「とにかくこの小説を世に出すべきだと思いました」あの伊坂幸太郎が激賞、圧倒的デビュー作。
こんにちは、くまりすです。今回は、一條次郎の衝撃のミステリー「レプリカたちの夜」を紹介いたします。
story
動物レプリカ工場に勤める往本がシロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった。絶滅したはずの本物か、産業スパイか。「シロクマを殺せ」と工場長に命じられた往本は、混沌と不条理の世界に迷い込む。卓越したユーモアと圧倒的筆力で描き出すデヴィッド・リンチ的世界観。選考会を騒然とさせた新潮ミステリー大賞受賞作。「わかりませんよ。何があってもおかしくはない世の中ですから」。(「BOOK」データーベースより)
SFミステリーならぬPFミステリー?
一般的にミステリーとは、謎があり、それが解かれてゆくもの。
そういった意味では間違っていない。
ミステリーといっても現代の世界もあれば、例えばタイムスリップしたり、超能力が使えたりするSF的なものもあるが、本書は哲学を取り入れたミステリー。philosophy(哲学)のPFミステリーという新しいジャンルかも知れない。
2種類の謎
作中では、事件謎のと哲学の謎、2種類の謎が複雑に絡まる。
主人公の往本は、2本足で立つシロクマに工場内で襲われる。
そもそもこんなところにシロクマはいないし、2本足で歩かない。きっと、レプリカの中に人が入っているんだと考えるのだが、毛を分析したところどうにも本物のシロクマの毛に思えて…
部長がいなくなっても誰も気に留めなかったり、工場長の様子がおかしかったり…
次から次へと事件が起こる一方で、哲学的な謎も提示される。
往本はよく記憶喪失になる。というよりも身に覚えのない行いをしているらしい。そのことを同僚の粒山やうみみみずによって知らされるが、果たして往本の記憶が正しいのか、それとも記憶を失っているのだろうか?
見えてる世界は本物か?人間は偉いのか?哲学者デカルトやマルブランシュなどの思想を例に挙げ、問いかける。
次々と起こる奇想天外な出来事に、何が正しいのか分からなくなっていくだろう。
感想
面白かった。という感想もあれば、よくわからなかった。という感想もある本書。
謎が一向に解かれないまま次々とシュールな展開になり、不安になりながらも続きが気になる不思議な感覚でした。
作品の癖が強いため読み手を選ぶが、ハマれば面白い。
「人間が一番偉いという思い上がった考えを捨てるべきです。人間は一番悪くて恐ろしい生き物です。」とは瀬戸内寂聴さんがおっしゃった言葉。
エゴを捨てれば、真実は見えてくるかも知れない…
1974(昭和49)年生れ。山形大学人文学部卒業。2015(平成27)年、『レプリカたちの夜』で新潮ミステリー大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)([BOOK」データベースより)