、「現代で最も重要なSF作家の一人」と呼ばれるまでになる。映画化された作品多数。1982年歿(「BOOK」データベースより)

火星の人 アンディ・ウィアー

~生存不可能な火星で壮大なる奇跡への挑戦が始まる~

アメリカの作家アンディ・ウィアーのSF小説。優秀なSF作品及び活動に送られる「星雲賞海外長編部門」受賞作品。映画「オデッセイ」原作。

story:(上巻)有人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐によりわずか6日目にして中止を余儀なくされた。だが、不運はそれだけで終わらない。火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。ところがー。奇跡的にマークは生きていた!?不毛の惑星に一人残された彼は限られた食料・物資、自らの技術・知識を駆使して生き延びていく。(「BOOK」データベースより)

story:(下巻)火星に一人取り残されたマーク・ワトニーは、すぐさま生きのびる手立てを考え始めた。居住施設や探査車は無事だが、残された食料では次の探査隊が到着する4年後まで生き延びることは不可能だ。彼は不毛の地で食物を栽培すべく対策を編みだしていく。一方、マークの生存を確認したNASAは国家を挙げてのプロジェクトを発動させた。様々な試行錯誤の末、NASAが編み出した方策とは?宇宙開発新時代の傑作サバイバルSF。(「BOOK」データベースより)

無人島や、雪山などスリルと冒険心を満たしてくれるサバイバルの物語は数多くあります。しかし、この作品の主人公が置かれた状況は、それらとは全く次元が異なる火星でのサバイバル。そもそも、宇宙には水や空気などあるはずもなく、絶体絶命の度合いは桁違い。

危機的状況の中で、宇宙飛行士で植物学者のワトニーは知恵を絞り、アイデアを膨らませ、計画し、考察し、生き延びるためのあらゆる努力をしてこの危機を脱出しようと奮闘します。無尽蔵に繰り出される科学の知識に学問の素晴らしさが感じられ、次から次へと訪れる宇宙規模の危機にハラハラ。
そんな中でも、留まるところを知らないワトニーのアメリカンジョークが面白い。こんな状況にも関わらず火星を探索を楽しめてしまいます。

彼を救出する方法を模索するNASA。ワトニーの無事の帰還を祈る全世界の人々。
心が熱くなる、感動の傑作サバイバルSF小説です。

SFジャンル【宇宙SF】

ウィアー,アンディ(Weir,Andy)
1972年6月16日、カリフォルニアに素粒子物理学者でエンジニアの息子として生まれた。15歳で国の研究所に雇われ、現在までプログラマーとして働いている。科学、とくに宇宙開発に強い関心を寄せ、作家志望だったウィアーが初めて発表した小説が『火星の人』である。『火星の人』は、まず自らのウェブサイトに公開され、その後キンドル版を発売。発売後3カ月で、35000ダウンロードを記録した。その後、2014年に紙書籍版が発売され、世界的なベストセラーとなった
(「BOOK」データベースより)

夏への扉 ロバート・A・ハインライン

~彼は、その人間用のドアの、少なくともどれかひとつが、夏に通じでいるという固い信念を持っていたのである。

タイムトラベル小説の名作として世界的に有名なアメリカのSF古典的小説。2021年に山﨑賢人主演で映画化されています。

story:ぼくの飼い猫のピートは、冬になるときまって「夏への扉」を探しはじめる。家にあるドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。そして1970年12月、ぼくもまた「夏への扉」を探していた。親友と恋人に裏切られ、技術者の命である発明までだましとられてしまったからだ。さらに、冷凍睡眠で30年後の2000年へと送りこまれたぼくは、失ったものを取り戻すことができるのかー新版でおくる、永遠の名作。(「BOOK」データーベースより)

世界SF界のビッグスリーと称されるハインラインのロマンティックなタイム・トラベルの物語。日本ではSFのNo1作品として挙げるファンも多い作品です。また、主人公の相棒として活躍する猫のピートが、愛猫家ハインラインの温かい目線で可愛く描かれていることでも有名で、一部では猫小説とも言われています。

一口にSFと言っても様々な分類がありますが、この物語はタイムトラベルやロボット、冷凍睡眠など夢のあるSF設定が次から次へと登場し、まさにSF小説の醍醐味を味わえるワクワクする作品となっています。一方、ストーリーは人間ドラマが中心。淡い恋心があったり、予想外の裏切りがあったり。人生をより良いものにしようと奮闘する主人公と旅の途中で出会う愉快な人達も面白い。所々に感じるちょっとした違和感も最後にはすっきり。

FS初心者でも読みやすいベストセラー小説。もちろん猫好きの方にもおすすめです。

SFジャンル【タイムトラベル】

ハインライン,ロバート・A.(Heinlein,Robert A.)(ハインライン,ロバートA.)
1907年アメリカ・ミズーリ州生まれ。1939年に「生命線」でデビューののち、次々と作品を発表。数々の名作を生みだした。1988年没
(「BOOK」データベースより)

地底旅行 ジュール・ヴェルヌ

~さあ、行こう、地球の中心へ!驚異的な想像力で描き出した不朽の名作~

「SFの父」と称されるヴェルヌのSF冒険小説。

story:ドイツの鉱物学者リーデンブロック教授は、16世紀の錬金術師が謎の文字を書き残した羊皮紙を発見、甥アクセルの協力を得て苦心のすえ解読した。そこにはアイスランドの火山の噴火口から地球の中心に達することができると書かれていた。これが13週間に及ぶ地球内部への旅の始まりになった。ヴェルヌ(1828ー1905)の最高傑作。挿絵多数。

児童文学の「十五少年漂流記」や「海底二万海里」など、タイトルを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。ヴェルヌはSF創世記の代表的な作家として、後世に大きな影響を与えた人物です。ヴェルヌの作品から着想を得て作られた物語は数多くあり、東京ディズニーシーのアトラクションのモチーフにもなっています。

この作品は19世紀の、当時正しいとされていた科学知識と地理学を取り入れた冒険小説。現代でも十分楽しめる探求心をくすぐるストーリーと豊富な挿画に、まだ見ぬ世界への想像力を掻き立てられます。

また、個性豊かな探検家たちがこの冒険をさらに楽しいものにさせています。高名な教授だけれど頑固な伯父、いやいやついて来た臆病な甥、無口で無欲な案内人、このトリオのちぐはぐなバランスが地底の冒険を不安にさせ、またミラクルを期待させられるのです。

地球の奥深くで次から次へと繰り広げられるエキサイティングな体験。子供の頃に感じたワクワクを思い出させてくれる一冊です。

SFジャンル【SF冒険小説】

ジュール・ヴェルヌ

(1828-1905)1828年フランス・ナント生れ。1863年、株式仲買業の傍ら書き上げた『気球に乗って五週間』が大成功を収める。以後生涯六十余編の空想科学小説を刊行。〈SF小説〉の生みの親であり、世界中に熱狂的読者を持つだけでなく、多くの文学者にも影響を与えた。代表作に『海底二万里』『八十日間世界一周』『月世界旅行』『地底旅行』など。1905年没(新潮社 著者プロフィールより)

われはロボット 決定版 アイザック・アシモフ

~ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。~

ロボット物SFの古典的名作の短編集。2004年に『アイ,ロボット』というタイトルで映画化されています。
story:ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない…これらロボット工学三原則には、すべてのロボットがかならず従うはずだった。この三原則の第一条を改変した事件にロボット心理学者キャルヴィンが挑む「迷子のロボット」をはじめ、少女グローリアの最愛の友である子守り用ロボットのロビイ、ひとの心を読むロボットのハービイなど、ロボット工学三原則を創案した巨匠が描くロボット開発史。(「BOOK」データベースより)
幅広いテーマで500冊以上もの書籍を執筆したアシモフ。中でも有名なのが「ロボット工学三原則」を生み出したこのロボットシリーズです。ロボットはそれまで悪役として描かれていたのに比べて、この「ロボット工学三原則」は人類との共存を意識したものになっており、これは後の小説家にも大きな影響を与えました。これによりアシモフはロボットSFの第一人者としての地位を確立することとなったのです。

この短編集では、もしロボットが人間の感情を読み取れるようになったらどうなるのか。また、ロボットに自我が生まれたら人類は太刀打ちできるのか。など、AIが発展した現代でも通じる興味をそそられるテーマが並び、面白い。この作品が1950年代に書かれたというから驚きです。ロボットと共存することによりもたらされる危険性も描きながら、時にはあたたかいエピソードも。

これからのAI時代にマッチした一冊です。

SFジャンル【ロボット】

アシモフ,アイザック(Asimov,Isaac)
アメリカの作家。1920年、ロシアに生まれ、3歳で家族とアメリカに移住しニューヨークで育った。35年、15歳の若さでコロンビア大学へ入学。39年、SF専門誌に短編が掲載され作家デビュー。40年代の“SF黄金時代”の立役者の一人となり、50年、自身が考案した“ロボット工学の三原則”に基づく連作短編集『わたしはロボット』で一躍脚光を浴びた。一般向け科学解説書をはじめ、ノンフィクションも数多く発表した。92年没(「BOOK」データベースより)

ソラリス スタニスワフ・レム

~人間以外の理性との接触を描いた不朽の名作~

SFの巨匠・レムの代表作。SFの金字塔として旧ソ連とアメリカで2度映画化。
この作品は、原書『ソラリスの陽のもとに』をロシア語訳から更に日本語に訳された重訳版『ソラリスの陽のもとに』と、ポーランド語から直訳された新訳版『ソラリス』の2種類があります。

story:惑星ソラリスーこの静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。彼らにいったい何が?ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく…。人間以外の理性との接触は可能か?-知の巨人が世界に問いかけたSF史上に残る名作。レム研究の第一人者によるポーランド語原典からの完全翻訳版。(「BOOK」データーベースより)

遥か昔より地球外生命体の存在に夢を抱いてきた人類。例えば蛸的生命体や、頭と目が大きいエイリアンのような人間的なものに当てはめた宇宙人なるものを我々は想像してきました。果たして本当はどうなのでしょうかー。もし仮にそれが姿かたちが人間とかけ離れたものであり、有機物ですらないとしたら?

この物語は、常識では理解が及ばない存在を前にした人間の無力さと、果てしない知への挑戦が描かれています。正気を疑う出来事が次から次へと起きる宇宙ステーション。謎を追求するミステリーでもあり、地球外生命体とのコンタクトを描いた冒険物語でもあり、ラブロマンスでもある。また、概念を思考する哲学的要素もあり、人間中心主義に対する皮肉も。

難しいと感じる所も多々あるかもしれませんが、20世紀を代表するSF作家のこの作品は、様々な解釈が出来、知的好奇心をくすぐられます。ぜひ、チャレンジしてみてください。

SFジャンル【ハードSF】

レム,スタニスワフ(Lem,Stanislaw)
1921年、旧ポーランド領ルヴフ(現ウクライナ領)に生まれる。クラクフのヤギェウォ大学で医学を学び、在学中から雑誌に小説や詩を発表し始めた。51年に第一長篇『金星応答なし』を発表。深遠かつ巨視的なテーマの作品から、20世紀世界文学史上の巨人の一人に数えられる。2006年死去(「BOOK」データベースより)

たったひとつの冴えたやりかた ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

~あたしも、やっぱり冒険がしたくて、ここへやってきたんだ。少女の愛と勇気と友情を描く感動ドラマ~

アメリカのSF作家・ジェイムズ・ティプトリー・Jr.の連作短編小説。ローカス賞 ノヴェラ部門、星雲賞海外短編部門受賞作品。

story:やった!これでようやく宇宙に行ける!16歳の誕生日に両親からプレゼントされた小型スペースクーペを改造し、連邦基地のチェックもすり抜けて、そばかす娘コーティーはあこがれの星空へ飛びたった。だが冷凍睡眠から覚めた彼女を、意外な驚きが待っていた。頭の中に、イーアというエイリアンが住みついてしまったのだ!ふたりは意気投合して〈失われた植民地〉探険にのりだすが、この脳寄生体には恐ろしい秘密があった…。元気少女の愛と勇気と友情をえがいて読者をさわやかな感動にいざなう表題作ほか、星のきらめく大宇宙にくり広げられる壮大なドラマ全3篇を結集!(「BOOK」データベースより)

宇宙空間で繰り広げられるアドベンチャーやヒューマンドラマ。
もし、宇宙旅行が出来たなら。この短編集は、宇宙に飛び出した少女が体験する未知の知的生命体との交流を描いた感動SF物語。少女ならではの視点で描かれるの宇宙の冒険は、小難しいことは一切抜きにして、まだ見ぬ世界へ足を踏み入れるの高揚感と好奇心が詰まっています。かつて人類が宇宙に対して抱いた憧れの気持ちが読み取れる一方で、悲劇的な場面も。

また、著者の人生観が反映されたような生死や性の表現は、感動的な冒険物語だけにおさまらない深みが感じられます。
楽しくもあり、もの寂しくもある。ドラマティックなSF小説です。

SFジャンル【スペースオペラ】

ティプトリー,ジュニア,ジェイムズ(Tiptree,Jr.,James)
1915年アメリカ・シカゴ生まれ。作家。本名アリス・B・シェルドン。1968年のデビューから男性名義のペンネームを使用し、1976年に女性であることが判明するまで、覆面作家として数々の作品を発表した。その後も次々と発表し続け、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞、星雲賞など、多数受賞。1987年没(「BOOK」データベースより)

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映画化決定!アンディ・ウィアーの最新作。

プロジェクト・ヘイル・メアリー アンディ・ウィアー

映画「オデッセイ」のベストセラー原作・『火星の人』で鮮烈デビューを飾ったアンディ・ウィアーの最新作。映画化のプロジェクトが進行中。

story:未知の物質によって太陽に異常が発生、地球が氷河期に突入しつつある世界。謎を解くべく宇宙へ飛び立った男は、ただ一人人類を救うミッションに挑む! 『火星の人』で火星でのサバイバルを描いたウィアーが、地球滅亡の危機を描く極限のエンターテインメント(出版社より)

天才ビル・ゲイツにその年の「記憶に残る5冊の本」にも選ばれた、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』。日本でも星野源さんや、ひろゆきさんなど多くの方がおすすめの小説として当書をあげられています。

目覚めると全く知らない場所にいた。記憶もあやふやで、自身が今どんな状況にあるかもわからない。サバイバルを予感させる始まりからノンストップで繰り広げられる危機的状況は、驚きと興奮に満ちた、まさに宇宙SFアドベンチャーと言っても良いかも知れません。

史上最悪の状況に膨大な科学の知識をもって、その危機から脱しようと奮闘する主人公。仮説にもとづいて検証し、論理的な解決方法の中で最適解を見つけ出す彼の頭脳に知的興奮を呼び起こされます。かと思えば、つねにユーモアを忘れない主人公のセリフに終始笑わされっぱなし

孤軍奮闘を余儀なくされたミッションかと思われた矢先の、まさかまさかの友情が。好奇心をくすぐるスリル溢れるストーリー、笑いと感動の人間?ドラマで面白いが詰まっています。
大人が本気でワクワクできるエンターテイメントSF小説。おススメの一冊です。

ウィアー,アンディ(Weir,Andy)
1972年6月16日、カリフォルニアに素粒子物理学者でエンジニアの息子として生まれた。15歳で国の研究所に雇われ、現在までプログラマーとして働いている。科学、とくに宇宙開発に強い関心を寄せ、作家志望だったウィアーが初めて書いた小説が『火星の人』である(「BOOK」データベースより)

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