2024年9月・10月に読んだ本

読書日記月別
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2024年9月・10月に読んだ本をまとめました。
人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。

私の満足度・おススメ度でをつけています。

★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!

★★★★  とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!

★★★   読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!

★★    少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。

     う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。

あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。

六色の蛹 櫻田 智也

★★★★★

第21回本格ミステリ大賞(小説部門)を受賞した『蟬かえる』の「魞沢泉シリーズ」三作目。

story:昆虫好きの心優しい青年・魞沢泉。行く先々で事件に遭遇する彼は、謎を解き明かすとともに、事件関係者の心の痛みに寄り添うのだった…。ハンターたちが狩りをしていた山で起きた、銃撃事件の謎を探る「白が揺れた」。花屋の店主との会話から、一年前に季節外れのポインセチアを欲しがった少女の真意を読み解く「赤の追憶」。ピアニストの遺品から、一枚だけ消えた楽譜の行方を推理する「青い音」など全六編。日本推理作家協会賞&本格ミステリ大賞を受賞した『?かえる』に続く、“魞沢泉”シリーズ最新作!(「BOOK」データベースより

昆虫好きの青年と言われて連想する、地味で人づきあいがあまり得意ではない人物像そのままの探偵役・魞沢泉(えりさわせん)。その存在感の薄さに初めは彼が主人公だとは気づきませんでした。と言うのも、このミステリ小説は、各章ゲスト的人物の視点で話が進むから。魞沢は、大小様々な悩みを抱えた人々の日常にひょっこり現れ、さり気なく寄り添い、心を解きほぐしてくれる、そんな癒し系の探偵なのです。

聞き上手で、穏やかで、不思議な包容力がある。少し抜けたところもあるけれど、信頼を置くに値する魞沢についつい本音を漏らす人々。何があったかよりもどうしてそうなったのか、心の動きにフォーカスを当てる。丁寧に描かれた心情描写により、ミステリーながら心温まる物語に。勿論、どのお話も魞沢の鋭い観察眼によってあっと驚く真相があり、ミステリーの醍醐味もしっかり味わえます。

人の優しさを感じられる癒されるミステリーです。

櫻田智也(サクラダトモヤ)
1977年北海道生まれ。埼玉大学大学院修士課程修了。2013年「サーチライトと誘蛾灯」で第10回ミステリーズ!新人賞を受賞。17年、受賞作を表題作にした連作短編集でデビュー。18年、同書収録の「火事と標本」が第71回日本推理作家協会賞候補になった。21年、『?かえる』で第74回日本推理作家協会賞と第21回本格ミステリ大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

サヴァナの王国 ジョージ・ドーズ・グリーン

★★★★★

英国推理作家協会が主宰するゴールドダガー賞2023年受賞作品。

story:ジョージア州サヴァナの夜。考古学者の女性がバーの店先で拉致され、阻止しようとした青年が刺殺された。遺体は全焼した空き家で発見され、所有者の土地開発業者が容疑者となる。彼は探偵業も営み社交界を牛耳る老婦人モルガナに調査を依頼。やがて明らかになるのは、この地方に秘かに伝わる歴史の闇だったーー。CWAゴールド・ダガーに輝いた米南部ゴシック・ミステリーの怪作!(出版社より)

アメリカ南部に位置する海辺の街サヴァナは、アメリカ最初の計画都市であり、歴史的な建造物が多く残る美しい観光都市として栄えています。また、全米一幽霊が出る街としても有名で、ゴーストツアーなるものも行われているとか。
しかし一方で、コットンの貿易で栄えたこの港湾都市は、南部の暗い歴史の爪痕が今も色濃く残る多様で独特な街でもあるようです。

『サヴァナの王国』は、この街で起きた殺人事件の裏に隠された真実と、歴史の中に埋もれた大掛かりな謎を巡るミステリー&サスペンスサヴァナの街をまるごと描いたこの物語は、現存する名所や名店が数多く登場し、古都の街を巡る楽しさがあると共に、そこに暮らす風変わりな人々や、痛ましい歴史も描かれています。

巻末には作中に出てきた歴史の注釈が掲載されており、実際に起きた事件の真実も。
サヴァナの本当の姿が見える、米南部ゴシック・ノワールの怪作です。

グリーン,ジョージ・ドーズ(Green,George Dawes)(グリーン,ジョージドーズ)
1954年、米アイダホ州生れ、ジョージア州育ち。’94年に長篇『ケイヴマン』でデビュー、同書が翌年MWA最優秀新人賞を受賞し、2001年に映画化。1997年、ニューヨークを拠点に非営利ストーリーテリング組織「ザ・モス(The Moth)」を創設。2022年発表の『サヴァナの王国』で、’23年CWAゴールド・ダガーを受賞。現在はニューヨーク市ブルックリン在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

フェイク・マッスル  日野 瑛太郎

2024年江戸川乱歩賞受賞作品。
※乱歩の生誕130年にもあたり、今年一年限定で7人の人気作家による選考会が実現。 (選考委員は綾辻行人、有栖川有栖、真保裕一、辻村深月、貫井徳郎、東野圭吾、湊かなえの各氏)

story:たった3ヵ月のトレーニング期間を経て、人気アイドル大峰颯太がボディビルの大会で上位入賞を果たした。SNS上では「そんな短期間であの筋肉になるわけがない、あれは偽りの筋肉だ」とドーピングを指摘する声が上がり、炎上状態となってしまう。当の本人は疑惑を完全否定し、騒動を嘲笑うかのように、「会いに行けるパーソナルジム」を六本木にオープンさせるのだった。文芸編集者を志しながら、『週刊鶏鳴』に配属された新人記者・松村健太郎は、この疑惑についての潜入取材を命じられ、ジムへ入会する。あの筋肉は本物か偽物か。松村は、ある大胆な方法で大峰をドーピング検査することを考え付くのだがー?真実を巡る潜入の日々が始まった。第70回江戸川乱歩賞。(「BOOK」データベースより)

選考委員からも高評価を得たユーモアミステリ
アイドルのドーピング疑惑を探ることになった新米記者。緊迫感溢れる潜入捜査が描かれるのかと思いきや、「いかに効率よく筋肉をつけられるか」を探求し始める主人公。次第にマッチョになっていく過程に愉快な当惑を覚えながらも、面白いミッションに興味を惹かれます。

「日常のミステリ」の延長のようなクスッと笑えるコミカルなシーンも多いのですが、扱うテーマの重さからも勿論それだけでは終わらず、急展開を迎える後半は二転三転し、意外な真相が明らかになるミステリの醍醐味も。丁寧な描写で読みやすく、エンタメとミステリが程よくマッチした気持ちの良い作品でした。

読まない手はない、実力派ミステリ作家陣も太鼓判の一冊。

独自の世界で勝負できる書き手だと思う。–東野圭吾
頭抜けて面白かった。–綾辻行人
まんまと作者の術中にはまった。–有栖川有栖
エンタメとして読ませるテンポの良さも素晴らしい。–辻村深月
潜入取材シリーズとなれば喜んで追っていきたいと思います。–湊かなえ(出版社より)
日野瑛太郎(ヒノエイタロウ)
1985年茨城県生まれ。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。第67回、第68回、第69回江戸川乱歩賞最終候補。2024年、第70回江戸川乱歩賞を受賞した本作でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

法廷占拠 爆弾2 呉 勝浩

★★★★★

直木賞候補にもなった人気作品『爆弾』の続編。

story:東京地方裁判所、104号法廷。史上最悪の爆弾魔スズキタゴサクの裁判中、突如銃を持ったテロリストが立ち上がり、法廷を瞬く間に占拠した。「ただちに死刑囚の死刑を執行せよ。ひとりの処刑につき、ひとりの人質を解放します」前代未聞の籠城事件が発生した。スズキタゴサクも巻き込んだ、警察とテロリストの戦いがふたたび始まる。一気読み率は100%、面白さは前作200%増のノンストップ・ミステリー!(「BOOK」データベースより)

多くの犠牲者を出した爆弾事件の犯人・タゴサクの裁判中に起きた新たなテロ事件。これ以上の失態は許されない警察と不可解な要求を突きつけるテロリストの手に汗握る攻防が面白い。サイコパス的犯人のテリトリーと化した法廷、100人の人質の恐怖、後手に回る警察、好奇の目を向けるネット中継の視聴者。劇場型犯罪の大胆でスペクタクルなハラハラドキドキの展開が待っています。

また、スズキタゴサクと、この男とのリベンジに燃える警官の面々も再登場。タゴサクの持って回った喋りにイライラしたり、人の心の闇を開かせる論理に振り回されたりするのはこのシリーズの醍醐味です。犯人と奇人の警察官・類家との頭脳戦など見どころも沢山。

緊迫の頭脳戦はやがて絶体絶命の窮地に…
映画化必至のエンターテイメント・ミステリーです。

呉勝浩(ゴカツヒロ)
1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業。2015年、『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。’18年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞受賞、同年『ライオン・ブルー』で第31回山本周五郎賞候補、’19年『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』で第72回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)候補、’20年『スワン』で第41回吉川英治文学新人賞受賞、同作は第73回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)も受賞し、第162回直木賞候補ともなった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)((「BOOK」データーベースより)

深淵のテレパス 上條 一輝

★★★★

東京創元社より創設された「創元ホラー長編賞」受賞作品。

story:「変な怪談を聞きに行きませんか?」会社の部下に誘われた大学のオカルト研究会のイベントでとある怪談を聞いた日を境に、高山カレンの日常は怪現象に蝕まれることとなる。暗闇から響く湿り気のある異音。ドブ川のような異臭、足跡の形をした汚水ーあの時聞いた“変な怪談”をなぞるかのような現象に追い詰められたカレンは、藁にもすがる思いで「あしや超常現象調査」の二人組に助けを求めるが…選考委員絶賛、創元ホラー長編賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

『深淵のテレパス』は『変な家』の著者・雨穴さんなどが活躍するWebメディア「オモコロ」で、同じくライターとして活躍中の上條一輝のデビュー作品。(「オモコロ」でのペンネームは加味條)
著者は怖い話にハマっていた時期があったとのことで、次々と起こる怪奇現象の描写がとてもリアル。ふと目にした暗闇に何かいるような気がしてきます。

とは言え、物語は怪奇現象や心霊現象の謎を解く方に重点が置かれているため、ミステリーのような面白さがあり、ホラーがあまり得意ではない人でも楽しめそう。超常現象を食い止めようと奮闘する二人の調査員のやり取りが恐怖を和らげてくれ、どんどんエスカレートする怪奇現象に再びドキドキさせられる。

呪いを解く方法はあるのか?意外な真相が明らかに…。

上條一輝(カミジョウカズキ)
1992年長野県生まれ。早稲田大学卒。現在は会社員の傍ら、webメディア“オモコロ”にて加味條名義でライターとして活動している。『深淵のテレパス』(応募時タイトル「パラ・サイコ」)で創元ホラー長編賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
(「BOOK」データベースより)

暗殺 柴田 哲孝

★★★★

著者は、実際に起こった出来事を題材にした作品も多いフィクション、ノンフィクション作家。『下山事件 最後の証言』で、日本推理作家協会賞と日本冒険小説協会大賞をダブル受賞しています。

story:戦奈良県で元内閣総理大臣が撃たれ、死亡した。その場で取り押さえられたのは41歳の男性。男は手製の銃で背後から被害者を強襲。犯行の動機として、元総理とある宗教団体との繋がりを主張したー。日本史上最長政権を築いた元総理の殺害という前代未聞の凶行。しかし、この事件では多くの疑問点が見逃されていた。致命傷を与えた銃弾が、未だに見つかっていない。被害者の体からは、容疑者が放ったのとは逆方向から撃たれた銃創が見つかった。そして、警察の現場検証は事件発生から5日後まで行われなかった。警察は何を隠しているのか?真犯人は誰だ?35年前に起きたある未解決事件との繋がりが見えた時、全ての陰謀は白日の下に晒されるー。日本を震撼させた実際の事件をモチーフに膨大な取材で描く、傑作サスペンス。(「BOOK」データベースより)

私たちが目撃した歴史の暗部。ケネディ大統領暗殺事件を彷彿させた2022年のテロ事件は記憶に新しい。海外では「暗殺」と報道されたこの事件は日本社会では単なる銃撃事件として扱われており、警察の発表と照らし合わせると、つじつまの合わない不自然な点も多く見受けられた。事件後、根拠のない言説が飛び交っていると報道されている証言は本当にただの憶測なのだろうか…。

物語は、この事件をモチーフとした小説。暗殺を目論む犯人側のストーリーと、この事件を追うフリーの記者の2部構成になっている。それぞれの思惑や蠢く陰謀、そして黒幕の正体。パズルのピースを繋ぎ合わせると、この事件のもうひとつの側面が見えてくる。果たして陰謀論か、それとも真実か。開けてはならないブラックボックスをこじ開ける。

話題沸騰の問題作、違和感の正体を暴く一冊。

柴田哲孝(シバタテツタカ)
1957年東京都武蔵野市生まれ。日本大学芸術学部中退。2006年『下山事件 最後の証言』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)と日本冒険小説協会大賞(実録賞)、07年『TENGU』で大藪春彦賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

カフネ 阿部 暁子

★★★★★

TV番組「王様のブランチ」で取り上げられ、人気急上昇。阿部暁子の最新刊・心にそっと寄り添ってくれる物語。

story:一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添っている。法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。(「BOOK」データベースより)

日本人は耐え忍ぶことが美徳とされる風潮があります。周りへの配慮、社会性があってこそ大人とみなされる。また、思いやりから相手を優先させることも多々あるでしょう。和を重んじるお国柄ならではで、その謙虚さは海外からの印象もとても良いと聞きます。しかし、空気を読み、本音を隠すコミュニケーションスタイルにより、私たちは知らず知らずの内にストレスを抱えてしまっているのではないでしょうか。

物語は、ままならない現実とそれでも生きる術を探すハートフルストーリー。辛い出来事が重なり、喪失感を抱えながら毎日をやり過ごしている薫子。自身や相手を責めたり、脱力感に苛まれたりする薫子や彼女が出会う人々はの姿は、まさに今の生きづらい世のリアルを表しています。漏れ出す本音にじっと耳を傾けているとやがて見えてくるもの、それは…。

頑張り過ぎている人へ。
美味しいものに癒される。気持が温かくなる一冊です。

阿部暁子(アベアキコ)
岩手県出身。2008年『屋上ボーイズ』(応募時タイトルは「いつまでも」)で第17回ロマン大賞を受賞しデビュー。著書に『どこよりも遠い場所にいる君へ』『また君と出会う未来のために』『パラ・スター“Side百花”」「パラ・スター“Side宝良』“金環日蝕』『カラフル』などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

百年の孤独 ガブリエル・ガルシア=マルケス

★★★★

ノーベル文学賞を受賞したG・ガルシア・マルケスの長編小説。46の言語に翻訳された世界的なベストセラー作品です。

story:100 年の傑作が50年の時を経て文庫化。6月26日発売決定。世界46言語に翻訳され、5000万部を売り上げている世界的ベストセラー。宿業を運命づけられた一族の、目も眩む百年の物語。(出版社より)

「文庫化されたら世界が滅びる」との都市伝説があるほど、あり得ないとされてきた『百年の孤独』の文庫化が、作家没後10年の節目についに実現。半世紀以上前の翻訳小説としては異例のヒットを飛ばし、社会現象となっています。

物語はマコンドという架空の村を舞台に、ブエンディア一族の百年にわたる隆盛を描いた壮大な年代記。著者が祖父母から聞いた戦争体験やコロンビアの歴史、民話や迷信、幽霊などの話がベースになっているのだとか。歴史の過去現在を映しているような描写がある一方で、幽霊が日常的に現れたりするなどの非現実が入り混じるマジック・リアリズム(魔術的リアリズム)と言う手法が特徴的で、ファンタジーとリアルが心地よく融合しているのがこの小説の持ち味となっています。

この機会に有名な傑作文学を楽しもうと手に取られた方々からは、同じ名前の人物が多数登場し面食らったという声もよく聞かれます。私も家系図を見ながら格闘しましたが、小説家のアドバイスによると、気負わず少しずつ読むのがコツなんだそうです。

日本の多くの作家にも影響を与えた作品。
読んでいる内に、この不思議な世界観がクセになってくる世界的名著です。

ガルシア=マルケス,ガブリエル(Garc´ia M´arquez,Gabriel)(ガルシアマルケス,ガブリエル)
1927年コロンビア生まれ。55年、長篇『落葉』でデビュー。67年、世界文学の記念碑的傑作『百年の孤独』を発表し、「ラテンアメリカ文学のブーム」を主導する。82年ノーベル文学賞受賞。2014年没(「BOOK」データベースより)

秋期限定栗きんとん事件 米澤 穂信

★★★★★

story:(上)あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。-それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい…シリーズ第三弾。(「BOOK」データベースより)

story:(下)ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど…ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつー。(「BOOK」データベースより)

直木賞作家・米澤穂信の人気ミステリー「小市民シリーズ」の3作目。前2作『春期限定いちごタルト事件』『夏限定トロピカルパフェ事件』は、2024年の夏季にテレビアニメ化されました。

人気の「小市民シリーズ」も佳境に入り、ついに上下巻の長編。小鳩君と小佐内さんのお互いの気持ちに変化が芽生え始めているような、いないような。警戒心が強くドライな2人の関係に何かしらの恋愛要素を見いだしたいのですが、普通の恋愛ができるかは甚だ疑問です。

『秋季限定栗きんとん事件』ではそんな2人に訪れるまさかのラブロマンス?と共に、ミステリーも日常の謎から本格的な事件の謎へ。「小市民」としては関わりたくない放火事件によって、2人の本性も徐々に明らかに。

ミステリ―ランキングにランクインしたミステリ―の面白さはお墨付き
このシリーズの定番、美味しそうなスイーツの数々も。秋にピッタリなミステリーです。

米澤穂信(ヨネザワホノブ)
1978年岐阜県生まれ。2001年、第5回角川学園小説大賞(ヤングミステリー&ホラー部門)奨励賞を『氷菓』で受賞しデビュー。11年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で第27回山本周五郎賞を受賞。21年刊行の本作で第12回山田風太郎賞並びに第166回直木三十五賞、第22回本格ミステリ大賞を受賞。さらに主要年間ミステリランキングすべてで1位を獲得し、史上初の4冠を達成した(「BOOK」データベースより)(「BOOK」データベースより)

殺戮にいたる病 我孫子 武丸

★★★★★

『殺戮にいたる病』は、驚異的な売り上げを記録した伝説のサウンドノベルゲームソフト『かまいたちの夜』のシナリオを担当したことで有名な作家・我孫子武丸の代表作。

story:東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるシリアルキラーが出現した。くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇、平凡な中流家庭の孕む病理を鮮烈無比に抉る問題作!衝撃のミステリが新装版として再降臨!(「BOOK」データベースより

YouTuberとして有名な「ひろゆき」さんがおススメ本として紹介し、売り上げが急上昇。幅広い読者に支持され、結末が衝撃的なミステリーとして必ず名前が上がる一冊。新本格推理小説の代表的作品となりました。
一方で、シリアルキラーによる連続猟奇殺人のおぞましい描写の連続にエログロ・サイコミステリーとしても有名で、手に取るのに躊躇している人も多いとか。

きちんと読者に提示されているフェアなトリックなのにまんまと騙されてしまう伏線と、クライマックスへ向けて3つの視点からボルテージが高まっていくドキドキ感とスリルで結末まで一気読み。あまりの驚きに「えっ!」と声が出てしまったのはこの小説が初めてです。

我孫子武丸(アビコタケマル)
1962年兵庫県西宮市生まれ。京都大学文学部哲学科中退。’89年講談社ノベルス『8の殺人』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

予言の島 澤村 伊智

story:瀬戸内海の霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が最後の予言を残した場所。二十年後“霊魂六つが冥府へ堕つる”という。天宮淳は幼馴染たちと興味本位で島を訪れるが、旅館は「ヒキタの怨霊が下りてくる」という意味不明な理由でキャンセルされていた。そして翌朝、滞在客の一人が遺体で見つかる。しかしこれは悲劇の序章に過ぎなかった…。全ての謎が解けた時、あなたは必ず絶叫する。傑作ホラーミステリ!(「BOOK」データベースより)

年老いた村人のみが暮らす島には、ある恐ろしい伝承が残されていた…。
呪われた予言、忘れ去られた限界離島、閉ざされた島で起こる連続殺人。ホラー小説を得意とする著者・澤村伊智の『予言の島』は、ホラー好きも、ミステリーファンも楽しませる、オカルトミステリー。予言通りに人が死んでいく怪異と、不可解な殺人事件が絡み合い、次から次へと恐怖の種類を変えながら進むストーリーは臨場感も抜群で、ノンストップのスリルとドキドキを味わえる。

幾重にも張り巡らされた仕掛けに驚かされ、ミステリーの醍醐味を味えますが、この小説はそれだけにはとどまりません。なんだかすっきりしない違和感の正体を知った時、本当の恐怖を感じるでしょう。

真相解明時の爽快感と共に、呪いの恐ろしさを体感する。
あっと驚かされる伏線に、2回読みたくなるミステリーです。

澤村伊智(サワムライチ)
1979年大阪府生まれ。幼少期より怪談/ホラー作品に慣れ親しみ、岡本綺堂作品を敬愛する。2015年、『ぼぎわんが、来る』(受賞時のタイトルは「ぼぎわん」)で第22回日本ホラー小説大賞“大賞”を受賞。巧妙な語り口と物語構成によって、選考委員から高評価を獲得した。19年、「学校は死の匂い」で第72回日本推理作家協会賞短編部門を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)

慟哭 貫井 徳郎

★★★★★

ミステリー作家・貫井徳郎のデビュー作。著者の作品は映画やTVなど、多くの作品がメディア化されています。

story:連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。(「BOOK」データベースより

許しがたい事件に立ち向かう刑事と新興宗教にハマる男の葛藤、事件の真相を描くミステリー。家族の繋がりや社会のしがらみの中でもがく男たちの姿やその危うさが、著者の巧みな文章によって鮮明に映し出され、緊迫感のあるサスペンスを存分に味わうことができます。

また、社会の闇に切り込む社会派ミステリーながら、本格ミステリー的趣向が凝らされていて、思わず「えっっ!!」と叫んでしまう予想外の展開も。交互に切り替わるパートそれぞれに緊張の展開がテンポよく描かれているため読みやすく、ぐんぐんと物語の世界に引き込まれていき、ページをめくる手が止まらなくなるでしょう。

耐え難い悲しみを背負った時、乗り越えるすべはあるのか…
心に深く残るミステリーです。

貫井徳郎(ヌクイトクロウ)
1968年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。93年、第四回鮎川哲也賞の最終候補作となった『慟哭』でデビュー。2010年、『乱反射』で第六三回日本推理作家協会賞長編及び連作短編部門、『後悔と真実の色』で第二三回山本周五郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データーベースより)

噂 荻原 浩

★★★★★

数々の賞を受賞している直木賞作家・荻原浩の人気ミステリー。

story:「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。(「BOOK」データベースより)

街でまことしやかに囁かれている奇妙な噂。実際にはありえない都市伝説のような噂だが、しかしその話を裏付けるかのような恐ろしい事件が起き、噂は真実味を帯びていく…。
まるでウィルスのように増幅し伝染していく噂、口コミの恐怖を感じられるミステリーだ。事件を追うのは人情深いベテラン刑事。登場人物の人物造形が丁寧に描かれ、まるでお気に入りのドラマの続きを見ているようにあっという間に物語に没入できてしまう。また、キャラクターの解像度が高いため感情移入しやすく、人情の機微や息の合った掛け合いを楽しめる。

連続猟奇殺人を扱ったサイコサスペンスだが、クスッと笑えるユーモアがあり、何気ない描写にもミスリードや伏線が随所に散りばめられていて、ミステリーとしての面白さも十分。

衝撃のラストに絶句。
とても読みやすく、お勧めのミステリーです。

荻原浩(オギワラヒロシ)
1956年埼玉県生まれ。成城大学卒業後、コピーライターを経て、97年『オロロ畑でつかまえて』で第10回小説すばる新人賞受賞。2005年『明日の記憶』で第18回山本周五郎賞受賞、14年『二千七百の夏と冬』で第5回山田風太郎賞受賞。16年『海の見える理髪店』で第155回直木賞受賞(「BOOK」データベースより)

英国の幽霊城ミステリー 織守 きょうや

★★★★★

雑誌「建築知識」に連載されていたエッセイを一冊にまとめたもの。

story:ハットフィールド・ハウスでは、エリザベス1世が少女の姿で現れる。ロンドン塔では、処刑されたアン・ブーリンが首のない姿で徘徊する。今なお城をさ迷う幽霊たちの物語の中に、英国の歴史を読み解く鍵がある。(「BOOK」データベースより

ロンドン生まれの著者が語るイギリスのお城にまつわる幽霊譚。
中世の暗黒時代、ヨーロッパでは権力の名の下に凄惨な拷問、処刑が日常的におこなわれていました。『英国の幽霊城ミステリー』ではイギリスが誇る数々の美しいお城の紹介と共に、英国王朝の血塗られたエピソードが沢山紹介されています。

イングランドの最も悪名高い王として語り継がれてきたヘンリー8世と6人の妻たちの愛憎劇を中心に、何世紀にもわたる王室の悲劇や陰謀が家系図と共に分かりやすく解説されており、歴史に詳しくない人でも楽しめます。

何より挿絵が素敵で、水彩画ようなお城のイラストが幻想的で美しい。中世ヨーロッパの雰囲気が醸し出されており、より想像力を掻き立てられます。幽霊が現れるスポットも城の間取り図で紹介されていて面白くて可愛い。

絵本のようにも、旅行のガイドブックのようにも楽しめる歴史ミステリー。
眺めるだけでも楽しい一冊です。

織守きょうや(オリガミキョウヤ)
1980年ロンドン生まれ。2013年『霊感検定』(講談社)でデビュー。2015年『記憶屋』(KADOKAWA)で日本ホラー小説大賞読者賞を受賞。『花束は毒』(文藝春秋)で第5回未来屋小説大賞を受賞
山田佳世子(ヤマダカヨコ)
甲南女子大学文学部英米文学科卒業後、住環境福祉コーディネーターとして住宅改修に携わる。その後、町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー卒業、輸入住宅に従事する工務店で設計プランナーとして経験を積み、二級建築士取得。現在はフリーの住宅設計プランナーとして独立
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK」データベースより)
〈このブログ記事の参考資料〉
*ウイキペディア ほか
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